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    いちとせ

    @ichitose_dangan

    @ichitose_dangan ししさめを書きます。

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    いちとせ

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    ししさめ 手術見学について🦁と😈が喋りながら☔先生の外堀が埋まっていく話

    #ししさめ
    lionTurtledove

     投げかけられた問いは突然だった。
    「敬一くんはさあ、手術見学行かないの?」
     いつものメンバーで遊びの約束をして、珍しく叶が一番乗りだったその日、空は雲一つない快晴だった。燦燦と降り注ぐ陽光を浴びながら、叶は椅子の背もたれに身を持たせかけながらオレに問いかける。
    「一回行ったけど、それきりだな」
    「なんで? おもしろいのに」
     叶はこてん、と首をかしげる。心底不思議そうに。
    「中身ったってただの肉の塊だろ。村雨みてえにそこから心の動きは読み取れねえ。オレが未熟なだけかと思ったけど、どうも違いそうだ」
     見学に行ったあの日の「患者」は40代男性の債務者で、村雨はそいつの開腹を行いながら嬉々として臓物の所見を述べていた。手術の前には「患者」からの人生談を、手術が始まってからは村雨の解説を真面目に聞き、目をかっぴらいて内臓を見た。けれど、
    「なんもわかんないだろ? よくわかってんじゃん」
     叶が笑った。
    「ああ? じゃあお前はなんで何回も見に行ってんだよ」
    「そんなの決まってる。中身見てる礼二くんを見にいってるの!」
     ぞわりと背筋が粟立ち、頭の中で警鐘が鳴り響く。真意を読み取ろうにもさっきからこいつは、その材料すら寄越していない。彼我の力量の差に歯噛みした。言葉を返せないオレに叶はなおも話しかける。
    「そんな睨むなって。別に敬一くんの獲物を横から搔っ攫おうなんてしないし、オレどっちかというと応援側だし。安心してくれよ!」
    「……次からお前が見学行くときは連絡入れろ。邪魔はしねえ。弁当作ってやる」
     オレがそう言うと、叶は椅子から飛び降りて腕を振り回し歓声を上げた。
    「やりい!! とーぜんオレのリクエスト聞いてくれるよな?」
    「まあ、ある程度なら」
    「よっしゃ! 今の聞いてたよな、晨くん!」
     扉の外で息を潜めてじっとしていたらしい真経津が部屋にぱたぱたと駆け込んできて叶を羨ましそうに見やる。
    「え~叶さんずるーい。ボクも見学行ったらお弁当食べられる?」
    「どうなんだ、敬一くん。そこんとこ」
    「事前に連絡入れるなら作ってやる。ってか、もしかしてこれが狙いか?」
     真経津が入ってくるタイミングまでは計算していなかったとしても、最初の質問から今の流れまで。
    「さあ、どうだろうな~ま、それはそれとして敬一くん、自覚してんなら早く言っちゃったほうがいいぞ! 礼二くんそういう分野不得意そうだから、絶対変なことする!」
    「話逸らすなよ。まあ、確かにそろそろ言ってもいいかもな。外堀は勝手に埋まってるみたいだし?」
     叶と真経津に目をやるとふたりでハイタッチしながらくふくふと笑っている。本人たちはキューピッドのつもりかしらないが本当に悪魔のようだった。
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    takamura_lmw

    DONE桜流しのさめしし、もしくはししさめ。ハッピーエンドです。ほんとなんです。メリバでもないキラッキラのハピエンなんです。信じてください。

    これがずっと出力できなくてここ一ヶ月他のものをなんも書けてませんでした。桜が散る前に完成して良かったと思うことにします。次はお原稿と、にょたゆりでなれそめを書きたいです。
    桜流し 獅子神敬一が死んだ。
     四月の二日、桜が散り出す頃のことだった。



     村雨にその死を伝えたのは真経津だった。
    「——は?」
    「死んじゃったんだって。試合には勝ったのに。獅子神さんらしいよね」
     真経津は薄く微笑んで言った。「獅子神さん、死んじゃった」と告げたその時も、彼は同じ顔をしていた。
    「……いつだ」
    「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
     村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
    「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
    「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
    「そうか」
    「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」
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