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    takasato_mmas

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    takasato_mmas

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    支部にUP予定の成人済みの喧嘩する五七。まだまだ続きます。のでお試し投稿を兼ねて。

    「アナタ、毎度毎度勝手に人の家にあがらないでいただけますか」



     秋が訪れて数日経過し、間もなく時計の針が二本とも真上へと向きそうな時分に、バスルームから出てきた七海。
     彼の顔はまだ赤く、首にはタオルを、腰にはバスタオルを巻いたまま、リビングにあるソファーに我が物顔で座っている黒服の人物を見下ろした。
    「おっ七海~、お疲れさん。今日も一段と、セクシーだねぇ」
     五条と呼ばれた男は正面のテレビから声の主のほうへと視線を移し、その艶姿を称賛する。
    「別に見せようと思ってこんな格好をしているわけ、では……」
     ふと、テーブルに目をやる。
     そこに置いてあったのは、さきほど帰宅途中に七海が購入した、行きつけのパン屋の紙袋。中身は、訪れた時間が遅かったものの奇跡的に一つ残っていた、彼の好物である――ゴマが散りばめられたバンズにパストラミビーフ、カマンベールチーズ、レタス、マヨネーズが挟まれた――パンだ。
     持ち手部分を上に向けてあったはずのそれは、今は横に倒れていた。つまり、中身は。

    「それ、食べたんですか」

     袋を指さし、七海は質問を投げかける。あまりの出来事に、声が自然と震えるのが分かった。

    (ほぼ睡眠時間はないに等しい五連勤明けに、買ったものを)

    「あ、これ? うん、ちょうど小腹すいてたからさ、もらっちゃった。代わりになにか作るからそれで許し、て」

     よ、と最後に付け加えようとした五条の口がひきつる。

    (この人は)

    「…………五条さん」

     ごく静かな口調で、七海は男の名を呼ぶ。

    「ハイ……」

     肩より下に視線を向けていた五条は、サングラスを額の位置までずらしながら恐る恐る角度を上げ、顔を窺う。そこにあったのは、とうに熱は去り、代わりに真冬のような冷たさを纏った碧色の瞳。それと自身の蒼い瞳とが交わる。

    (あー、これはまずい)

    「七海、ごめ」
    「別れましょう」

     五条が言い終えるより早く、七海がその言葉を遮った。

    「悪かったって! 今回はマジで反省するから! な!?」
    「その言葉は聞き飽きました」

     焦る五条とは逆に、どこまでも冷たい口調で七海は続けた。どうしてくれようかと逡巡し、そういえば、と玄関先に置いてきた愛用の得物を手に取り、整った五条の眼前へと突きつける。

    「いいですか、今から『十』数えます。終わるまでに出ていってください」
    「えっ、ちょっと七海……」

    「十、」

    (ヤバい、完全に目が据わってる)

    「九、」

    (なにか、なにか言い訳……! じゃなくて!)

    「八、七、」

    (常に新鮮な脳なんだろ僕、頑張ってくれよー……)

    「六、」

     今や五条の顔は、じっとりと汗ばんでいた。こんな気持ちになったのはいつ以来だろうか。

    「五、」

     七海が半歩前に踏み出す。それと同時に大鉈がいよいよ鼻に接触する。

    (今夜中に、ってのはもう無理そうだな、これは)

    「四、」

    「わかった、わかったからさ。それしまってよ」

     咎人は降参の意を両手で示しながらソファーから立ち上がり、玄関へと向かう。
     その背中に、手中の物は構えたまま、七海は言葉を続ける。

    「外に出られましたら私達のこれまでの関係は一切なかったことにします。いいですね」

     今に至るまで向けられたどんな視線よりも、心まで凍てつくような眼で雄弁に語られる。言葉だけならば質問に聞こえなくもない。だが「よろしくない」と言ったところで、にべもなく断られるのは火を見るより明らかだった。

    「うん、いいよ。自業自得だもんな。しかたないさ」

     五条はできるだけ緩慢な動作で靴を履き、名残惜しむように室内へ目をやる。

    「ありがとう、楽しかったよ」
    「まぁ、悪くはありませんでしたね。今後はお互い一人の同僚として、よろしくお願いします」
    「了解。それじゃあね。風邪、ひくなよ」
    「ご親切にどうも」

     最後まで軽口を叩き、手をひらひらと振りながら、五条は去っていった。
     自分に背を向ける彼の瞳が見えなくなりきるまでの一瞬、七海はそこに滴が浮かんでいるのを見逃さなかった。
     ドアがギィ、と閉まったことを確認した七海は、

    「……クソッ…………」

     そう、舌打ちしながら呟いた。直後、全身から力が抜け、その場に座り込んだまま、しばらく動くことはなかった。
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    takasato_mmas

    MAIKING五七もうひとつ。直すの面倒で、支部にUPする用の諸々が入ってますがお許し下さいまし😌 私がこの世界に戻った時、最初に購入したのがこのサングラスだ。[[rb:五条さん > あの人]]とは、違う、理由で。

    [newpage]

