あなたの傷に慣れたくないな(仮題)深夜、隣の部屋から審神者が出て行った気配を確かめた南泉一文字はいつもの通り桶に汲んだ湯にタオル、冷やした布巾と湿布を用意して、隣室すなわち腐れ縁山姥切長義の自室を訪れた。照明の付いた部屋の中、敷かれた布団の上には上掛けも掛けないまま全身裸でぐったりとした部屋の主が仰向けに転がっている。かれの目は開いているがうつろで呼吸は浅い。その腰や腕、そして首にはくっきりと鬱血した手指の痕が付き、顔から髪にかけてはかれのものではない体液が乾いてこびりついている。いつも通りの光景に、いつも通り南泉は眉間に皺を寄せて、長義に声を掛ける。
「なあ、どうしてお前はこんな扱いに従ってるんだ」
その声にゆっくりと意識を取り戻してきた長義は、視線だけを動かして南泉を見やり、目を細めうすく笑んで言った。
「心配しなくても、合意だ」
軽く咳き込みながら少し掠れた声で紡がれた言葉に南泉は顔を歪め小さく舌打ちした。
「それが分かんねぇって言ってんだよ」
「あっははは」
こころが化物のこの刀は、こうして毎度訪れる南泉の気持ちを知ってか知らずか、さも可笑しそうに愉快そうに眉尻を下げて笑い飛ばしてみせるのだ。これがこの本丸のかれらのいつも通りの日常、ルーティーンである。
温かい湯をタオルに含ませ、長義の体を丁寧に清めていく。顔や髪にこびりついた体液を肌を擦らないようにゆっくりと拭う。されるがままになっていてくれるのは、かれが指一本自分で動かせそうにないほど疲れ切っているからだ。うっすらと赤みを持った目元には冷水で湿した小さなタオルを当てておく。
「つめたい」
「やな感じするなら温めるけど」
「いや、きもちいい、から、いい」
「そうか」
顔から始めて少しずつ下に場所を移していく。そうしていると、首に、手首に、腰に、腿に、足首に、浮き上がる人の手指の痕が嫌でも目に入ってくる。いつも、いつも「こう」だということを南泉は知っている。長義のまっしろな肌に散らばる痕の中には赤ばかりでなく黒いものもあり、それがついさっき付いたのではないのではないことを示している。いつも、いつもその体を南泉は清めている。それで、今日は、口が滑った。
「……毎回こんな手酷いやり方。……どうかしてる」
「それは君が決めることじゃない」
間髪入れずに長義が返す。少し回復したようで枕を背もたれに身を起こし、目元に当てた布を自分で外して、横に屈んで座る南泉をまっすぐに見つめている。
「言っただろう?合意だと。これは俺と主の関係性。他にんに口を挟まれる言われはない」
口が滑った。失言だとは思わない、間違いなく本心であるから。しかし言う意味がないことを知っている。そんな言葉は自己満足で、同時に自分が改めて打ちのめされるだけで、だから、いつもは口にしない。いい加減定型文ともなってきたはじめの問いのほかは黙って、せめてかれを丁寧に丁寧に、かれが主と呼び自らも主と呼ぶべき人間のなすことの逆をゆくように、あの人からの扱いだけがかれの接するひとの温度にならないように、清め手当し労るのだ。
しばし黙して南泉は、ゆっくりと深い息を吐き、落とすように言った。
「…………解ってる」
「そう?」
「ああ」
「ふぅん」
山姥切長義はにっこりと微笑むと、また布団に倒れ込んだ。南泉は黙々と「いつもの通り」全ての後処理をすると部屋を出た。
廊下に出ると隣の自室の前にふたつのひと影が座っていた。南泉はそちらに視線をやって苦笑を浮かべた。
「まだ起きてたのか。早く寝ろよ」
南泉の様子に鯰尾藤四郎と謙信景光は顔を見合わせた。
「俺はもう寝るところだったんですけどね、まあ……その、」
