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    kanoxoxe

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    「milky way」

    早く大人になりたい甥っ子と、可愛い毛玉の成長が嬉しいような寂しいようなな叔父の話

    *付き合ってないチェカレオ
    *年齢操作有

    #チェカレオ
    checaleo

    賢者の島。ここは辺鄙な場所にあり、電車やバス、そして船を乗り継がないと来れない場所で。この島に住む者以外はわざわざ近寄る者はそう多くない小さな島だ。
     その両端に位置する場所にあるのが名門NRCとRSAの二校。どちらも名門魔法士養成学校として世界的に有名な学校で、各国から優秀な学生が集まっている。王族や富豪などのご子息も多く在学するからこそのこの環境なのかもしれない。
     今年RSAには一人の王族が入学を決めた。夕焼けの草原、王位継承権第一位のチェカ・キングスカラー。獣人である彼は体躯に恵まれ、長身に引き締まったしなやかな筋肉を持ち、1年にしてすでに頭一つ抜きん出ていた。そしてその強靭な見た目に反して、穏やかな性格のベビーフェイス。それでいて奢り高ぶった様子もなく、入学早々校外からも注目を集めていた。

    「すみません!外出許可証の提出は、こちらで大丈夫ですか?」

     鮮やかな夕焼け色の豊かな髪を低めに一つに纏め、爽やかな笑顔でそう問いかける。成績も優秀、温厚で教師陣からの評判も良く、入部したマジフト部でも有望視されている。まさに絵に描いた王子様そのもの。

    「あら、キングスカラー君、お出かけなんて珍しいわね」
    「ええ、部活の道具を買いに行きたくて。街に色々揃っていると聞いたので、一度見ておこうかと」
    「ああ、それはいいわね。はい、不備もないしこのまま預かりますね」
    「ありがとうございます」

     ぺこりと頭を下げ小走りに立ち去ろうとしたが、慌てた様子で呼び止められる。その手には一枚の紙が握られ、ひらひらと揺れている。

    「ねえ、あなた街は初めてよね?案内マップとかなくて大丈夫?それとも誰かと一緒なの?」
    「ご心配、ありがとうございます!でも大丈夫なので」
    「そう、楽しい週末を」

     ひまわりのような満面の笑みで一度手を振り、チェカはそのまま自分の部屋へと戻る。足取りは軽く、箒に乗っていないのにまるで宙に浮いているみたいにふわふわとしていた。
     部屋に戻るとそのまま自分のベッドにぼふっと倒れこんだ。同室の者はまだ戻っていないようだ。一人なことにほっとしたのか、チェカはスマホを見つめふふっと笑った。

    「はー、とうとう週末…。楽しみだなぁ」

     チェカの体格だとそこまで余裕のない狭い一人用のベッドの上を、ごろごろと寝返りを打った。

    「あ、そうだ!着ていく服どうしよう」

     チェカは慌てて小さなクローゼットの中から、数少ない私服をあれこれ引っ張り出した。普段はあまり検索しない、マジカメのコーディネイトのタグを片っ端から流し見ながら。

    「チェカ、何やってんだ?」
    「……あ、おかえり。早かったね」
    「今日俺も部活ないって言ったじゃん」

     慌ててスマホの画面を閉じる。デカデカとデートコーディネートと載っているのを見られるのは、さすがに恥ずかしい。それにしても一体どれだけの時間こうしていたのだろう。ベッドの上では乱雑に積み上がっていた服が、小さな山になっていた。

    「珍しいな。どっか行くの?」
    「うん。街に行ったことがないから、ちょっと行ってみようかなって」
    「いいじゃん。誰かと一緒なの?」
    「うん。さすがに制服じゃおかしいかなって思ってさ。でも久々だとなんか良くわかんなくなっちゃって」

     えへへと誤魔化すと、たしかにそうだよなぁとあれこれアドバイスをしてくれるルームメイト。本当にいい人が同室で良かったと胸を撫で下ろした。
     誰と。とっさに話を逸らしたけれど、実際友人に何と答えていいのかチェカはわからなかったのだ。

     楽しいことがある時は時間も早いもので、部活も行事も何もない週末はあっという間に訪れた。チェカはいつも通り部屋が明るくなる頃に目を覚ました。まだ眠るルームメイトを起こさないようにそっと洗面台へと向かう。鏡に映る顔が、寝起きだというのににんまりと口元が緩んでいて、チェカは思わず笑ってしまった。
     まだ冷たい水で何度も顔を濡らして、表情を引き締める。まるでマジフトのゲーム前のようにきゅっと目元が引き締まった。そしてバーガンディの革紐で、髪を一つに結い上げる。

