【最終話】こちら月より、愛を込めて No.15「千空ちゃん。もう時間だよ。行かなくちゃ」
二人で一夜を共にしたバラックを後にした。
ロケットの発射台まで、五指の指をしっかりと絡めるように繋いで歩く。
打ち上げ前に二人だけで過ごす最後の時間だ。
突き抜けるような雲ひとつない青空に、ときおり吹くそよ風が頬を撫でて心地よかった。
本日は晴天なり。絶好の打ち上げ日和だ。
俺と千空ちゃんは発射台に向かって、ただ無言で歩いた。
もう言葉はいらなかった。
言葉なんて無くても、俺たちはもう大丈夫。
目には見えなくても根っこの部分で深く強く繋がってる、そんな気がした。
歩きながら、時折千空ちゃんの顔を覗きみる。
朝日に照らされてまっすぐ前を見つめて歩く千空ちゃんの横顔は凛々しくて、たくましくてかっこいい。
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