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    38sgmj

    @38sgmj

    38(さや)と申します。
    えっちなやつや犬辻以外のものを載せています。
    大変申し訳ありませんが、基本的に読み手への配慮はしておりません。
    また、無いとは思いますが…。未成年の方の年齢制限話の閲覧や、転載、印刷しての保存等はおやめください。信じてます…。

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    38sgmj

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    去年書いて、いやなんかこれおもんないわ、とボツにした犬辻。でも、人生何が起こるかわかりませんし、おもしろく感じる日も来るかもしれない。ので、こっちに載せて保存しておくことにします。
    辻ちゃんの無自覚な好意を受けての犬飼先輩の話。

    犬辻 おれは多分、辻新之助に好かれている。
     年齢は一歳下で、ボーダー歴では一年近く先輩にあたる辻新之助。二宮先輩に紹介されて初めて知った彼は、なるほど、先輩が好みそうだ、と思うくらい容姿も優れていた。当時としては希少な攻撃手の一人で、こんなに大人しそうなのに危険な前衛を張るのか、と驚いたのを覚えている。年齢以上に大人びた雰囲気で、でも、ほんのり丸みを帯びた頬のラインが幼く可愛らしい、おれの大切なチームメイトで、先輩で、弟分。そんな存在が辻新之助だった。それが少しずつ変化していったのは、おそらく高校進学後。学校でも顔を合わすようになって、はたと気がついた。おれは多分、辻ちゃんに好かれている、と。もちろん、彼はおれに限らず誰にでも丁寧に接する子で無闇に人を嫌ったりしないから、元々好かれていたのだと思う。でも、そういうのとは違う、どちらかと言うと恋慕に近い感情でおれを見ていた。勘違いだとか、自惚れ、自意識過剰。何度もそう思って考え直したけれど、おれは人の好意を察するのが得意なほうだったから、多分これは間違っていない。犬飼先輩、とおれを呼ぶその声が、おれを見る黒い瞳が、どうにも甘くおれに届くのだ。

