カシヒトツ「万屋行くぞ」
休みは積読の山でも崩すかと本を見繕っていたら、唐突に部屋のドアがノックされた。
開けたら肥前くんが立っていた。で、先の一言。ポカンとしてたら「さっさと支度しろ」ともう一言。
驚いたも何も、そもそも私、君と出かける約束をした覚え無いんですが?
「えっ……よ、万屋?」
「あんた、行きたいって言ってたじゃねえか」
「お、おぅ?」
話が見えん。そんなこと言ったっけ?とポカーン顔しながら記憶を総動員していたら、唐突にそれを思い出した。
「あっひょっとして、この間の『貸し』のこと!?」
「忘れてたのかよ」
さも呆れたように仰られますが、仕方ないでしょ? 「この間」とは先週の水曜の昼間、「貸し」とは非番で暇そーにペタペタ歩いてた誰かさんにちょっと戦績戻しに行ってもらっただけなのだ。
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