学校の帰り道には、青々と苔むした石段の先に色あせた朱色の鳥居があった。更にその奥へ進むと廃れた神社が鎮座しているらしい。断言できないのは、自分が一度もそこに足を運んだことがないからだ。そもそも、覆うようにうっそうと茂った木々が鳥居の向こうを隠し、先を見えなくしてしまっている。ただでさえここは陽があまり当たらず薄暗いのに、さらにその奥は真っ暗なのに付け加えて異様な空気で覆われているのだから好き好んで近づく人はいないだろう。
「……あれ」
いつもの帰り道。
いつもと同じ道を同じように帰っている途中の出来事だった。あの石段のある場所へ差し掛かろうとした時、黒の布地に白のラインの入ったライダージャケットを着ている金髪の男が、石段をゆっくりと上がっていく姿を見かけた。あんな辺鄙な所へ行く人を滅多に見ない分、そこに人がいるというだけで珍しい。それに後ろ姿だけでも分かる美しい外国人なのだから、目を引くのは尚更だった。
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