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    お姉さん

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    お姉さん

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    おねむの村雨さんが、真経津さんに心を開いていることを自覚して、セックスの真似事をします。

    まふ(リバ寄り受)× さめ(受)
    →れめ・しし(攻)× まふ・さめ(受)

    にいつか発展していく流れです。

    #まふさめ
    fringe
    #r-18

    まどろみながら 気怠い午後だった。室温25℃・湿度50%、手術室と同様の設定にした空調は正常に働いている。マヨネーズの油のにおいがゴミ箱に捨てた今も漂っているのを村雨の鋭敏な鼻が感じ取った。真経津の持ち寄ったハムサンドは安っぽさに反して美味だった。また買ってきたのなら食べてもいいと思った。最近味覚が低俗なものに慣れていくのを自覚している。
     
     テーブル越しに医療器具をいじっている真経津を見ると、自分の服をめくり腹にペタペタ当てている。使い方を知らない道具は幼児にとってはおもちゃになるようだ。咎める気力も起きない。ここに叶がいたなら真経津と一緒に無遠慮に騒いだだろうし、獅子神がいたなら興味をもって器具の用途を村雨に尋ねたかもしれない。

     今日は二人が来なかった。理由は知らない。・・・言っていたか?いや、「用事があるんだって」と聞いた。瞼の筋肉が下がっていく。瘦せ型の体を包む自分の白いシャツが目に入る。こんな安穏とした気怠い感覚の日が前にもあった。いつだった?白いシャツ。そう、高校の夏季休業中に設けられた講習で登校した日だった。夏休みで普段より緩んだ雰囲気の中、教師が来るのを待つ教室。夏休み中に登校したくないだの文句を言いながら、進学校に通うレールから外れる気のない生徒達はおおかた登校した。久しぶりに会うリーダー格のクラスメイトと会えて嬉しいフリをする生徒。発汗、心拍数、まばたきの回数。本当は嫌いなくせに。早く帰りたかった。昨日○○がいる場所を見つけたから。早く手術したい。今は真似事でも、いつか金を手に入れられれば・・・。

     そういえば担任の教師は何という名前だった。サイカワ?サミカワ?覚えていない。どうせもう会うこともない。ルーティンをこなすだけの面白みもない奴だった。しかしあの生物の女教師は少し違った。解剖。蛙の解剖。高校じゃなくて小学校だったか?同じ班の生徒が気味悪がって手を出さないなか笑いながらかっさばいていくものだから、気味悪さを感じる対象が蛙から自分に変わったのだった。椅子を引いて距離をとられた頃、あの女教師が近づいてきて訊いてきたんだ。「いきものが好きなの?」と。「医者になりたいんです」。そう答えた。理由が明確になったことで、班の単純な奴らの態度が変わった。「お医者さんになりたいんだって」「すごい」「頭いいからなれるよ」「向いてるよ」。肯定的な言葉をかけてきた。女教師の狙い通りだ。そもそも医者志望ということは以前女教師と話したことがあったからそのように答えると分かっていたのだろう。人を操るのが上手いと子どもながらに思ったものだ。有象無象の平凡な者とは違う者もいると。

     あの三人のことは気に入っている。叶は観察も推察も得意で、話がずいぶんとテンポ早く進んで小気味よいので気に入っている。獅子神はこちらが好き勝手やったり言ったりしても、腐らず受け止めていなしてくれるので付き合いがいがあって気に入っている。

     ・・・もしかして今私は「気に入っている」と考えたか?間違いだ。言葉のチョイスを間違えた。別に気に入ってなどいない。他より格段にマシ、それだけだ。どうせ短い付き合いになる。彼らもいつかは引き際を誤り、悲惨な最期を迎えるに違いない。何かを置くような金属音がした。なんだ?真経津か?真経津。真経津は何だろう。よくわからない。きっと彼が去った後もよくわからない風のような奴だったなと思うのだろう。真経津の匂いがする。自分の周囲の空気が生ぬるくなったのを感じる。
    私はーーーーーーーーーーーーーーーー


