バンドパロ 最初は二宮さんの負けず嫌いから始まったお遊びだった。大学の有名人、二宮さんに突然声をかけられたんだ。
「お前、バンド組めるか」
無遠慮に、そう、それだけ。二宮さんはピアノ科の先輩で、でも、おれの知っている二宮匡貴はバイオリン奏者のはずだった。姉に混ざって習い始めたバイオリンのコンクールで初めて見た二宮さんは本当に眩しくて、力強くて、輝いていた。そんな一方的に憧れて追った二宮さんは、同じ大学に入ってみればピアノに転向していたのだから世界がひっくり返ってしまった。それでも真面目に結果を出していけばいつか二宮さんと巡りあって、そして一緒に演奏出来る日が来るんじゃないか。自分にしては珍しく漠然とした希望を抱いて過ごしていた矢先のこれだ。バンド組めるか、だって。まさか仲良くなる前にバンドに誘われるなんて、ほんと、二宮さんって凄い人だ。なんでも、声楽科の知り合いが企画したイベントへのバンド出演を断ったら、そうだったわ、二宮くんには難しいわよね、なんて煽り以外の何物でもない言い方で返されてしまったらしい。それが、早い話プライドに触ったんだろう。二宮さんは大急ぎで学内のめぼしい人員に当たりをつけ、こうやって勧誘に回ってるわけだ。自分がすでにイケメンなくせに、後ろに黒髪の美人まで引き連れてさ。
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