    「犬飼先輩、おはようございます」
     ほら、今日もその顔をする。もうお昼でおはようと挨拶する時間ではないけれど、食堂近くの廊下で鉢合わせた辻ちゃんは律儀におれにそう挨拶し、やわらかく目尻を下げた。ほら、それ。クールだとかポーカーフェイスだとか言われがちな辻ちゃんがふにゃりと笑った。辻ちゃんだって笑わないわけではないから珍しいとまでは言えないけれど、それでもおれは、片桐や奈良坂相手にこんな風に笑っている辻ちゃんは見たことがない。辻ちゃんに一番懐いていて、辻ちゃん自身も可愛がっている後輩の日佐人くんにだってこんな風には笑わない。辻ちゃんの黒く涼やかな瞳が紫色の熱を灯して光っていた。
    「おはよ、辻ちゃん」
     今までおれに好意を寄せてくれていた女の子達もそうだった。好意で瞳孔が開き、光を多く反射する。それが、辻ちゃんにも起こっている。ただ挨拶だけ交わして別れる時もあったし、その後話し込むことも、なんなら一緒に昼食をとることだってあったけれど、いつだって辻ちゃんの黒い瞳は鮮やかな紫に輝いて見えた。可愛いな、と思った。辻ちゃんは上手く接することが出来ないだけで女の子が好きなストレートだし、だからこそ同性が好きなんじゃないかって周りに言われる度に隠しもせず怒りを顔に乗せていたくらいだもの、おれを好きになるなんて到底あり得ない話だ。でも、それでも、無自覚なのかおれを見る目はいつだってとろりと甘い熱を帯びていた。辻ちゃんは初恋も気になる子もいないって言うし、多分勘違いしてるんだと思う。優しくされて、これは辻ちゃんにだけだよ、なんて特別扱いされて、それで、おれに絆されてしまったのか。だとしたら、なんて可愛くて、可哀想な辻ちゃん。おれは普通に辻ちゃんのことが好きだし、初めて出来た弟みたいな存在だし、大切にしたい。辻ちゃんが本当に好きな子が見つかるまで、良い先輩でありたい。そう思って過ごしていた。でも。でもね。
    「犬飼先輩」
    「今日はよく会いますね」
    「ふふっ。俺、先輩に此処で会う日は、ついてる日だなって思ってるんです」
    「本当です。最近気づいたんですけど、俺、先輩に会えないかなって期待してるんです」
    「え? 理由? そうですね、……それは」
     犬飼先輩に会えると嬉しいですから。
     恥ずかしそうに眉を下げて。はっきり言葉にしたくせに言い終わってから思い出したように染まる頬。今年の一年はレベルが高いと、中等部の頃から圧倒的な人気を得ていた奈良坂と並んで名前が上がる辻ちゃん。奈良坂が洋風な美人だとしたら、辻ちゃんは和風美人。クールなイケメンだって、清涼感が凄い、だなんて言われてるのに、笑えば可愛いし、照れた顔は庇護欲や無いはずの母性すらくすぐる破壊力。それで、おれに会えると嬉しい、って、それはさすがにえぐいって。こっちまで照れるし、その感情に引っ張られてしまいそうだ。それに、辻ちゃんがそういう顔をするのはやっぱりおれにだけみたいで、スン、と澄ました綺麗な顔は今も崩れることなく後輩攻撃手達に向けられている。辻せんぱーい、なんて名前を呼ばれて腕を引っ張られても何の感情も浮かばないその顔が、なんだか最近はおれに妙な優越感を与えている。あの辻ちゃんが好きなのは、おれ。そう思うと経験したことのない甘くて強い熱が体をちりちりと焼いていく。しまったな、これは、まずいことになった。そう気づいた時にはもう遅い。おれは多分、辻新之助に好かれている。そして、おれ、犬飼澄晴も辻新之助に惹かれてしまっている。こんなはずじゃなかったのに。勘違いしちゃって可哀想、なんて思っていたのに。用事なんて無いくせに、後輩に腕を引かれる辻ちゃんの背中に抱きついて引き止めるおれは、もう元には戻れない。
    「ダメだよ、辻ちゃんは渡さない」
     驚いたようにおれを振り返る辻ちゃんの瞳はやっぱりとろりとした紫色。でも、おれ、今辻ちゃんを抱いてようやくわかってしまった。辻ちゃんが先だったわけじゃないって。これは、情けない。おれが辻ちゃんの淡い気持ちに期待してどんどん熱を上げるから、だから辻ちゃんの瞳はおれを受けて溶けて光って見えたんだ。なぁんだ、全部、おれのせい。だったら、もう引く必要ないわけだ。
    「辻ちゃんは、おれのパートナーだよ」
     冗談のように言って笑うことは出来るのに、ほんと、だっさいな。目は隠せない。無自覚なのは、おれのほう。
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    38sgmj

    MOURNINGつじちゃんと同じクラスになったモブ子がつじちゃんにフラれるお話です。つじしんのすけは罪深い男だから、わたしが好きになった人はやっぱり素敵で格好良いって思わせてくれる、なかなかの人物です。
    フラれモブ子のお話 クラスどころか学校の有名人。自分には勉強しか出来ることがないと言い聞かせるように打ち込んで合格した進学校は、頭だけでなく顔まで良い人達で溢れていた。綾辻さんは美人で優しい才色兼備の女の子。奈良坂くんは綺麗すぎて逆に現実味が無いように思えてしまうほどの美男子。ボーダーに所属しているという彼女達は、勇敢なだけでなくすべてが優れているようだった。そして同じクラスのボーダー隊員、辻くんもまた綺麗な顔をした男の子だった。あまり表情を変えることなく淡々と過ごす彼は、なんだかまるで精巧に作られた人形のようだ。自分は元々男子とは関わりが無かったけれど、辻くんとは本当に縁がないのだろうなぁ、と漠然とそう思った。生きている世界が違いすぎると、そう思ったのだ。六頴館の中にヒエラルキーがあるとしたら、その上位は間違いなくボーダー所属の美男美女達。辻くんはまさにそこに位置する人間で、自分は正反対の最下層。特に思いを寄せているわけでは無いけれど、それでも早々に未来を否定するくらいには次元が違いすぎていた。
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    38sgmj

