かつて月と呼ばれた ──前編 そのとき、白い大地に星が――星が降ってきたのかと思った。
『あーーー。はいはいはい、マイクテストマイクテスト』
ほとんど衝突のような勢いで不時着した飛行体の周辺には、未だ土煙が舞っている。飛行体から姿を現した奇妙な出で立ちの男は、土煙を割ってこちらへ向かってきていた。
『はいは〜い、ハローハロー、グーテンモルゲン?』
顔の大部分を覆ったマスクの向こうから、くぐもった声が聞こえる。口元に小型の拡声器でも付いているのか、機械を通した響きだ。
男が話しかけてくる姿勢に敵意は感じなかった。しかし、警戒はしているんだろう。こちらが仕掛ければすぐにでも反撃ができるよう構えているのがわかる。
さりとてそれは、お互い様だ。
7832