いつもやさしい買い物袋を下げて家に帰ると、女がいた。
風呂上がりらしい様子で、堂々とソファでくつろいでる女は、俺の姿を見て慌てる様子もなく口を開いた。
「お帰り風息」
おまえ誰だ、と形式的に言うべきかと思ったが、しかしそれは無駄と言うものだろう。俺はこの女を初めて見たが、知っている。玄関には無限の靴がいつものように揃えられていた。
女はろくに水気を拭き取っていない長い髪から横着に水分を飛ばし、突っ立って無遠慮な視線を浴びせる俺から視線をスーパーの袋に移した。
「夕食はなに?」
無限が布団を襟元まで上げて、身体を寄せてきた。
自分ではよく分からないが、俺の体温は高いらしい。だから寒い時分にはくっついて寝ると良い塩梅なのだと。
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