     「寝ちゃった?」


     瞼を開けると正面から顔を覗き込む真経津の姿が現れた。
    「寝ていないが、眠い。」
    入眠に向けて体が放熱を始めている気がする。手足が熱い。真経津の眼。顎。胸。腹。脚。
    「目閉じちゃってるよ。ベッドで寝ようよ。寝室どこ?」
    再び目を開けると真経津が村雨の両手を取り椅子から立ち上がらせた。寝室の方向を伝えると、真経津は村雨の両手を握ったまま後ろ向きに歩きながら誘導した。「あんよが上手」「おじいちゃん病室はこっちですよ~」の煽り文句に反応したいが、もはや体は弛緩し引っ張られるがままで余計な動きができない。

    「普通のベッドだ。手術台で寝てるのかと思った。」
    室内をきょろきょろ確認する真経津を放っておき、ベッドに腰かけてそのまま倒れ込んだ。ファブリックに沈む頭と共に意識が現実世界から遠ざかっていく。
    「眼鏡、外さないと顔痛いよ。」
    そうだ、眼鏡。かけたまま寝ると眼鏡の重みで目頭が痛くなる。しかし腕が上がらない。取ってくれないだろうか。あなた、いつも察しがいいだろう。
    「外すね。」
    期待通り目頭から重みが消えた。思い通りになって気持ちがいい。真経津が眼鏡チェーンを軽く引っ張っているが、首の下敷きになっているため取れないでいる。

    「頭上げるよ。」
    頭部を抱きかかえられて真経津の胸の温もりが顔に伝わる。カチャ、と眼鏡がベッドサイドチェストに置かれた音が聞こえる。ふと、玄関に乱雑に脱ぎ捨てられた靴を思い出す。レンズを下にして置いていないだろうな。眼鏡をかけていない奴はレンズが傷つくことを知らない。確認したいが瞼も口もなにかの緩やかな力が働いて閉じられている。シャツのボタンが引っ張られた。寝巻きに着替えさせるつもりか。ボタンが穴から繰り出されて外れる。また一つ外れた。寝巻きの場所なんて知らないだろう、あなたは。シャツが左右に開かれ、顕わになった肌が外気に触れて冷える。気のせいだろうか・・・あまり向けられない欲望を孕んだ人体の動きを感じる。いや、夢と現実が混濁しているのか。もう私は眠っているらしい。どうしようもない夢だ。最近特定の人間と付き合いすぎたせいで、夢にまで彼らが出てくるようだ。
     
     唇が、愛でるように腹につけられた。

    「何をしている。」
    真経津が上目で目線を合わせながら自分の薄い腹の上で笑っている。両手が臀部の側面を掴んでいて生温かい。
    「あなたは同性愛者だったのか。」
    「気に入った人ならボクどっちでもいいんだ。」
    あっけらかんと言い放ちながら、真経津は腹に頬ずりをした。
    「ズボンは脱がせないから安心してよ。」
    何も安心などできない。できないが・・・。思案したものの、とにかく村雨は眠かったので、眠ることにした。真経津なら野蛮なことをしないだろうと思う程度の信頼ならあった。

     臀部をぎゅっとわし掴まれて、掌から指先へ波打たせるように揉まれる。真経津の舌先が腹の皮膚をなぞるのを、つい感覚で追ってしまう。体温を乗せた湿った吐息があたって熱い。熱いのは真経津が生きているからだ。人が生命をもっていることを感じることが好きだ。特に直接腹に手を入れ、臓物の熱さを指先で感じるのが好きだった。血も体温も肉も骨も大好きだ。人体は私にとってテーマパークそのものだ。テーマパークで謎解きして遊んで何が悪い。・・・そうか、あなたも私を暴いて遊んでいるのか。同じだな、私と。

    「ズボンを脱がせてもいいぞ。」
    眼を閉じたまま微笑む顔を見た真経津は首を傾げた。
    「今の寝言?」
    「まだ寝ていない。機を逃していいのか?私に欲情しているんだろう。またとない好機だ。」
    「そうなんだけど、どういう心境の変化なのかな。」
    戸惑いながらもベルトを緩め始めているあたり、チャンスを逃さぬギャンブラーそのものだ。それでいい。する、と布が脚をすべっていき床に捨てられた。胸に続き下半身まで服を奪われ、肌が冷えて覚醒してきた。薄目を開けて足元の真経津を見ると、口を大きく開けて内太ももに噛みつくところだった。柔らかい唇と唾液で皮膚を包んで歯を立て、肉の弾力を楽しんでいる。咀嚼の真似事のようだ。セックスとは咀嚼の真似事なのか。そういえば心理学の講義で、セックスで口を使うのは口唇期が関係していると話していた教授がいた。フロイトか。真経津の口内の熱が冷えた太ももに移ってやたら熱い。

