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    maneco3612

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    maneco3612

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    ブラオス結婚おめでと〜〜〜!!のきもち

    #ブラオス

     ブラッドとオスカーが入籍して一週間。両親や仲の良い友人に報告を済ませてようやくひと息ついた頃だった。
     パトロールに出ると声を掛けられることが増えたような気がする、とオスカーは首をかしげた。今までは体格と表情から怖いと思われることが多く、人気者のブラッドどころかメンティーふたりよりも声を掛けられる回数が少なかったのだ。
    「あの、オスカーさんですよね?」
     振り向くと、穏やかに笑う女性が立っていた。女性だと身長差が広がる場合が多いので余計に怖がられることがほとんどだったのだが。
    「はい。何かありましたか?」
    「えっと……ほら、自分でお願いしなさい」
     女性が背を押したのはさらに小さな──屈んでも目線が合わないような女の子だった。それでもオスカーは膝をついて、できるだけ威圧感を与えないように少女の顔を覗きこんだ。
    「あの、あの、……さ、サインください……っ!」
     勇気を振り絞って少女が差し出したペンと色紙。少女の母親が言うには、以前レスキュー隊の仕事をした時にたまたま通りがかった少女が「かっこいい!」とはしゃいでいたらしい。
    「ありがとう。良かったらこれからも応援してくれ」
    「うん! ありがとう!」
     宝物のように色紙を胸に抱きしめて、少女は手を振りながら去っていった。


    「──ということがありました。最近そういったことが増えたのですが、何かあったんでしょうか……」
     夜の報告会は入籍をしても変わらず行っていた。ベッドについた手を重ねていることだけは今までと変わったことだ。
    「以前オスカーの表情が柔らかくなったとディノが言っていたから、そのせいかもしれないな」
    「あ……」
     さっとオスカーの肌に朱がさした。結婚の報告の前に付き合っていることは告げていた。その時に、二人とも幸せだからなんだなとディノが言っていたのを思い出したのだ。
    「顔に出ていたと思うと少し恥ずかしいですが……でも、ブラッドさまといるからだと考えれば嬉しい、です」
     ふにゃりと笑う顔は、幸せを体現しているかのようだった。もともと垂れ気味の目尻が下がって、緩く弧を描く口元が可愛らしいとブラッドはいつも思う。
    「……ああ、俺もだ」
     どちらからともなく、唇を重ねるだけのキスをする。明日は早くから仕事だとわかっているから、それ以上が欲しくなる触れ合いはしない。
    「そういえば、サインが必要な書類がある。今してもらえるか」
     ブラッドが差し出した書類を断る理由もなく、オスカーはペンを受け取って自分の名前を書いた。
    「どうした?」
     名前を書いてぴたりとオスカーの動きが止まる。手元を見ても書き間違えている様子はない。
    「あ、いえ……仕事では名前を変えていないですが、ファミリーネームの頭文字は同じなので、その……い、今さら実感というか……」
     先ほどさした朱よりも濃い色がオスカーの肌に乗った。オスカーが元のファミリーネームのつもりで書いて、ブラッドと結婚した今のファミリーネームで連想したようだ。
    「ブラッドさまに教えていただいたこの字を、ブラッドさまと同じ名前になって書けたのがすごく嬉しいんです」
    「教えた当時は考えてもいなかったが……そうだな、こういうことを幸せと言うのだろうな」
     抱きしめて、ネックレスに通した指輪に触れる。指輪に移ったオスカーの体温がじわりとブラッドの手になじんだ。
     指を絡めて、頬を擦り合わせて、密やかに笑みをこぼして。その幸福は煮つめたシロップのようだった。
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    すいぎんこ

    DONEブラオス小話。こしのさんの素敵イラストのネタをお借りしました。エリ雄本編とは違うような似たような、なんかふわっとした設定です。友情出演で、今回も🍺がいます。
    一発逆転ジャックポット(ブラオス)「ええと、普段の時給は16ドルです。でも今日はホールなので、もう少し高いとは思うのですが」
     大真面目に答えたオスカーの言葉に、男は珍しいマゼンダ色の瞳を大きく見開いた。その後ろからは馬鹿笑いと称して良い声量の笑い声。最近入ったという怠惰なディーラーの声を聞きながら、オスカーは困惑に眉を下げた。


     時は遡ること数時間前。いつも通りオスカーは己が勤めているカジノに出勤していた。オスカーが今身を置いているカジノは繁華街の路地を入ったところにある、まあ言ってしまえば「あまりよろしくない」類の店で、ブラックとグレーの間をギリギリ綱渡りしているような店だった。
     カジノとしても違法性が高く、バックにヤバい組織が絡んでいると黒い噂があるとかなんとか。それだけ知っていても、身寄りもないストリートチルドレン出身の青年を雇ってくれる貴重な店であるだけに文句は言えず、今日も彼はお仕着せのガードマンの制服に腕を通して配備位置に着こうと従業員通路を歩いていた。
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