     いつもより少し遅く起き、今日はどうするかとベッドの中で考えを巡らせていた。カーテンの隙間から射し込む光の量を見るに、天気・温度のどちらもきっと悪くない。切れている食材も多かった気がする。昼食がてら買い出し、それから――と計画していたところに、充電したままにしてしまったスマートフォンが震え、シーツを揺らす。覚醒しきらない頭のまま画面を眺めれば、メッセージアプリからの通知ではなく、『着信』の文字が大きく表示されていて。

    「……」

     相手の名前を確認し、無視を決め込む。
     だがいつまで待っても振動はやまない。私が起きていると分かっての確信犯だろうか?
     寝そべったまま、画面内の緑色の部分に触れる。

    「もしも……」
    「やーーーっと出た! オマエ、待たせすぎ。僕だって、暇じゃないんだけどー?」
    「それはすみませんでした、ではお忙しい[[rb:方 > かた]]の邪魔にならないよう、このまま失礼します」
    「あ、ちょっ、嘘嘘! なな」
     起き抜けには刺激 2013

    takasato_mmas

    MAIKING続、五七。書きたいとこだけ書いてたら他のことなんも手につかないで困ってる。 そういえば、と七海が口を開く。
    「お礼というわけでもありませんが、夕飯の希望があればお応えしますよ」
    「マジ!? えっ、待ってそんな急に言われても……」
     右手を顎に、左手はズボンのポケットに入れたまま、真剣な表情をして悩む五条。その様子に七海は思わず微笑を浮かべる。
    「オマエ、なーに笑ってんだよ!」
    「いえ、あまりにも真面目な顔をしているものですから」
    「そりゃあ七海が? 僕の食べたいもの作ってくれるなんて? 明日は雪でも降るレベルの大事件だし?」
    「いったい私をなんだと思ってるんです」
    「恋人だけど?」
     口調、姿勢、表情のどれもそのままで、さらりとその言葉が出たのは、さすがといったところか。
     おそらく本人は無意識だろう。だが言われた七海は一瞬返答が遅れ、さらに小声で呟いた。
    「……そういうことではないでしょう」
    「ごめん、なんて?」
    「いえ、なにも。で、リクエストはそろそろ決まりましたか」
    「んー、じゃあ[[rb:鶏 > とり]]の唐揚げ! こないだテレビでやっててさー、すんごい旨そうだったんだよね」
    「ではそれで。味付けは私オリジナルになりますが」
    「いーよいーよ、七海のお 1197

    takasato_mmas

    MAIKINGとりあえず書きたいとこだけ書いたやつ。長編に組み込むかは悩み中。「五条さん」
    「なーに、七海」
    「私たちはもう大人です。昔のように接するのはやめましょう」
    「それは、えーっと」
    「無下限を解いて私に触れないでください、ということです。理由は──」
     七海がそれを伝えようとした瞬間、見計らったかのようにスマートフォンが震える。
    「はい、七海です。えぇ……分かりました。すぐ向かいます」
     左腕の腕時計を確認し、七海は眉根を寄せながら舌打ちをする。五条も室内の時計を見上げ『時間外労働』確定コースか、と内心で同情する。
    「すみません、続きはまた後日でお願いします。では」
    「あ、おい……ったく。なんなんだよ」

     七海がこちらの世界に戻り、この会話をしてから数ヶ月。さすがの五条も、焦(じ)れていた。

    「七海。なんで僕のことずっとさけてんの?」
     間もなく日が沈もうとしている高専内。二人きりの廊下で、五条は家路へと急ぐ七海を呼びとめる。
    「……なんのことですか」
    「しらばっくれんなよ。オマエ、戻ってすぐ僕に『無下限解いて触るな』って言ったろ。その理由、まだ聞いてないんだけど」
     彼にしては珍しく不安な声色に、わずかな怒気を含ませながら、夕日に照らされる男の後 950

    takasato_mmas

    MAIKING支部にUP予定の成人済みの喧嘩する五七。まだまだ続きます。のでお試し投稿を兼ねて。「アナタ、毎度毎度勝手に人の家にあがらないでいただけますか」



     秋が訪れて数日経過し、間もなく時計の針が二本とも真上へと向きそうな時分に、バスルームから出てきた七海。
     彼の顔はまだ赤く、首にはタオルを、腰にはバスタオルを巻いたまま、リビングにあるソファーに我が物顔で座っている黒服の人物を見下ろした。
    「おっ七海~、お疲れさん。今日も一段と、セクシーだねぇ」
     五条と呼ばれた男は正面のテレビから声の主のほうへと視線を移し、その艶姿を称賛する。
    「別に見せようと思ってこんな格好をしているわけ、では……」
     ふと、テーブルに目をやる。
     そこに置いてあったのは、さきほど帰宅途中に七海が購入した、行きつけのパン屋の紙袋。中身は、訪れた時間が遅かったものの奇跡的に一つ残っていた、彼の好物である――ゴマが散りばめられたバンズにパストラミビーフ、カマンベールチーズ、レタス、マヨネーズが挟まれた――パンだ。
     持ち手部分を上に向けてあったはずのそれは、今は横に倒れていた。つまり、中身は。

    「それ、食べたんですか」

     袋を指さし、七海は質問を投げかける。あまりの出来事に、声が自然と震えるのが 1796