珍しい姿今日はラクツが帰ってくる日。
ファイツはキッチンで彼が帰るのを待ちながら、菓子を作っている。主にクッキーで味に種類を変える。 初チャレンジのこともあって、なかなか難しいところもあったが、何度かこなすうちにうまくできるようになった。
玄関で音がする。ラクツが家の中に入る。
「ラクツくん、おかえり〜」
ファイツが声をかける。
「うん」
どこか生返事の彼。かなりお疲れのなのか、少し珍しく目がぼんやりとした感じが見受けられる。荷物を投げ出し、ソファに座った。
そこでちょうどよくクッキーも全部焼きあがった。器に移してラクツの前に持っていく。
ソファ前のテーブルに置くが、ラクツはなんも表情変えず、ぼーってしている。
珍しい彼の様子に、ファイツは物珍しく顔を伺う。彼の視線に入っているはずだが、何も反応はない。
ファイツはラクツの頬をつついてみる。それでも反応がない。どうやら、目を開けたまま意識が飛んでいるらしい。これはこれで驚きだっが、本当に珍しい状態なので、心配もあったが面白みもあって、彼の体にちょっかいをかけてみる。それでも、反応はない。
(えー?こんなに反応しないの?うーん・・・・・・)
他に何をしようかと考える。とりあえず、次に思いついたのは彼をハグしてみることに。
彼の顔を自分の中にうずめるようにして、ハグしてみる。あまり動きはない。
今回の彼の任務がかなり辛かったものだったのかと思うと、国際警察はいつもなぜここまで彼を酷使させるのだろうと憤る・・・・・・が。
「えっ、ラクツくん?なにしてるの!」
ファイツは自分の胸にやたらと顔を押し付けるラクツに気づいて、声を上げる。離すと、少し残念そうな顔をしたラクツがいた。
「残念。もう少しキミの中でゆっくりしたかったんだけど」
「な、なんで!いつから気づいてたの!?」
「割かし、最初から、かな」
「え!」
ラクツの答えにファイツは目を見開いて、すぐ目を細めた。
「最初からならなんで?」
「ファイツちゃんがどんな反応するかなって見守ってたよ。そしたら、まさか胸の中に入れてくれるとは。柔らかったよ」
最後の一言に、かー、っと頬が赤くなるファイツ。
「もう!!それ、言わないで!」
恥ずかしさで叫ぶファイツ。それにくすくすと悪戯したように笑うラクツは目の前にあるファイツ特製のクッキーを口へと運んだ。