    「……よし」

     気合入れに頬を一つ叩くと、部屋の隅に吊るしてあった私服にさっと着替え、まだひんやりとした朝の空気の中を飛び出して行く。走りぬけた寮内は鳥の鳴き声しか聞こえず、眠りについたまま。誰も乗っていないバスへと乗り込むと、まだ夢の中にいるようで、チェカはそっと頬を緩めた。

    「さてと……。とりあえず確認しよっかな?」

     朝一番のバスに揺られて街まで出たので、まだどの店も開店準備で追われていてどこか不思議な雰囲気だった。涼やかな朝の空気の中、のんびりと目覚めていく街をにこやかに眺めながら、チェカは初めてのはずの街を迷わず歩いていく。道を掃除する人に挨拶をされ、店先から漂うパンの焼ける匂いに鼻を動かし、あちこちに並べられる色とりどりの看板に胸が躍った。

    「えっと……この道が、ここか。で、こっちの店の向こうが……」

     人によって彩られ、生を受ける街。それを間近で見られるのが不思議で、ドキドキしながら足早に駆け抜ける。自分の愛する国も、こうして街は動いているのだろうか。今は遠くなってしまった故郷を思い出す。どんな場所でも繋がっているこの空の青さが、故郷に広がっているのを思い浮かべる。
     ぐるっと回っていると時間は午前10時。待ち合わせの時間まであと30分。チェカは更に街の奥へと進めた。

    「既読は付いてるけど、返事はなしかぁ……。そしたら11時頃かな?」

     チェカは深い森に囲まれた一本の道を見上げた。自分がバスに揺られた、煌く海に囲まれた道とは違う、先の見えないその奥に思いを馳せる。
     ふと横の店先のガラスに映る自分の姿に気がついた。歩きまわっていたからか、少し髪が乱れていた。指先でそれを直しながら、改めて服装もチェックする。
     シンプルなボーダーのロングTシャツに黒のスキニーパンツ。学生らしいすっきりとしたその服の上に薄手のチェスターコートを合わせて、足元は黒の綺麗めなキャンバスシューズ。チェカは何度も自分の姿を見回した。どこかおかしい所はないか、気合が入りすぎてはいないだろうかとシャツの裾を摘む。
     最後に会った時はまだスポーティな子供らしい服を着ていた気がする。その時より背も伸びた。このくらいならちょっと大人ぶってもおかしくはないはずだ。

    「おい。いつまでそうしてるつもりだ?」
    「ぅえっ!?…へ、あれ?レオナ、さん?なんで」
    「何でってお前がここにこの時間って言ったんだろうが。忘れたのか」
    「それはそうだけど……」

     バスが来た気配も感じなかった。いつの間にか自分の背後で、自分の恥ずかしいところを見られていたことを知り、チェカは顔を赤らめた。
     赤らめた理由はそれだけではない。久々に見たレオナの姿だ。ゆるっとしたロングニットカーディガン。レオナがよく好んで着ていた物に似ていて、すごく馴染んでいるし似合っている。中に着ている白のシャツは胸元深めに開いていて、黒のテーパードパンツはゆるっとした服装の中で、きゅっと引き締まった足元の綺麗なラインを浮き上がらせた。

    「おい、チェカ?」
    「あ、うん」

     しかもここ最近仕事中に掛け始めたと言っていた細身の眼鏡に、緩く結んだ髪を片側に垂らしていて。久しぶりに会ったというのに、更に増している色気にチェカは言葉を失った。

    「まだかかると思ってたんだ。ごめんね。じゃ、行こっか」

     二人は街中へと並んで歩きだした。背伸びにならない程度に、けれど並んだ時に子供だと思われないようにと選んだ服装だったが、いざこうしてレオナと並ぶとやはり昔の毛玉に見えてしまいそうで、チェカは少し気になってしまった。
     けれどそれは服装などではなく、レオナの持つ色香や佇まいのせいだろう。服だけ見れば、緩めに合わせたレオナの方が幼く見えてもおかしくない。