「……「南泉が」、しんぱい、だったのだ。ちょうしは、どう?」
「まあまあってとこ。いつも通りだよ」
南泉の言葉に、ふたりは表情を曇らせた。
「あいかわらず、か。ぼくたちではちからになれないのかな」
謙信の呟きに、南泉は首を振る。
「お前らは何も悪くねぇし、関係もねえよ。オレが勝手にやってることだから気にすんなって」
「だが……」
「はい、終わり!ほれ、さっさと寝ちまえ」
はぐらかすような物言いに、謙信は何かを言いかけたが結局何も言わなかった。
「……わかった。おやすみ、南泉一文字」
「おう。お休み」
ひらり手を振って立ち去る南泉の背中に、鯰尾は小さく「ごめん」と謝った。
かれらが立ち去り気配が消えると南泉は足を止めて振り返った。そしてひとつ大きく深呼吸をして、意を決したように再び歩き出した。
***
無駄に煌々と明るい照明の下、寝転がった長義は自分の首を撫でていた。そこに残る、大きな手形を。
「南泉は優しいなぁ」
そう独り言つと、長義はくつくつと喉の奥で笑う。
「俺のこと心配してくれてるんだろう?うん、知ってる。あいつが俺のことを大事に思ってくれる気持ちはちゃんと知ってる。だけど、もっと放っておいてくれていいのにさ、おかしな南泉」
長義は笑いながら言う。審神者は、山姥切長義という刀を愛していると言い、暴力的ともいえる性行為を繰り返す。それを許容する理由を問われれば、長義はただ「愛されているから」と言うだろう。
審神者の傍目には歪な感情を向けられても、長義はそれを受け入れる。長義は人間が好きだから。愛しいと思うものを愛することは当然だと思っている。愛されることも、愛することも、等しく尊いと知っているから。
審神者を受け入れている理由はそれだけではないけれど。
長義は寝返りを打つ。枕元の時計を見ると深夜三時を過ぎていた。眠ろうと目を瞑るが、なかなか睡魔は訪れない。
(明日も近侍なのに)
長義はため息をつく。身体は疲れているはずなのだが、妙に頭が冴えている。審神者との行為で消耗しきった体力も回復してきた。
「仕方ない。少し散歩でもするか」
ひとりごちると、のそりと起き上がる。長義は部屋を出ると、夜更けの庭を歩いた。池のほとりで足をとめると、水面に映った月を眺めた。水鏡に映る己の姿は、いつ見ても美しい。それは自画自賛ではなく事実として。池の隣に置かれた背もたれのない長椅子に腰掛け、ぼんやりと生き物のいない水の面を見ていた。
「うーん、しかし。こう暇だと、本当にすることが無いな」
ぽつりと呟く。この本丸での生活は、長義にとって非常に退屈なものになっていた。審神者に抱かれることが日課となり、出陣も遠征も無い日々が続いている。近侍の肩書きでただ審神者の側に侍るだけの日々。数字上の練度こそ99となっているが戦場に出たことは一度もない。
長義が顕現したのは一年前。政府から監査官として派遣され、任務を遂行し、晴れて長義は刀剣男士としてこの本丸に迎えられた。長義に一目惚れをしたのだという審神者は、顕現させてすぐに交際を申し出、それからというもの事あるごとに長義を求めた。
長義は審神者が求めるままに応じた。拒むことはしなかった。審神者を恋情や思慕として愛しているわけではなかったが、拒む理由が無かったからだ。人の子はみなかわいいものだ、求められたならば応じてやりたい。
審神者との関係において、長義には不満はなかった。求められ、それに応えることに喜びを感じている。愛されているのだと思っている。
「南泉」
ふと、その名を口にする。
南泉一文字は、長義がこの本丸にやって来たときからずっと心配してくれていた。
