どっちがいいの「お前さ、どっちがいいの?」
夕飯のラーメンを食べての帰り道。
スーツに跳んだラーメンの汁の行方をそれとなく探していた茂夫は、投げかけられた唐突な質問に戸惑って霊幻を見た。
「どっちって、何のことですか?」
「抱くのと、抱かれるの。付き合いたいんだろ、俺と」
「急に何言い出すんだアンタ………大体、まだ告白の返事、貰ってないですよ」
茂夫がそう返すと、霊幻はふい、と顔を背けた。何か言いたげな後頭部が、歩く度に少し揺れる。
(……………かわいいな)
そんなことを反射的に考えながら、はて、と茂夫は立ち止まる。
(師匠はなんで、急にそんなこと聞いたのかな)
頼もしくて、真っ直ぐで、それでいてどこか寂しげな背中が遠ざかっていく。
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