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    kyosato_23

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    kyosato_23

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    ルージュってどんな人で何を思ってエースを産んだんだろうと色々考えているうちに書きたくなったネタです。
    書きかけだけど思ったより原作が核心に触れる話始まってるので先に出しておこうかと思い…

    バテリラには一年だけ新年の祝いの宴ができなかった年と、その後に新生児が生まれなかった期間があるかもしれない。

    ガープとルージュの話南の海は冬でも温かい。黎明の頃ともなればさすがにやや肌寒いが、分厚い外套が必要というほどでもない。


    島の中では新年を祝う宴の声が響いている。その熱狂に水を差さないよう、ガープはその喧騒から離れた裏道を一人急いだ。
    この島の住人にとって一年ぶりの新年の宴なだけあって、歓喜の声はそれはもう盛大だ。昨年は皆、今のガープのように息を潜めて過ごしていたのだ。
    誰もが解放的な気分に酔っているおかげで、ガープは誰にも見咎められずに目的地へ辿り着けた。


    島の外れの一際静かな場所にその産院は佇んでいた。まるでその一角だけ切り離されたかのように静かで厳かに見える。
    その空気の中でガープの軍靴の足音がやたらに大きく響いた。

    「……懐かしい音です」

    声を出していいものかガープが躊躇っていると、受付の奥から老婆がすうっと現れた。

    「……昨年の今頃、何回もその靴音を聞きましたわ」

    言葉と目線に鋭い棘がある。そうなるであろうことは予期した上で、ガープは軍服を身に纏ってここへ来た。

    どうせ妊婦本人から話は通っているだろう。私服で身分を隠したところでガープが海軍の軍人であるのはおそらくバレている。
    罪滅ぼしなどと殊勝な気持ちではない。だが産院を訪れるにあたって、こそこそ隠れるような小心な真似は不誠実ではないかと、ガープは思った。ガープが身を置く海軍がこの島の人々に行った仕打ちは事実だ。

    ガープは甘んじて老婆の棘を身に受けた。どうしても秘密裏に事を運ばねばならないあの理由さえなければ、老婆以外の島の住人から嫌悪の視線を向けられても構わないくらいだ。

    敵意を滲ませる老婆は、だがそれでもガープを奥へと案内した。
    通り過ぎる度に目の端に映る病室には他の患者は誰もいなかった。空のベッドだけが並んでいる。

    「妊婦も赤ちゃんも、誰もいないでしょう」

    先を歩く老婆の手元でランプの火が揺れた。

    「先々月も先月もこの島では一人も子供が産まれませんでした。そうでしょうとも。誰があんな状況で子供を作ろうと思うんです……」
    「……」
    「毎週です。毎週妊婦の状態や変化を記したカルテを見せろと軍人さんたちがやってくるんです。それ以外の日も毎日、誰かを匿っていないか銃を持ってずっと病院の周りをうろついて……気が狂いそうでした……!」

    ガープは無言で瞑目した。謝罪の言葉など口にしたところで薄っぺらいだろう。ガープも海軍の一員としてその行為を容認していたのだから。

    そんな最中に、久方ぶりの赤子が産まれようとしている。
    ガープは先立って交わした、押し付けられたとも言えるが……約束に従い、その子供と母親の元へ馳せ参じた。
    母親がどんな女かは知らない。完全なる初対面である。かろうじて名前だけは知っている。

    ガープが約束を交わしたのは母親でなく、父親であるゴールド・ロジャーであった。もう既にこの世にはいない。
    破天荒なロクデナシだった。
    南の島は温かくてまるまると肥えた鮫が多いのだと、子を孕む彼女に大量に鮫を仕留めて帰った日の話をそれはもう平然と、自分が牢屋に繋がれている状況などお構いなしに聞かせてくれた。
    お前の子を宿した女を巡って海軍は血眼になっているというのに。

    そんなロジャーが見初めて愛した女だ。一筋縄ではいかない女なのだろう。現に産気づいたからとこうしてガープを呼びつけるくらいである。
    果たしてこの老婆や医者に何と話を誤魔化しているのやら。

    最奥の病室に彼女はいた。
    部屋は暗く、掲げられたランプの灯りですら眩しいのか、女は顔を照らす光を遮るように手を翳した。

    「……ポートガス・D・ルージュだな?」

    尋ねると女は静かに頷いた。
    やがて光に目が慣れたのか手がそっと下ろされると顔の全容が露わになる。
    思っていたよりもずっと若く、可憐な女だった。甘みのある金髪にそばかすの残る顔が愛らしさを添えている。女傑を想像していたガープは正直面食らった。

    こんな可憐な女が、自分も子も殺されるかもしれないとわかっていながらロジャーの子を孕んだのか。島中に広がる緊迫感の中、たった一人でゆうに二十ヶ月もその腹に胎児を隠し続けたのか。
    ロジャーの処刑された日以降、常識で考えられる妊娠の期間がとうに過ぎて海軍が監視を取りやめるこの日まで、ずっと。

    「……すまんが、少しだけ二人きりで話をさせてくれんか」
    「……」

    老婆は険しい顔で困惑した。
    妊婦と軍人を二人きりにするのに抵抗があるのだろう。

    「……おばさん、私からもお願い、そうさせて」
    「ルージュ、だけど……」
    「お願い、それに少し陣痛が戻ってきたみたい」
    「……先生を呼んでくるわね」






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