小悪魔 放課後、校門のところでニーナに呼ばれた。
「あっ、ニーナ、どうしたの?」
「待ち伏せ―。なあ、一緒に帰ろ?」
ニーナから一緒に帰ろうと誘われた。わたしの答えは勿論、
「一緒に帰ってあ・げ・る」
すると、ニーナは頬を赤く染めて、
「……それ、何かイイかも」
「なに?」
「いいえ? なんでも? ほら、帰ろ!」
と、喜んでくれる。彼のそんな表情を見るのが好きだ。そんなわたしの言動は周りからは小悪魔なんて呼ばれるけど、わたしから目を離して欲しくない、わたしだけを見ていて欲しいからこうして彼を振り回すのだ。
でも、そんな小悪魔でも一つ思い通りに行かないことがある。それは彼が一向に告白してこないことだ。彼がわたしを好きなことは間違いない(みよの情報より)。しかし、デートでいくら距離を縮めても、彼から「好き」だと言われたことは一度もない。
「バンビから告白するってのは?」
「ううん、絶対ニーナからがいい」
みよやカレンから早くニーナと両想いになりたいなら、バンビから告白した方がいいのではと言われたこともある。ニーナはああ見えて奥手なんだからと。でも、わたしはニーナに絶対好きって言わせたい。どうしてもそれは譲れなかった。
ニーナからデートに誘われたある日、服をいつもの小悪魔ファッションから一転してガーリーなものに変えた。小悪魔の方が彼好みであるが、たまには変化球も必要だと思って。ニーナからも「カッワイイ♡」と好評で手ごたえを感じた。デート中もスキンシップは欠かさない。すると、その日の帰りにニーナにお仕置き、今までの仕返しと称して手をギューっされて痛かった。
「もう一回」
「えっ!?」
ニーナは自分がされてきたことを考えたら一回じゃ足りないと言う。
「……痛くしない?」
と、聞くと、ニーナはどーすっかなー? と言いつつも、「……ウソ、優しくする」と言った。
「じゃあ……」
もう一度ニーナに手を差し出した。すると、ニーナは――。
「……ニーナ?」
「……続きはアンタのいろんなモンがオレのになったら。それまではおあずけ。何が起こるのか、楽しみにしてて」
好きって言わないのに、どうしてこんなことするの? そんなのズルいよ。でも、わたしはそんなあなたが――。
「……好き」
気が付くと口に出していた。結局わたしの方が先に口に出してしまっている。
「えっ? 何か言った?」
「ううん、何も! 今のはノーカウントで!」
小悪魔なわたしを振り回す彼も大概な気がする。だからこそ、わたしはそんな彼を振り向かせる小悪魔であり続けようと思うのだった。