審神者から暴力を振るわれていることも、そのせいで体調を崩すことがあることも、愛玩動物のように扱われたかと思えば性処理の道具のように扱われることも、すべて知っていた。それでも、南泉は何も言わなかった。南泉が長義に対して何か言ったところで、状況が変わるわけではない。長義に変える気がないからだ。審神者に対して南泉が何か言えば、審神者が怒るのは目に見えている。
南泉は審神者を「主」とは呼ばない。
「……猫殺しくん」
もう一度、名を呼ぶ。
南泉一文字は、長義がこの本丸に来たときにはすでに顕現していた。
いつからいるのか長義は知らない。(かれが政府で業務にあたっていた個体であれば「南泉一文字」の入手機会は限定されているため予測が付いただろう。しかし特命調査の為に新規に顕現された個体であるかれにそういった知識はなかった。)だが、少なくとも長義よりはこの本丸を知っているはずだ。長義は、自分がここに来るまでのこの本丸について知らない。他の刀たちがどんな風に過ごしてきたのかを知らない。自分に「一目惚れをする」より前の審神者がどんな人間で、どのように刀たちに接し、どのような本丸を作ってきたのか、知らない。審神者に抱かれ、出陣して練度を上げる必要もない、そういうおそらくは「異常な」この暮らしが長義にとって本丸での生活として当たり前になっている。
この一年、長義が審神者に何をされたか、すべてを南泉は知っている。
「俺はね、この本丸に来れてよかったと思っているよ」
そう言うと、長義は淡く笑った。
「君と会えたからね」
南泉を想って口元を緩めた瞬間、後ろから伸びて来た手に口を塞がれる。
「……っ!?」
驚き目を見開くと、背後にいたのは審神者だった。いつもどおり着流し姿だ。風呂上がりなのか髪は濡れている。
「長義、俺以外の奴の名前を呼んじゃだめだよ」
審神者は耳元に唇を寄せると、囁くように告げた。長義は表情を強ばらせ、自分の口に添えられた手を払う。
「……主、こんな時間にどうしたんだい?」
努めて冷静に、普段通りの口調で問いかける。
「お前に会いたくなってさ」
審神者は笑ってそう言いながら長義の腕を掴むと、そのまま長椅子に押し倒した。
「主、ここは外だしもう明け方近い。明日……もう今日か、は非番ではないし、今はもう疲れてるから……」
「いいだろ、しようぜ」
「駄目だよ、せめて今、朝、はやめてくれないか」
「なんで?昼なら良いわけ?」
「違うけど、とにかくここでは嫌なんだ」
長義は抵抗したが、審神者の力が強く逃れられない。数値上の練度こそ99だが戦場にも演練にも手合わせにも入れられず、戦うためにうまれた体からその本来の力はとうに削がれていた。
「じゃあ部屋行こうぜ、なぁ、長義ぃ、いいだろ?」
審神者の言葉を聞いて、長義は諦めたような顔をすると身体の力を抜いた。
「……仕方のないおひとだ」
審神者が満足げに笑い長義の髪を撫でて、立ち上がらせる。
審神者は長義の手を引いて歩き出す。長義は手を引かれるがまま、その後をついていく。
「主、どこへ行くんだ」
「お前の部屋」
そう言われるに決まっていることでも思わず息を詰めた。自室で事に及べばきっとまた優しい南泉は酷く辛そうな顔をしながら長義のケアをしにきてくれるだろう。一晩に二度もそんなことをさせるのはかわいそうで申し訳ないと思った。
「何、嫌なのか?」
黙った長義に審神者が声を掛ける。
「今はイヤ、ここはイヤ、部屋もイヤ……どうしたんだよ、反抗期か?なんてな、はは。ああ、もしかしてそういうプレイ?」
「ちがっ……」
「まあいいか。どうせすぐに何もわかんなくなるし」
「主、待ってくれ。お願いだから」
「待たない。ほら、行くぞ」
そうしてずるずると引きずられるようにして長義は自分の部屋に連れて行かれた。