    「レオナさん、朝食べた?まだなら先にブランチにする?」
    「お前は?」
    「そこそこ空いてるかも」
    「なら先に軽く食べるか」

     チェカはスマホを取り出し、指を滑らす。そこにはいくつかの料理の写真が並んでいた。

    「しっかりならここ美味しそうだよ?こっちは軽めだけど、バーガーのお肉美味しそうだし。どうする?」
    「街初めてなんだろ?お前が気になる方にしろよ」
    「うーん、じゃあこっちかな」

     二人が入ったのはこじんまりとしたカフェで、しかし店内はシンプルだがアンティーク調の小物や間接照明で落ち着いた場所だった。早めのランチがあったのでそこから注文を済ますと、チェカはちびりと水で喉を潤わす。

    「さっきびっくりしちゃったよ。もしかして早くに着いてた?」
    「バスがあの時間しかなかっただけだ」
    「そっか。待たせちゃったかと思って心配しちゃった」
    「で。今日は何を見るんだよ」
    「えっとね、マジフトの時のシューズ。履いてみないとやっぱりわからなくて」
    「たしかにな。それで足おかしくしても意味ないからな」

     チェカがレオナにお願いして街で待ち合わせをしたのは、買い物する時にアドバイスが欲しいからということだった。チェカの大きな足のサイズに合う物は少なく、それならとレオナと予定を合わせこうして買い物をすることになった。

    「失礼します」

     チェカの前に大きなハンバーガープレートが置かれた。大きな塊の肉や厚めに切られたトマト、溶けたチーズなどで高く積みあがり、串のおかげでなんとか崩れずにいた。
     そしてレオナの前にはオムライスとハンバーグのプレート。とろりとした卵の横で、荒挽きの肉汁したたるハンバーグがぱちぱちと油の弾ける音を上げる。

    「うっわ、すごいボリュームだね!美味しそう」
    「冷めるぞ」
    「そうだね。いただきます」

     チェカはナイフとフォークを持ち、静かに口に運ぶ。小さい頃より完璧なテーブルマナー。変わりないその食べ方に、レオナは少し懐かしくて口元を緩ませた。あんな毛玉がこんなに大きくなったのか、としみじみしてしまう程度には、自分も歳を取ったのかと。
     気付かれないようにレオナも食事を始める。レオナは雑なようでいて、食べているだけで絵になるのがチェカには不思議だった。口に運ぶたびに軽く伏せられる睫毛も、緩く開く口元も。絵画か何かのように見えてしまい、ドキドキと胸が高鳴る。
     ごまかすように街の話やマジフトの事を聞きながら、チェカは食事を喉へと滑り込ませた。美味しいはずなのに、どこか味がわからなくなっていく。

    「あ、ここは僕が。今日付き合ってくれたお礼」
    「そんなこと気にしなくていい」
    「違うの。この前校内のバイトってのが気になって参加したら、ちゃんとバイト代出るやつで。持ってるの落ち着かないから、こういう時に使わせて欲しいんだ」

     ね、と笑顔で押し切ろうとしている。こういう顔の時はもう意見を変えないと知っているレオナは、諦めて財布をしまった。

    「そうか。ごちそうさま」
    「へへっ、どういたしまして」

     そして二人はゆっくりと目的の店へと歩きだした。故郷とは違う、海に囲まれゆったりとした小さな小さな街。1日でぐるっと回ることも出来そうなその中に住む人々は、とても穏やかだった。故郷では一度もこうして並んで街中を歩くことはなかったから、どこか不思議だった。

    「こっちの最新モデルのは?」
    「ああ、悪くないが、そっちよりは一つ前の方が楽だぞ」
    「そうなんだ。ちょっと履いてみよっと」

     チェカは試し履きして足をくるくると動かした。悪くはない。

    「いいね、これ。にしても僕もレオナさんに教わりたかったなぁ。なんで僕NRCからお誘い来なかったんだろ」
    「適正なんだから、今更グダグダ言っててもしかたないだろ」
    「レオナさん、NRCからRSAにくる予定ないの?先生ならこっちでもできるでしょ?こっちもマジフト部もあるし!」
    「ねぇな」
    「そうだよねー」

     残念そうに眉を下げるが、その顔はふわっと笑っている。もう自分の中で区切りはついているが、甘えてワガママを言っただけ。それをわかっていてレオナも気遣うことなくあっさり答えていた。
     靴が決まると、小物やウェアなどあれこれ見ながら、練習やプレイについてあれこれ話が盛り上がり、気付けば数時間経っていた。慌てて靴の会計を済まし、外へ出るとすっかり日差しが柔らかくなっている。

