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    しらい

    治角名しか勝たん。

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    しらい

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    高三の進路についての治角名は想像してきたけど、侑はしてこなかったから妄想してみた。

    寂しさのあと※侑は高卒でプロって方向で、他の三人とは違い進学ではないから一人クラスが分かれる。治は早々にバレーは高校までだと言っていたし、銀も本気でやるのは高校までだと言っていたが角名だけは未定。

    ーーーーー

     去年の春高でターン打ちを攻略されたが、あの時より精度を上げている今、ここで終わるのはもったいないと思っていた侑はそれとなく角名にバレーを続けるかどうか訊いてみるも「まだわかんないんだよねー」と煮え切らない。それでも進学コースに行ったから、(あ、こいつも高校でバレー辞める気なんかな)って思っちゃう。だって治も銀も辞めて進学するから。
     それに対して、(別にあいつらの人生やし、俺がどうこう言うことやないわ)って思うけど少しだけ寂しい。北さんたちが卒業して寂しいのもあるし、キャプテンになったのもあってより部活で寂しさを紛らわそうとする侑。

     そうして春高直前、急に角名に呼び出される。教室じゃダメなのかと言えばダメだと言うので仕方なく人気のない渡り廊下へ。授業はほとんど自習になっているからサボってもどうとでもなる。

    「俺さ、大学の推薦受かったんだ」
    「おお、そうなん?おめでとお。なんや推薦やったんか」
    「うん。スポーツ推薦」

     けろっと返す角名に虚をつかれる侑。そんな侑を見て角名はいつものように人を食ったような顔で笑う。

    「俺はさ、侑に比べたらそこまで真剣にバレーと向き合ってこなかったんだよね。できるからやってたって感じでさ。だから高校で終わりでもいいかなって思ってたんだけど…なんかそれは侑に負けた気がしてムカついたんだよね」
    「…はあ?」
    「だってお前、俺のこと『飛ばしてた』でしょ?」

     侑はその勝気な性格とは裏腹に、誰よりもスパイカーに対して真摯で献身的だった。自分は体勢を崩しながらもスパイカーが気持ちよく打てるようにトスを上げ続け、それは速攻でもバックアタックでもいつでも変わらない。侑は「支える」スタンスでいて、それを有難いと思うと同時にひどくイラついた。侑にではなく、そうさせている自分に。
     スパイカーが打ちやすい位置にトスを上げるのは侑の技術の高さとスパイカーへの信頼、そしてそこに少なからずの「俺が打たせてやっている」という自負。たしかに侑は難しいボールも綺麗に上げてくれるが、いつまでも「上げてもらっている」のは悔しいと思うようになったのだ。

    「今度は、俺が『上げさせて』やるから」

     治のようになろうとは思ってはいないが、それに近いところまでいってやろうと思った。なんだかんだで寂しがりな侑は、きっと俺たちみんなバレーは高校までだと思っていただろうから。
     前からバレー馬鹿だったけど、三年になってからはより顕著に表れていた。それは優勝候補と言われていた春高でまさかの初戦負けを喫したこともあるし、最終学年になって部の主将を任された重責もあるのだろう。意外にも本人が口にしたことはなかったが、それなりの付き合いをしてきた角名にはわかっていた。おそらく、治や銀も同じだろうが。

    「…なんで、こんな直前に言うねん」
    「侑にも悔しい思い、してほしかったんだよね」

     春高が終われば自分たち三年は引退し、それぞれの進路へ進んでいく。侑はプロ一年目、角名は大学一年生で試合にしても同じコートですることはまずありえない。だからこそ、絶好の機会だと思った。

    「侑が俺にトスを『上げたい』と思っても、同じ土俵にいない限りすぐには叶わないでしょ?」

     侑のトスを受けた期間は二年と少し。それに比べたら同じ土俵に行くまでに倍以上はかかるし、同じチームにならない限りトスを上げることなんて無理な話だが。それでも俺は今までそれくらい悔しい思いをしてきたんだから、侑にも同じくらいの思いを抱えてほしかったというのは、完全に我儘だけれど。

    「侑はたしかにお調子者でムカつくことも多いけど、これでも尊敬してる部分も少なからずあるんだよ。…お前を追いかけるってわけじゃないけど、いち選手として認めさせてやりたいなとは思ってる。敵同士になっても俺にトスを上げたくなって、でもそれもできなくて悔しいって地団駄踏む侑が見たいなー、ってね」
    「…はっ。なんやそれ、性格悪すぎやろ」
    「お前には言われたくねぇし」

     だから、それまで精々プロの下っ端頑張んなよ。楽しみがあった方がモチベーションも上がるしさと言えば「余計なお世話じゃ」と切って捨てられるが、表情はわかりやすく緩んでいる。侑のメンタルを気遣うだけなら別の方法もあっただろうが、これは自分への発破にもなっているのだ。
     できるからなんとなく続けてきバレーが思いのほか楽しくて、仲間にもチームにも恵まれて、見返してやりたいやつもできて。同じスタートラインに立っていないのが少しだけ悔しくもあり、目標でもあるから。ここまできたら、いけるとこまでいってやろうと決めた。その延長線上に侑の悔しがる光景があるのなら、それを見ない手はない。

    「ほんなら、絶対追いついて来いや。ボサっとしとったら俺はどんどん先に行くで」
    「望むところだっつーの」

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    しらい

    MOURNING軍パロ「Chain」の最後、ボツになった微エロ?を置いときます。
    設定としては治角名二人とも軍人で、角名はトラウマで首を触られるのがダメ。治としては角名を泣かせたいと思ってる。
    その先の未来−another− それでも許してくれたのは、俺に気を許してくれているから。そう思うと気分がいい。

    「なんかされたら嫌なことあるか?」
    「……首、触られるこ」
    「それは却下や」
    「チッ」

     聞く気ねぇじゃんと角名が零し、それ以外でと俺が指定する。不機嫌になりながらも暫し考え、思いついたのか角名はゆっくりと口を開く。

    「……じゃあ、手」
    「手?」
    「治の手、掴んでていい?」

     伏し目がちにそう言われ、思わぬ要求に可愛いと思ってしまった。「ええよ、そんくらい」と承諾すると、掌ではなくがっちりと手首を掴まれる。

    「……なあ角名。手ぇ、握るんやないん?」
    「んなこと言ってねぇだろ。……まだ、殺されない保険かけとかないと、怖い、から」

     ごめんと小さく零す角名の額に触れるだけのキスを送れば、パッと目線を上げるので綺麗な瞳がよく見える。不安そうな顔は俺がさせているのに、そんな表情もええなと思っている俺はやっぱり人でなしかもしれない。俺に嫌われるのが怖いと思ってくれているのだろう、なんて初心で可愛いのか。きっと今俺は、とても締まりのない顔をしているのだろう。好きなやつに特別に想ってもらえるのが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。
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