関わり合いにはなりたくないが すげえイケメンが来たもんだ、と、転校生に対して嫉妬と敵意を抱いていた時期がある。それらの感情はひと月もすればすっかり消えて、ただ、関わりたくねえなという思いだけが残った。
転校生こと神代は、隣のクラスの天馬に比べれば静かで目立たなかった。今となっては過去形だ。しかし、まだ比較的大人しかった頃ですら、関わり合いにはなりたくない人種だった。授業中に板書も取らずにニヤつきながら思考に没頭し始める様は、控えめに言ってもやべえ奴でしかない。その上、小難しい思考を独り言でアウトプットしているせいで、こっちが感じるヤバさは嵩増しされていた。
あいつは他人の目なんか気にしちゃいない。どうでもいいんだろうな、俺たちのことなんざ。お高くとまってるとかってのじゃなく、単純に眼中にないんだろう。あいつを見ていると、宇宙人ってのはこういう奴なんだろうか、なんて馬鹿なことが思い浮かぶ。別の星に住んでる俺らとは基本的に言葉が通じねえ。知性はあるし、用があればコミュニケーションだって取り合おうとするもんだから、微妙に何か伝わった気がする瞬間もある。でも、根本的にまったく違う生き物だから、わかり合うのは難しすぎる。
その宇宙人・神代は、年度が始まってそうも経たないうちから、一年の頃からやべえと噂だった天馬と連むようになった。あいつもあいつで俺からすれば訳がわからん。話してみればいいやつらしいが、そんなに接したこともない俺から見れば、人間とまだコミュニケーションが取れるタイプの宇宙人って感じだ。テンマ星の外交官とかなんだろう。たぶん。
天馬と関わりだした神代は、被ってた猫が外れちまったんだか、それとも宇宙人仲間と出会えて嬉しかったんだかわからないが、いよいよやべえ奴になってしまった。授業そっちのけの振る舞いが頻度を増したし、校内で爆発騒ぎだのなんだのを起こすようになった。何考えてるんだかさっぱりわからん表情と、トーンの変わらねえ落ち着いた声も、そういう騒ぎのときは見る影もなくなる。
ある日、どっかのマッドサイエンティストかよって笑顔で、天馬の高笑いにも負けない笑い声を上げながら校舎を駆け抜ける神代を見た俺は、こう思った。
神代の故郷はテンマ星だったに違いない。
二人揃ってやべえ奴だ。関わり合いにはなりたくない。だがまあ、巻き込まれないようにしてる限りは、楽しそうでいいんじゃねーのと思うこともある。
宇宙人って言ったって、なんの間違いか地球で一緒に高校生をやっているんだ。宇宙人らしくブッ飛びすぎたやり方で、青春ってやつを送ってるのかもしれないしな。