    「いつの間にかいい時間になってたね。帰りのバス何時?」
    「あー…今出たばっかりっぽいな。次は1時間後か」
    「タイミング悪かったね。レオナさんの話ためになるのばっかりでつい。そうしたらちょっとお茶でもして時間まで休もうよ」
    「お前は大丈夫なのか?」
    「うん。僕も次かその次で帰れば間に合うし。それにもう少しレオナさんにアドバイスもらいたいんだ」

     二人はバス乗り場の近くのコーヒーショップに入る。窓際の席に座るとチェカはブレンド、レオナが頼んだものはキャラメルマキアート。日が傾きかけて少し涼しくなってきたので、湯気が上がるそれらを見ただけで、どこかほっとしてしまう。

    「珍しいね。レオナさんも甘いの飲むんだ」
    「たまにはな」
    「いつもブラック飲んでるイメージだったから、少し意外かも」
    「疲れた時とか緊張した時なんかは、甘い物取るといいんだよ」

     オーダーを済ますと、チェカはスマホをレオナに向けた。いくつか練習中の動画を見せてはアドバイスを貰い、あれこれと質問をぶつける。今でも有名なマジフトプレイヤーのレオナ・キングスカラーのコメントだ。叔父と甥だからだけではなく、マジフトをしている者ならばその言葉一つ一つが宝物になる。

    「お待たせしました」

     盛り上がる二人の前に、香ばしい香りを立ててコーヒーが運ばれてくる。その香りに言葉が途切れる。チェカがスマホを仕舞うと、カップを手を伸ばす。

    「いい香り。インスタントじゃないの久しぶりかも」
    「寮でも飲んでるのか?」
    「うん、最近は紅茶よりコーヒーのが多いかな?」
    「へぇ、ガキの頃とは違うんだな。ミルクはいいのか?」
    「ねえレオナさん。それいつの僕と比較してる?」

     ふはっと堪えきれなくなったレオナは笑い声をあげた。小さい頃も知られているため仕方ないのだが、どこか恥ずかしさは拭えない。チェカは視線を外して、コーヒーを口にする。
     冷えた喉の奥を温めながら滑り落ち、鼻先に香ばしい香りが抜ける。そしてその後に苦味と酸味が広がった。寮で飲む薄いインスタントとは違う久々のその味に、チェカはぴくりと眉を寄せた。

    「美味しい。やっぱりコーヒーの香りっていいね」

     にこりと笑いながら目の前のレオナを見ると、レオナはまだカップに手をつけておらず、じっとこっちを見ていた。機嫌が悪いわけではなさそうだが、黙って見られているのもどこか落ち着かない。チェカは何度か瞬きをする。

    「レオ、ナさん?どうかした?」

     しばらく堪えていたが、レオナは声をあげて笑いだした。声を出さないようにしようとするが漏れ出してしまい、堪えようとすればするほどじわじわと涙が滲んでいる。
     チェカは何がそこまでおかしいのかわからず、きょとんと見つめ返した。

    「……ほら」

     一頻り笑ったあと、レオナは眼鏡を外し目元を軽く押さえる。そしてまだ手をつけていない自分のカップとチェカのカップを入れ替えた。チェカの目の前にまだ綺麗に四葉のクローバーの描かれたキャラメルマキアートが差し出された。

    「……え?」
    「お前にはこっちのが合ってるだろ?」
    「え、どういう……」

     チェカは慌てて顔を作り直す。しかし叔父はからかうわけでもなく真っ直ぐ見つめ返してきた。

    「思ったより苦かったんだろ?今そっちのが合うなら、無理に変える必要はない。いずれこれが合う時はくるんだ」
    「なんで、それを…」

     チェカは四葉に口付けた。甘い香りが口いっぱいに広がり、心を甘く包み込む。その甘さがくすぐったくて、レオナの顔をちらりと覗き見る。
     するとレンズ越しではない澄んだ翠眼が、いたずらっぽくにやりと細められた。

    「まだまだ可愛い毛玉でいてくれよ。焦らなくても、いずれデカくなるんだ」

     眼鏡の奥で大人な人だと思って憧れたレオナの瞳は、こんなにも子供の頃と変わらずに無邪気にチェカを見つめていた。
     思い描いたエスコートできるようになるには、あと少し。
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