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    rara_wcat

    SS進捗や二次短歌の下書きのスクショなどの置き場。絵は殆どないし下手絵だけです。

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    rara_wcat

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    詠んだ短歌から想起したSS
    ブレワイ神獣メドー戦直後の飛行訓練場でのテバサキ夫婦の捏造小話。サキさんはテバさんにだけはズバズバ言う人だといい。

    ##SS
    ##短歌

     訓練場に吹き荒れる上昇気流はいつもより心做しか猛々しく、小屋の屋根をガタガタと揺らしている。
     桟橋の先では粉雪が竜巻のように舞い上がっては落ちるを繰り返していて、数時間前の機械仕掛けの巨鳥との激闘をテバの脳裏に思い起こさせた。


    「――――」

     空を見上げる。
     上空には未だ大きな鳥のバケモノが悠々と翼を広げていた。今、リンクはあの内部にいる筈だが……。

    「――あいつ、大丈夫だろうか」
    「貴方はまずご自分の心配をなさってはどうですか?」

     知らず口をついて出た言葉に涼やかな鈴のような声が返ってくる。

    「痛ぇっ!」

     同時に左脚の傷に巻かれ始めた包帯を急にギリと締めあげられ、テバは思わず大きく呻いた。

    「……おい、サキ。少しは加減してくれないか。治る怪我もこれでは悪くなるだろう」

     テバは痛みに顔をしかめながら包帯を締め上げた犯人……もとい今自分の怪我の処置にあたってくれている己が妻であるサキを窘めた。

    「あら、私が来てすぐは『こんな怪我痛くも痒くもない』と大見得切っていたのは貴方ではありませんか」
    「ぅぐ…」

     シレッとした顔で包帯をテキパキと巻きながらサキはチクリと切り返してくる。
     ……相変わらず、口では妻には全く歯が立たない。おっとりしているようでその実、サキはとても聡く俺にだけは特に口達者なのだ。

    「……さっきは邪険にして悪かった」
    「分かっていただければそれでいいです」


     サキが大きな薬箱や食材を持って飛行訓練場にやってきたのは、メドーの砲撃でやられた左脚をかばいながらなんとかここに戻ってきてしばらくした後だった。本人曰く悪い予感がしたから、らしい。
     チューリはどうしたんだと聞けばカッシーワの奥方に預けてきたと言われ、勝手に家を飛び出してくるなんてと呟けば族長の許可はもらっていると即刻返されて、追い返す理由もすぐに尽きてしまい、今に至る。


     しばらく会話が無くなり、囲炉裏の焚き火が小さく弾ける音が狭い山小屋に厳かに響く。

    「……大丈夫ですよ、きっと」

     サキが包帯の巻き終わりの処置をしながらまたポツリと呟く。

    「一体何の根拠があってそんな事を」
    「あの方は英傑の末裔様だそうですから」
    「な、なんだって……?!」
    「族長様がそう仰っていました。だから私は貴方が飛行訓練場(ここ)に向かった事をあの方にお伝えしたのです」
    「そうか……そうだったのか……」

     それでようやく合点がいった。

    「ハイリアの英傑様は武芸百般だったと聞く。リンクは弓だけじゃなくて剣も槍の腕も確かだった。末裔である事は間違いないだろう」
    「……貴方は本当に、英傑様たちの話がお好きなんですね」
    「勿論だとも! リーバル様は勿論、鉄壁の護りを誇るゴロンの猛者や雷を操るゲルドの族長、そして癒しの力を持つゾーラの王女……。彼らの活躍と尊い犠牲があって、俺たちは今もこうやって生きていられるんだ。絶対にそれを忘れてはならん」
    「……死んでしまっては彼らを思い出す事も出来なくなるんですよ?」

     そうサキに言われ、ハッとした。

    「ああ、そうだな……」

     囲炉裏で煮ている麦がゆをかき混ぜていたサキの肩にそっと触れる。
     元々華奢だった彼女の首周りは少し前よりほっそりとしていた。
     自分が思っていた以上に、今回の件で妻にはかなりの負担をかけてしまっていたようだ。

    「すまなかったな、空のバケモノが現れてからずっと苦労をかけて」
    「……別に、分かっていただければそれでいいんです」

     テバの顔を振り返らずにサキは小さく呟く。
     その声は幾分か震えを含んでいた。
     小言や嫌味はズバズバ言うが、自分の弱い部分はすぐに隠したがるのだ。
     そういう所が意地らしくて可愛らしくて、守ってやりたいと強く思ったからこそ夫婦になった。
     その事を今更のように思い出し、触れていただけだった妻の肩をそっと抱き寄せる。

    「……ありがとう、サキ。お前が俺の妻で本当に良かった」

     耳元で囁く。

    「おだてられても、今の貴方には麦がゆ以外出せませんよ」

     邪険な言い方はするものの、サキは遠慮がちに俺に寄り添ったままだ。

    「分かってるさ」

     中々素直になれない妻を苦笑しつつ、その頬に軽く嘴を擦り寄せた。


    吹き溜まる谷風は雪舞い上げて
    妻は囲炉裏で麦がゆ煮ており
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