愛しさに包まれて「いってらっしゃい」
3日分の着替えが入ったスーツケースを携えて、出発しなければいけないスミスの足どりは重かった。
どうしてもスミスが出向く必要がある出張であったのだが、家を出る直前までスミスは後ろめたさと心配を抱えていた。イサミを3日間も一人きりにして大丈夫なのかと。
再度の勇気融合合身以降、初めてイサミを〝置き去り〟にしてしまうと。
けれども、そんなスミスの背中を押したのは、イサミ本人であった。
――いってらっしゃい。
スミスが先に家を出る時に、イサミが口にする言葉。
いつもと変わらぬ顔で、いつもと同じ声で、ひらひらと片手を振るイサミ。出張の件を伝えた時には「……え?」と明確に戸惑っていた彼であったが、今、スミスを見送る彼は普段通りの姿であった。
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