「主、頼む、こんなことしないでも俺はあなたのものだよ」
「わかってるよ」
長義の言葉に審神者が機嫌よく答える。
「あなたが望むならなんでもする。どんな形でもいい、傍に置いてくれればそれで」
「俺が望めばなんでもしてくれるのか?」
「もちろん」
「じゃあ、俺の子を産んでくれよ」
「えっ……?」
「子供だよ、俺とお前のこどもが欲しい」
審神者の言葉に長義は目を丸くしたあと、眉根を寄せた。
「主……それは無理じゃないかな」
「どうして?できるだろ」
「……できないよ。だって、俺は刀で刀剣男士で、男のからだをしてるんだよ?」
「それが?」
「……え」
「俺が、お前の主が「できる」って言ってるんだ」
審神者は心底不思議だという表情をして首を傾げた。
「何も問題ないだろ。孕んでくれるよな?」
「……」
「答えろ」
有無を言わさぬその言葉に長義は静かに目を伏せ、諦めたように小さく呟いた。
「……はい」
それを聞くと審神者は満足そうに笑い、長義の頭を撫でた。
「いい子だ、長義。大丈夫、ちょうぎは優秀だからな、きっと上手にできるよ」
「……あるじ」
「愛しているよ、長義」
審神者が長義を抱き締めると、長義もそっと震える腕を回す。
「俺も、愛してる」
そう言うと長義はゆっくりと瞳を閉じた。
***
「……ん、……」
次に長義が目を覚ました時、既に部屋の中は日の光で明るかった。
「起きたか」
長義が起きたことに気づいた審神者が声を掛ける。審神者は無煙煙草を咥え手元で端末を弄っていた。
「あるじ……」
起きた時に審神者がいるというのは珍しいことだった。普段は事を終え出すものを出したらすぐにいなくなっていて、放置された長義を南泉が世話してくれていた。体を起こそうとしたが体中が痛くて諦めた。汗や涙や諸々の体液が肌に張り付いて乾いた感覚が不快だったがどうしようもないので大人しく横になっていることにした。せめて上掛けを肩まで掛けようと身じろぎして、違和感に気付く。
(……?な、んだ?何か、後ろ……)
散々嬲られた体内に異物感がある。端的に言えば、何かが中に入っている。
「あ、あるじ、な、んか、」
「ああ、気付いた?」
長義の背を冷や汗が流れた。
「それ、栓な」
「は?」
「だって勿体無いだろ、せっかく注いだんだから。ちょっとでも早く、確実に、孕みたいだろ?」
絶句した長義に構わず——そもそもその様に気付いていないのかもしれない——審神者は笑って続ける。
「むしろ今まで1年あったのにちっともできなかった方がおかしいんだよな。なんでだろ?」
審神者は挿入する際避妊具を使ったことがない。事後の長義はいつも自分で指一本動かせないほど疲弊している。
「不思議だなぁ、長義ぃ、なんか心当たりある?」
長義の顔から血の気が引いた。全く理解したくないが理解した。
いつも南泉が後始末をしてくれていたから、審神者が出したもの全て掻き出しておいてくれたからだ。
本来の人間同士の性交であれば正直それは大した要因ではないだろう。避妊なしで犯された時点で掻き出すとか栓をするとかそういう話ではない。しかしここは本丸で、自分たちの体はこの人によって顕現していて、だから。審神者が「そう」思っているからここではそういうことになるらしい。
「あ、あ、あるじ、」
紙のように蒼白になった長義を見て審神者の笑みが深まる。
「まあ、過ぎたことを考えても仕方ないよな。今日からはいっぱい注いでやるから。これでやっと出来るといいなぁ、俺たちの子供」
審神者が今までになく優しい手つきで長義の腹を撫でた。長義は恐怖で声も出なかった。
「あれ、南泉?」