    「村雨さんってエッチしたことある?」
    「ない。」
    どうせ取り繕っても見抜かれるだろうと簡潔に伝える。
    「そっか。なんで?」
    無礼な奴だ。いや、真経津が無礼じゃなかったことなんてなかった。
    「糞袋とは寝るに値しない。」
    「ふーん。ボクとはいいんだ。」
    にんまり笑うので腹が立って脚を蹴ると「痛い」と大げさに言った。
    「ボクはねー、昔結構ハマってた。女の人ともしたけど、男の人に入れられるのが一番気持ちよかった。」
    過去の経験を話しながら手慰みのように村雨の陰茎を下着越しに擦るものだから、つい声のついた息を吐きだしてしまう。
    「そう、か・・・ふ、う・・・不特定多数と性交したということだな。あ、あ、泌尿器科か性病専門、のクリニックにでも行って性病、検査でもしてこい。検査結果が出ない・・・限りは、く、粘膜接触は、許さん。」
    やっとのことで言い切った村雨に真経津が嬉しそうに目を輝かせる。
    「わー・・・すっごく意外!三人の中で一番、砦を崩すのが難しいの村雨さんだと思ってた。」
    「さん、にん?」
    快感の中で意図して聞かせたであろう言葉に疑問を呈すと、真経津はいたずらを画策する児童のように目を細めた。

    「村雨さん、ボクたちのこと、好き?」
    「そこはボクのこと、じゃないのか。」
    「遊ぶなら四人で遊びたいじゃない。」
    本気で思っていることが肌感覚で伝わる。逡巡ののち、村雨は狂人への対処方法をまともに考えることをあきらめた。
    「三人分の診断結果の書類を持ってこい。」
    「やった!」
    本当に性的行為の最中なのをわかっているのか、大きくこぶしを天に突き上げる様子を見て、そんなに嬉しいことなのかと村雨は考えた。とんでもないことに同意してしまったと平素なら思うだろうが、あの二人ならそうなってもいい気がしたし、真経津の目論見通りいかなくてもそれなりの関係を築けていけるとも思った。
    「村雨さん、どっちがいい?」
    バニラ味がいいかイチゴ味がいいか訊くようなトーンだが、何を指すかはもうわかっている。
    「正直あの二人の肛門に突っ込む気は起きないが・・・。」
    「じゃあボクと一緒にネコしよ~。」
    積極的に尻を貸す気にもなれない上、肛門性交の複数のリスクが脳内をよぎったが、もう村雨はなんだかどうでもよくなってきていた。それもこれも触れている真経津の手のひらが温かいせいだった。

    「じゃあ練習~。」
    自分のズボンを下げ適当に床に放った真経津が、村雨の両の太ももを抱えて互いの股間を擦り合わせた。下着と下着越しに触れ合う熱さが村雨を駆り立て、鋭敏になりすぎた感覚を逃がすように眼を閉じ顔をしかめた。真経津が正常位で律動するように腰を押し当てるものだから、疑似的なセックスを体験しているようなものだった。
    「ん・・・ぐ、あ、ううっ、あ、あ、あ、あ」
    真経津が腰を押し付ける度に、抑えきれない喘ぎが漏れてしまう。自分がセックスの時にこんなにうるさくなるとは思ってもみなかった。熱さで顔が赤くなっている自覚がある。情けない顔を見せないために、喘ぎ声を抑えるために、腕で顔を覆ったが、真経津が手首を取り顔の横によけてしまう。
    「いっ、ふっ、ん、ああ、やめ、つらい、つらい・・・!」
    「はぁっ、はっ、つらく、ないよ、気持ち、いいでしょ?」

