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    Unyanyanganyan

    @Unyanyanganyan

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    Unyanyanganyan

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    そっと、そっと 僕はね、思うんだ。君と出会った僕のセカイが、ぐるりぐるりと姿形をかえて、知らない景色が生まれ、新しい色を作り出して。僕の内側の深い深い海の底に眠る、一粒の真珠を掘り出して、まだ誰も知らないその小さな丸い粒に意味を与えて。君の漏らしたほんの僅かな息吹が、辺り一面を春へと変えてしまうようだ。ほんのりと染まる薄紅のセカイに吹く風は柔らかくて優しい。心地良くて、嬉しくて、もうあの空へ吸い込まれてしまいそうな心持ちだ。ねえ、司くん。僕はね、思うんだよ。君に出会うために生まれてきたのか、と。

     まだ、たいした人生なんて送ってやいないのさ。僕は、器用で、不器用だった。僕は、僕をよく知っているようで、知らない事だらけだったらしい。上手に出来ずに、苦しんだり、苦しめたり。身体の中心が妙にスカスカとして、空洞になっていたり。心から好きだと思っているはずなのに、心の真ん中から空気は漏れてしまう。上手に出来ないんだ。
     それを塞いでくれたの–––?

     君に出会うために、生まれてきた訳じゃないんだ。
     君に出会うための人生だった訳じゃないんだ。

     君と出会うために、この道のりがあった訳じゃないんだ。僕はとうとう、分かってしまったんだ。あのね、司くん。僕は君と出会わなくても、僕の人生を歩んでいたんだ。君も、そうなんだ。じゃあ、君と出会った僕は何なんだろうか、というとね。君と出会ったことで、僕はこれまでの人生を、少しも、一ミリだって、後悔せずにいられるようになったんだ。僕のこれまでを、悔いずに、全て受け入れられるんだよ。それはすごい事だと思わないかい。アタリの籤、ハズレの籤。どちらを手にしても、僕は悔いずにいられてしまうんだ。司くん、聞いておくれよ。僕はハズレの籤を引いてしまったのさ、と笑って君に話すんだ。きっと君は、残念だったが、次はきっと当たるだろうさ、と信じてくれるんだ。

     司くん、君はどう思う?


     さらりと風が髪を撫でて、司はふと目を開けた。ここはワンダーステージ。暖かな日差しはあっても、風が吹けばひやりと冷たかった。頬が触れているあたたかな感触の正体を思い出す。確か、少しの休憩を、類と……。類と……。

    「お目覚めかい、眠り姫さん」

     ぐるりと頭の向きを変えれば、満足気な表情とかち合った。撫で付ける指が頬の形をくやりと歪ませていく。夢を見ていたらしい。ハッキリとその声は鼓膜を揺すぶるのに、何故だか内容がよく思い出せない。

     見下ろす目がやんわりと弧を描いている。夢の中でもこの瞳を見た気がした。面白い事もないというのにふふふと笑う類の髪がぱらぱらと揺れて、司の頬を擽る。

    「おい、髪がこそばゆいぞ」
    「おやそれはすまない」

     そういうと類は、長い左脇の髪を耳に掛けてさらに近付いた。司の言葉を飲み込んで、ふたりの息は重なる。一瞬の逢瀬、けれどそれは、永遠のように二人に触れた。

    「こんなところで……!」

     離れた唇に向かって文句を言おうとした司は、類の目に息を止めた。

     司くん、君はどう思う–––

     パッと駆け抜ける類の言葉に、夢を思い出して、司はまじまじとその顔を見上げた。あれは夢か? それとも、類……。

     そっと手を伸ばして頬に触れてみる。心底嬉しそうに目を伏せた類が、その手に手のひらを重ねてきた。じんわりと温かかった。
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    Unyanyanganyan

    MEMOなんのカップリングでもない小説でもない独り言です。
    無題 一年前の夏。景色はあまりに鮮やかだった。絵の具を零したような彩度で飾られた風景と、全てが物語の一部のような日々だった。私は、彼女が好きだった。彼女が好きで、自分自身も好きになろうとしていた。自分を受け入れようとして、自分を許せる気がしていた。

     きっと上手くいくと思っていた。ゆっくりと、ゆっくりと、新しい何かが生まれてくるような心地に生きていた。

     それを、全部、捨ててしまおうと思ったのはいつからだったか。頑張って、努力して、我慢して、我慢して、我慢して、まだ頑張れて、まだ平気で、進み続けているうちにもうダメな場所にいる事にも気が付けなかった。
     鮮やかだった夏の景色は色褪せた。風に揺れる木の葉の音色が好きだった気がする。でももうそんなものは聴こえてこなかった。鉛玉を舐めているような毎日だった。人を憎んだ。憎くて、憎くて、この世界が消え去って欲しいと願った。何もかもがつまらなかった。くだらなかった。好きではなかった。そんな腐った感情を飲み下して笑った。人と会話を交わした。全ては嘘ばかり。何一つ興味もなくて、何もかもがどうでも良くて、私はただの嘘吐きになった。嘘が嫌いだった。自分も嫌いだった。自分が憎くて憎くて、殺してしまいたかった。つまらないくせに、楽しそうに過ごす自分が憎かった。
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