その星々はご唱和する その星は、突如飛来した怪獣に埋め尽くされてしまった。
星の中には身長が1メートルにも満たない大きさの生命体が文明を築いていた。建造物も犇めき合っていたが、生命体より何十倍も大きい角と牙がある怪獣がやってきて、その星の生命体の住処は破壊された。
生命体は突然の事象に、文明の終わりと星の終わりを予感した。星の奥の奥へ逃げ隠れた生命体は、そこを終焉の地とするべきか議論が行われたが、結論が出ることはなかった。
生命体の一人が、食糧確保のために隠れ住んだ場所から這い出たとき、怪獣が目の前に現れた。
終わりだ、と生命体の一人は思った。
両親は宙を飛ぶ怪獣が着地した衝撃に当てられて、体を飛ばして死んだ。高く飛んで強く地面に叩きつけられた体は、もう生命体の下の形を成していなかった。友人たちは怪獣が踏みつぶした建物の下敷きになって死んだ。避難が優先されて、遺体は運び出せなかった。隣人は怪獣に立ち向かう為に武装して向かい、怪獣の手に払い落された。一緒に逃げていた妹は体が弱かった。避難先の環境は生命を維持するには少しばかり寒すぎた。探し出した食事も岩の苔程度しかない。みるみる内にやせ細ってある晩、熱を出してころりと死んだ。
ーそして、自分は食べられて死ぬのだ。
そう、生命体が死を覚悟して目をつむった時、青い光が目の前をかすめた。
息を吐いた瞬間、轟のような声が響いた。
青と赤の色をした体躯の、怪獣と同じくらい大きな巨人が目の前に立ちはだかっていた。
巨人は一度、生命体を見るとすぐに怪獣へと視線を配り、駆けて行った。
手には二つの刃物のような光が握られて、チェーンで繋がっている。
振り回したかと思うと、怪獣の角に巻き付けて怪獣の頭ごと地面に叩きつけた。
土煙が舞い上がって地響きがした。
瞬間、間髪入れずに巨人は自身の胸に手を掲げるような構えをとったかと思うと、右腕を振り上げて前に重ねた。
途端、すさまじい光線が怪獣に向けて放たれた。
その星は荒くれ者が集まっていた。
宇宙中から腕自慢が集い、トーナメントを行う。腕だけを強化して胴体より太くなった腕力自慢の者、強い力を吸い込んで腹の穴から解き放つ事に得意な者、脳はないがとにかく噛む力が強い者、様々な者が犇めいていた。その場では、力こそが全てであった。その場では、生まれも関係ない。だから、その場にいれば力がある者は誰もが心地よかった。差別もなく平等で、弱きものは淘汰されるのみである。そういう星の在り方も正しいだろう。
ある一点、その星の現住人が小さな生命体であったことを除けば。
ある生き残りのトーナメントが行われていた時、大きな衝撃が空から降ってきた。
戦っていた者共が姿を現した時、その衝撃でできた煙の中から地面に轟くような叫び声がして、赤い巨人が腕を掲げて出てきた。
ーそこからは、赤い巨人の独壇場だった。
赤い巨人は戦っていた者達に体ごと飛びつき、首の後ろを強く殴ったかと思うと、迫ってきた次の敵に対して両足で投げうつように蹴りこんだ。
続いて右腕を掲げてかけて突進して腕を叩きつけて、遠くへと逃げようとした敵に対しては足元から頭上へ縦に長い巨大な光のカッターを投げつけた。
そして、一際大きな体をした荒くれ者の正面に立ったかと思うと、赤く炎を纏い、右手に拳を掲げて高く宙を飛んだ。
ある星の住人は超能力に長けていた。
物を隠したり、突然出現させたりする。自分の体より大きなものを隠したりすることはできなかったが、それでも重い物を運ぶことができるのでその星では生活で重宝されていた。
ーそこを、他の生き物に目を付けられた。
その犯罪集団は、住人たちより十倍ほど大きな体格をしていた。
戦う術を大して持ち得ていなかった住人は、すぐに捕らえられた。
捕まった住人たちは盗賊団の一員とさせられた。拒んだ者は見せしめとして殺された。
ーそれが、二十年続いている。
ある夜、また犯罪集団が来訪した。
小さな、本当に驚くほど小さなものしか隠して出現させることしかできないのに、住人たちが自分たちの境遇を嘆いた時、逃げ惑う住人たちの頭上に黄色とも虹色ともとれる光が降り注いだ。
その光が突然丸くなったかと思うと、突然いくつもの針が犯罪集団に降り注いだ。
丸は何かを模しているようだった。
集団が戸惑った瞬間、また円が宙に浮かび上がった。その円の中から紫と赤を基調とした巨人が現れて一人の体の中心へとむけて足を蹴りこんだ。
集団がその姿を見て巨人から逃げ出すように宙へ逃げようとした。
途端、巨人は突然四つに分身した。その体系はそれぞれ異なる。それぞれが次の瞬間、両腕を体の前に掲げたかと思うと、様々な光線を放った。
光線からかろうじて逃れた一部に対して、巨人は次に両手を広げた。両手から鞭状の赤とも青ともとれる光った紐が宙を舞うと、その一部に絡まりついて瞬く間に縛り上げた。
そしてそのまま、飛び立った。
あるところに、宇宙を駆ける旅人がいた。
訪れた星はそれぞれ建物が崩れかけていたり、他の文明的建物に蹂躙された後だったり、あるいは町を一度放棄していたりー様々であったがその住人たちの顔は明るかった。
旅人は彼等に問うた。
ー何があったんだい?ー
すると彼らは一様に笑って、胸に手を当てた。
ーウルトラマンZが来たのさー