審神者はふと顔を上げて部屋の入り口を見た。長義もつられてそちらを見ると、入り口には防具を外した戦装束で表情を削ぎ落とした南泉が立っていた。
「あー……、悪いんだけど、俺ら今取り込み中で、ほら、分かるだろ?」
「……」
南泉は無言で部屋に入ってくると、審神者を押し退けて掛布ごと長義を抱き上げた。固まった長義はそれでも咄嗟に南泉にしがみついた。
「あ!?」
そのまま風呂場へ向かう南泉を見て、審神者は舌打ちをした。
「おい南泉お前さぁ、自分が何やってるかわかってんの?俺と長義の邪魔すんの?いきなり持ち上げられて長義怖がってるじゃん、」
背後で言い募る審神者に南泉は返事をしなかった。無言のまま浴室へ入ると、プラスチックの椅子にお湯を掛けそこに長義を支えながら座らせた。シャワーヘッドを手に取り温度を確認すると丁度良いくらいのお湯を出して長義の体にかけた。
「……っ!」
長義はびくりと震えて南泉を見上げる。無感情に見える南泉の瞳の奥に怒りを感じ取って、長義は唇を噛んだ。南泉は長義の首筋から胸に伝う粘液を丁寧に洗い流していく。胸の先端や臍にも指先が触れた時にまた体が反応したが南泉は気にする素振りもなくただ黙々と作業を続けた。
「……」
南泉は何も言わない。それが長義にとってありがたかった。と同時に、南泉が何を思っているのか分からず居心地が悪かった。
どこから会話を聞いていたのか分からないが審神者に何をされたのか、ある程度は察しているはずだ。気になってもいるだろう。しかしそれを問い質したりしないところがかれの優しさだと知っている。けれど(長義がそれを望んでいなかったので)大きく事を荒立てないよう人前では審神者に対する嫌悪や敵意を綺麗に隠していたかれが、このように露骨な行動をし、これほど強く怒っている訳がよくわからなかった。
だから長義も何も言わず、ただされるがままになっていた。
「こんなもんか……。あと中だけど……立てるか?」
「……っ」
ひゅ、と喉が引き攣れる音がした。南泉はいつもの手順で清めているだけだ。そしてそこが一番処理してもらった方がいいことは先ほど分かった。しかしとっくにこの相手に対しては捨てたはずの羞恥が湧く。いや、羞恥、というよりこれは、
「山姥切?」
恐怖だ。一体どう思われるだろうか、という。
「……」
長義は答えられなかった。顔を俯けて目線を合わせないようにした。その様子に南泉はそっとひとつ息を吐くと「いいか」と言った。
「オレはお前の嫌なことをする為にここに居るんじゃない。もしもお前が本気で、本気で望むってんなら審神者の所に送る。お前の嫌がることはしない。望まないことはしない。お前を見捨てたり、軽蔑したり、お前の誇りを踏み躙るようなことは、絶対にしない。分かってくれ、頼むから……」
「え……」
長義が驚いて顔を上げると、南泉は困ったように眉を下げていた。
「そんな泣きそうな顔してる奴に無理矢理どうこうするほど落ちぶれちゃいねぇよ」
南泉はそう言って手を伸ばし、優しく長義の目元を拭う。長義は初めて泣いていることに気付いた。
「お前の嫌なことをしたいわけじゃない。でも、助けたいと思ってるのは本当だ」
「なんせん……」
「オレのエゴだってことは知ってる。お前が審神者との関係を……自分の意志で受け入れていることは。だけど、それでも、」
「南泉」
長義は、下を向いて吐くように語る南泉の頬に両手を添えて顔を上げるよう促した。
「違うんだ、きみのことが嫌な訳じゃない。ただ、どうしてきみがここまで俺に心を砕いてくれるのか、わからなくて。……幻滅、されたくはなくて。自分がどういうふうに扱われたのか見せることが、知られることが、今更少しだけ、怖かった」