     村雨にとってやっかいだったのは、真経津が性的興奮を村雨に感じていることが、真経津の体の動きや心拍数で直接感じ取れてしまうことだった。無様に真っ赤になっている自分の歪んだ顔を正面から見つめる真経津の瞳孔が、興奮から拡大している。真経津が腰を揺さぶることでで村雨がびくびく反応するのをじっと見る様は、鼠を転がして遊ぶ猫の残酷さを想起させた。経験の豊富な相手に遊ばれていることが悔しく、同時に被虐的な快感が生じていることを否定できなかった。
    「あ、むり、は、は・・・はぁ・・・!」
    揺さぶりを止めてほしくて真経津の腹のシャツを両の手でぎゅっと握ると、真経津が目を細めた。
    「あー・・・可愛い、は、ねえっ、ボクがハジメテで、いいでしょ?最初にっ、村雨さんのナカに、這入る、の、ボクで、いいよね?」
    要求を通せといわんばかりに揺さぶる回数を増やされ、村雨は耐え切れず背を弓なりに反らした。
    「・・・イキ、たいっ、イキた、い・・・」
    「ねっ、いい、よね?はあっ、それとも、さあ、あの二人の、どっちかが、よかった?」
    「いいっ!あなたで、いいから・・・!」
    「やった!予約ね。」

     最初の相手を了承させられた村雨は、口の端から唾液が流れているのを分かっていながら拭けもせず、懇願の眼差しを真経津に向けた。真経津はひとつ頷いて、手を村雨の陰茎に伸ばす。下着越しに、形を変えている輪郭を掴み擦り上げた。
    「-----------------っ!!!」
    痙攣しながら深く絶頂する村雨を余すことなく見終わってから、真経津は自分の下着の中に手を入れた。


    「はーっ、気持ちよかった!ねえ、村雨さん・・・あれれ。」
    ベッドに体を横たえた真経津が横から顔を覗いてくるが、村雨は弛緩した体に当初の眠気が戻ってきてぼんやりしてきた。眠い。のに濡れた下着が張り付いて気持ち悪い。
    「拭いてくれ・・・。」
    もはや小声でしか話せないが、近くにいる真経津には聞こえたらしい。ティッシュを乱雑に数枚取ると、村雨の下着を脱がせて股間を拭き始めた。下の始末を受けている赤ん坊のようだな、とも思ったが、今更真経津相手に羞恥心は湧かない。セックスとは、恥の感覚を薄れさせるものなんだな、とうつらうつら考える。こんな関係になるとは思っていなかった。しかし、こうなる下地があったような不思議な感覚もある。

    「ゴミ箱どこ」と訊かれたため、村雨は部屋の隅を指さした。真経津がゴミ箱目掛けて放ったティッシュが、ひとつ、ふたつと床に落ちた。入ってない。ひとつも入ってない。拾いに行かせたいが睡魔の波が村雨の意識を浚っていく。
    「村雨さん、パンツ貸してー。・・・寝ちゃった?」
    そうだ。眠い。体がベッドに吸い込まれそうだ。
    「叶さんと、獅子神さんと、遊ぶの楽しみだね。」
    そう、四人で遊ぶのも悪くない。村雨は微笑んだ。



    真経津「お待たせー!」
    獅子神「テメーいつになったら5W1H覚えるんだよ。待ち合わせ場所と時間だけ連絡すンな!」
    叶「今日礼二君いないの?」

    真経津「今日遊ぶのはココ!」
    獅子神「男性専門クリニック・・・?」
    叶「EDとか診るところか?」

    真経津「今日は三人で性病検査しまーす!」
    獅子神「(憤死)」
    叶「なんでだ?今日礼二君がいないのと関係があるのか?」

    真経津「叶さん鋭い!」
    叶「礼二君は医者。オレ達の性病を気にする理由。まさかな・・・。とりあえず検査受ければわかるか。入るか、敬一君。」
    真経津「叶さん話早い!」

    獅子神「説明しろすべてを。」
    真経津「したら検査受ける?」
    獅子神「受ける訳ねぇだろ。」

    真経津「叶さん、そっちの腕持ってー。」
    叶「オッケー。」
    獅子神「ふざけんな!なんでこうなんだよ!!!!!!!!(諦念)」
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