手拭い　週末がようやく訪れた。夏の夜はどうしたって人間の素直な欲望が、滾って仕方無く。
　それは愛し合う宇髄天元と煉獄杏寿郎にもいえることであった。

　荒い息遣いが寝室に響く。
　その先を強請るように蠢く指先が愛おしくて、思わずそれを甘く噛むが、恐らくその恋人はそれで満足しないだろう。
「まだ……君が……ナカに……」
「気持ちよくて蕩けそうだよ…煉獄……」
　達しきって体の最奥の蠢きが止んだものの、その存在感に満足する愛しい人の蕩ける表情をいつまでも眺めていたい。
　宇髄は空調の効く中でも快感を発して、恋人が全身で発汗することを知っていた。
　平日には何かと必要な少量の水分。週末にはイオン飲料と五本以上の濡れた手拭いを入れて用意しておく、小ぶりの冷蔵庫を寝室に置いた。
「一回、抜こうな？」
「うん……ゆっくり…し…て…ァ…ン…」
　引き締まって充血する敏感な内膜を最後に擦り、己を引き出す宇髄もまた、そっと快感を引きずって。
　だが。
　この愛しい人が自分の凶器とならんばかりの代物を受け入れ包みこんで、その美しい金色を振り乱して愛してくれる。
「熱い……うずい……」
「ちょっと待ってな…」
　手元で茎に垂れ下がった精子入りのゼロワンを引き抜いて口を縛って捨てる。そして手を伸ばして件の冷蔵庫の冷やした手拭いを取り出し、まずはその火照って赤くなった煉獄の額に押し当てた。
「気持ち良い…」
「煉獄」
「ありがとう……君は……？」
　顔中に冷えた手拭いを当てて、覚醒した煉獄がゆっくりと起き上がって宇髄を見つめた。
「君もたくさん汗をかいて……」
　自分を拭っていた青い手ぬぐいを奪い取って、煉獄は宇髄の白い額にそれを充てる。
　だが、十分な冷たさを感じることができなくて、冷蔵庫を開けて溶けきらぬロックアイスの氷を新しい白い手拭いに巻いて、愛しい者の額に充てた。

「……サンキュ……煉獄……」
「愛しいなぁ……君が俺を……こんなに愛してくれて……君から受ける体中の快感を…」
　ゆっくりと冷たい布を移動させて顔中を拭い、首元、首裏、鎖骨周辺を辿って体の中心線から落ちて臍下三寸を通り越して。
「もっと欲しくて………俺は……いやらしいのかなと……もっと君が欲しくて淫乱なのかと…思ってしまう」
　先程まで己を翻弄したまだ　半分硬さを持った宇髄の太い茎にどちらかのものとわからぬくらいに混じるヌルつきを同時に拭き上げて、ベッド下にそっとそれを放り。
「淫乱上等ォ…！」
　上目遣いに誘った煉獄を再び抱き寄せて、茎を煉獄の菊に押し当てて座位のまま挿入した。
「ア……うずィ……」
　再び二人、なんの抵抗もなく結びついてすぐに達するも、まだまだ足りず。
「も、う……ぬるぬる……だ……」
「あとで、あのキレイな模様の手ぬぐいで拭いてやるから……もっと！」
「もっと…！」
　全身に走る喜びの詩を、迸る生命の寿ぎを、例え二人だけにしか理解されなくとも。
　拭き上げられて放られたそれぞれの布の模様には彼らを祝う花々たちが彩られ。
　夜通し咲き誇るベッドの上のたおやかな花は、いつしか溢れんばかりの愛に包まれて、暫しの眠りに落ちるのであった。