すれ違い辺りに響くのは、人が動く小さい足音と本の出し入れする音。ここは図書館。人の声はほとんどしない。・・・・・・しない。
「へー!このポケモンはこんな進化するんだな!」
無邪気な声が急に響いた。人の目がそちらへ動くが、非難するような目ではなく、あっまただと温かい目を向けている。
図書館を管理する学芸員も苦笑いしながらも温かい表情で、声の主の肩を優しく叩いた。
「静かにね」
「あっ、いつもごめんなさい!」
素直に謝るものだから、怒るに怒れない。この少年、ブラックは今、自分の夢のためにポケモンのこと、ポケモンリーグのことを調べるために図書館に来ていた。
調べ物しながら、自分のノートに書いていく。その熱量は傍から見てもすごく、図書館で勉強している青年や大人たちも負けるものかと、駆り立てられている。
図書館に1人の少女が来館する。受付の机を見て、自分の捜し物はどこかと館内マップを見る。
「なにかお探しかな?」
さっきブラックに注意した学芸員の女性が話しかける。聞かれて、こくん、と縦に首を動かした。
「ポケモンのお洋服の本」
「それだったらね・・・・・・」
学芸員は少女、ホワイトに館内マップを使いながら指さして、方向を教える。教えてもらったあとは、ホワイトは礼儀正しくお礼をして、棚へと向かった。
たどり着いたが・・・・・・子供の高さではやや届かない位置。辺りを見回して、台を探すがない。危ないかもと思いながら、ホワイトは下の棚に足をかけて、登って、本を取ろうと腕を伸ばした。それで届いたが、しっかりと入り込んでて、なかなか引き抜けない。
「んー・・・・・・んっ!」
力を込めて引き抜く。抜けたが、体がそのまま後ろへ引かれる。自分の視界に天井が見えた。悲鳴もあげられず、そのまま床に・・・・・・と思ったが、誰かがそれを押しとどめた。
「あっぶねー!」
声音からして男の子だ。その子の力も借りて、ホワイトは降りた。腕の中には自分の目的の本を抱きしめて。助けてくれた男の子の方に向く。
「ありがとう」
「いいよ。気をつけなよ。台ならここにあるから」
ブラックは棚に登るホワイトを見て、別の場所から台を持ってきてたが、ちょうど落ちるのを見て、タイミングよく助けられた。
「ううん、もう大丈夫。これだけだから」
「そうなんだ」
「うん。バイバイ」
「バイバイ」
2人は手を振って、別れた。ホワイトは受付に行き本の貸し出しを、ブラックは元の位置に戻って黙々と調べ物を再開した。
それを遠く見守るふたつの影・・・・・・。
「初めてオレたちが出会った場所へって言うから、てっきり2年前のあの時かと」
「アタシも。え〜、記憶なかった」
図鑑所有者の先輩から、面白い体験してみる?と言われて、伝説ポケモンに連れられてみたが、まさか自分たちが初めて会った場所とは思ってもなく。ただ、思うことは。
(なんでオレ・アタシは気づかなかったんだ・・・・・・)
少しばかり後悔する気持ち。