Special night,everyday night アイボリーのシーツの中で、白い肌がほのぼのと、雲海の夜明けのようだった。手のひらを当てがいじっくり撫でていく。手塚の手から落ちる影が動くにつれて、不二の体で光が揺らめき、それは彼が唇に浮かべる笑みとよく似ていた。こんなところでも笑うのか。それはとても、――不二らしい。
感慨を抱いた胸が腕を意識する。伸ばし、指先を動かし、いっそう丁寧に、――自分は不二に、触れている。
「ん、……てづ、か」
不二は痩躯を震わせた。光はちらと煌めいて、手塚はそれがこぼれないよう口づけた。
「……ふ」
微笑とも吐息とも覚える音も、漏らさないよう口づけ飲み干す。仰向けに手塚が寝かせた体はそのままに、不二はかくりと枕の向こうに頭頂をあずけた。あらわになった顎にも触れて、手塚は自分の指のあとに、ひとつひとつ唇をつける。
「不二、……ふじ」
「ふふ。今日、長いね、……んぅ」
細い背が反り、胸もとが手塚に近づいた。機会を逃す油断はしない。キスを続けて落としていると、不二はけなげな必死さで呼吸をなだめつつ、どうしたの、と途切れ途切れに手塚に聞いた。
「いつも、より、……、ぁ」
痩躯を強く抱きしめて、手塚は大きく息をつく。ああ帰ってきたと感じつつ、「そうだな」と彼に応えた。
たしかに今日はいつもと違う。気に入らぬ会食もちらと記憶をかすめたが、不二と過ごしたあとでは些事で、これはなんら理由にならない。愛しさは日々深まって、止まることを知らなくて、そんな中の記念日で、お忍びをして、一番好きなものを見た――。
また新鮮な深愛に洗われ、手塚の日々は更新される。新たな高みにのぼるのに、不二の手を離すつもりはない。愛を増した時間はこれからも長くなる。
「だから今日から、これがいつもだ」
「ふふ、それじゃ、……ん、そのうち一日じゃ足りなくなるよ」
「そうだな」
何と言ったか、そういった愛し合い方もあるらしい。今度詳しく調べてみようと心に決めて、手塚は不二を抱いてシーツにもつれこむ。今日の日記は書き終えている。明日追記をするとしよう。
「え、書く、の、……っ、う」
「大切なことを書くのが日記だ」
むかしから、手塚は不二のことをよく書いている。今日はずいぶん長文になった。先に閨で待つ不二は、布団の中で横向きになり、半ばまどろむ体勢だった。それでも手塚が抱き上げて寝かせ直すとくすくす笑って、――ああ、今も、口づける先から彼の体は光って、手塚に微笑みかけている。花の色に染まった顔はなぜか、愛らしいうめき声とともに、腕で隠されてしまったが。
手塚は体を動かした。小さく可愛い陽が繰り返し昇り輝く寝台に、しんしんと夜が満ちる音が聞こえる。空から濃紺の幕が下り、そうだ、お忍びというものは、今日のように時には視線を感じつつ、けれども最後は帳の奥底、絶対誰にも見せないものだ。