    MOURNING去年書いて、いやなんかこれおもんないわ、とボツにした犬辻。でも、人生何が起こるかわかりませんし、おもしろく感じる日も来るかもしれない。ので、こっちに載せて保存しておくことにします。
    辻ちゃんの無自覚な好意を受けての犬飼先輩の話。
    犬辻 おれは多分、辻新之助に好かれている。
     年齢は一歳下で、ボーダー歴では一年近く先輩にあたる辻新之助。二宮先輩に紹介されて初めて知った彼は、なるほど、先輩が好みそうだ、と思うくらい容姿も優れていた。当時としては希少な攻撃手の一人で、こんなに大人しそうなのに危険な前衛を張るのか、と驚いたのを覚えている。年齢以上に大人びた雰囲気で、でも、ほんのり丸みを帯びた頬のラインが幼く可愛らしい、おれの大切なチームメイトで、先輩で、弟分。そんな存在が辻新之助だった。それが少しずつ変化していったのは、おそらく高校進学後。学校でも顔を合わすようになって、はたと気がついた。おれは多分、辻ちゃんに好かれている、と。もちろん、彼はおれに限らず誰にでも丁寧に接する子で無闇に人を嫌ったりしないから、元々好かれていたのだと思う。でも、そういうのとは違う、どちらかと言うと恋慕に近い感情でおれを見ていた。勘違いだとか、自惚れ、自意識過剰。何度もそう思って考え直したけれど、おれは人の好意を察するのが得意なほうだったから、多分これは間違っていない。犬飼先輩、とおれを呼ぶその声が、おれを見る黒い瞳が、どうにも甘くおれに届くのだ。
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    38sgmj

    MOURNING衝動の吐き出しとリハビリを兼ねて
    3/5 追記
    舞台俳優犬辻1
     約二週間、全十六公演最後となる大千穐楽を迎え、メイクを落として着替えも済ますと、気持ちはもうすっかり次の舞台に向いていた。重複する舞台スケジュール、どれ一つとして疎かにしたつもりはないけれど、それでもおれは次の舞台に賭けていた。

     おれが舞台俳優の世界に足を踏み入れたのは三年前。幼い時から姉達を真似て雑誌モデルやちょっとしたエキストラとして撮影に参加させてもらっていたけれど、当時アイドル界の異端児として活動していた二宮さんを見て、嗚呼、おれもあのキラキラした世界で輝きたい、とアイドルを目指すようになった。二宮さんの所属する事務所の訓練生として少しずつ成果を上げていっていたある日、転機が訪れた。二宮さんがある番組のオーディション番組の審査員として参加することになった。それは、日プ、と呼ばれる国民プロデューサーによる投票でメンバーが決まるアイドルオーディション番組だ。事務所関係なく現役アイドル代表として二宮さんや、ライバル事務所所属のグループのリーダーも審査員として参加する、かなり大がかりなイベントだった。おれは正直、まずは事務所の直接の後輩にあたるおれ達訓練生から見てほしかった、なんて思っていたけれど、オーディション参加者の一人を見て考えを改めることになった。一目見てわかった。推し、だ。推しが出来た。彼しか目に入らない。イケメンなんてこの業界にいればいくらでも見るし、おれだってその自覚があるからこうしてアイドルなんて目指してるわけだけれど、それでも、これは、顔が良い、と思った。まだ成長途中だってわかる薄い体は幼いけれど、それでも細身の長身、長い手脚、小さな顔、少し吊り目気味の涼しげな目は時に妙な色気を生んだ。他の応募者のように自信に満ち溢れているわけでも愛嬌があるわけでもないけれど、それでも淡々と、いつか二宮さんと並んでお仕事がしたい、と語る彼の黒目は鮮やかな紫色に輝いていた。書類審査はもちろん、二次審査、三次審査と危なげなく合格していった推しは、次のグループ課題でおれを完全に沼に落としていった。自分の合否がかかっている場面でも躓く候補者を懸命にサポートしグループの底上げに貢献し、メインのカメラには映らないところで自分の課題に静かに取り組み、そして、アイドルとしては致命的な表情の薄い顔をやわらかにゆるめてグループの成功を喜んでいた。顔が良くて、優しくて、サポー
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