その先の未来−another− それでも許してくれたのは、俺に気を許してくれているから。そう思うと気分がいい。
「なんかされたら嫌なことあるか?」
「……首、触られるこ」
「それは却下や」
「チッ」
聞く気ねぇじゃんと角名が零し、それ以外でと俺が指定する。不機嫌になりながらも暫し考え、思いついたのか角名はゆっくりと口を開く。
「……じゃあ、手」
「手?」
「治の手、掴んでていい?」
伏し目がちにそう言われ、思わぬ要求に可愛いと思ってしまった。「ええよ、そんくらい」と承諾すると、掌ではなくがっちりと手首を掴まれる。
「……なあ角名。手ぇ、握るんやないん?」
「んなこと言ってねぇだろ。……まだ、殺されない保険かけとかないと、怖い、から」
ごめんと小さく零す角名の額に触れるだけのキスを送れば、パッと目線を上げるので綺麗な瞳がよく見える。不安そうな顔は俺がさせているのに、そんな表情もええなと思っている俺はやっぱり人でなしかもしれない。俺に嫌われるのが怖いと思ってくれているのだろう、なんて初心で可愛いのか。きっと今俺は、とても締まりのない顔をしているのだろう。好きなやつに特別に想ってもらえるのが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。
5102