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    お姉さん

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    人間やJBのシステムが怖い話3編。
    登場人物のまわりの人間の視点から。

    #ジャンケットバンク
    junketBank

    【ジャンケットバンク】ホラー短編集▼▲目次▲▼

    ・特別業務部の事務職員「もっとも邪悪な事務仕事」

    ・ミツルの母「大事な我が子」

    ・カラス銀行の警備員「銀行見取り図」

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    特別業務部の事務職員「もっとも邪悪な事務仕事」


     今日もリスト作成が忙しい。件数自体は一日数十件だが、半日程度の締め切りとなるためスピードが求められる。氏名、性別、年齢、住所、保険者番号・・・などをミスが無いよう入力していく。

     債務者は突如として人権一切を奪われる。急にいなくなって家族が失踪届を出そうが、たまに落札後に死体が発見されようが、警察は取り合わない。私が作成したリストにデータがある限り。

     同僚がWチェックし終わった警察との連携リストをクラウドにアップロードして、今日の仕事は終了だ。

     何も思わない訳じゃない。でも何ができる?私が銀行と警察の関係を告発したら、次にリストに加えられるのは私の名前になるだろう。どうせ私がやらなくたって誰かがやる仕事だ。そう割り切って仕事をしている。

     でも・・・。この仕事を始めてから、私は後ろを振り返ることが多くなった。誰かの恨みを込めた視線を感じるような気がして。

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    ミツルの母「大事な我が子」


     化粧水をつけながら、ボディーソープを詰め替えるのを忘れていたことをようやっと思い出した。今ちょうど充が風呂に入っている。あの子困っているかもしれない。どうせ親子同士だし恥ずかしいこともないかと思い、風呂場の戸を開けた。

     「充!どうしたのその傷!」
     「なんでもないよ!閉めてって!」
     「なんでもないことないでしょ!?何があったの!?」
     「なんでもないんだって!!」

     息子の腹に大きな縫合痕を見た。まるで手術の痕のような・・・。息子は入院なんてしていない。手術の同意書だって書いていない。散々充に問いただしたが、なんでもないの一点張りだった。

     昔はそんなことなかったのに、大学に入ってからガラの悪い人とツルんでいるのか服が派手になったり、顔に怪我をして帰ってくるようになっていた。何かとんでもないことに巻き込まれているのかもしれない。不安にかられ帰宅した夫に相談し、夫から充に話をしてもらったところ、「盲腸で手術をしたが恥ずかしくて親に言えなかった」と言っていたらしい。

     本当にそうかしら。職場の南さんは盲腸の手術をしたけれど、五日くらい入院してお金も十万程かかったと言っていた。それを指摘すると、軽度だったから日帰り手術で、お金はバイトで貯めた分を充てたと言い訳した。

     息子は嘘をついている。お金に困って臓器を売ったのではと思い、警察に相談した。息子から事情を聴いてくれたが、臓器は売っていない、なんなら調べてくれてもいいとまで言ったらしい。縫合も綺麗だし、本人が手術したと主張しているのでこれ以上は・・・と警察は手を引いてしまった。

     複数の、無遠慮に大きく切られた痕が脳裏から離れない。充は私が腹を痛めて産んだ大事な息子だ。感受性豊かで、絵を描くのが好きで、気が弱い普通の子。そんな子のお腹を切った奴はどんな奴なんだろう。きっと悪魔のように冷酷で、無慈悲で、ひとの心がない者に違いない。今日も夜中まで帰ってこない息子が心配で、涙を枕に落とした。

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    カラス銀行の警備員「銀行見取り図」


     カラス銀行に警備員として勤務し四年になるが、どうにも腑に落ちないことがある。銀行に入っていく客と出ていく客の帳尻が合わないのだ。仕事柄、人の顔をよく見て覚えているが、いなくなる客が一日に必ず何人かいる。

     もちろん中央支店だから建物も大きく出口も複数あるため、別の出口から出ているとは思う。しかし、中の待合室にも姿が見えないことがあるし、それだけでは説明がつかないような奇妙さがある。

     一度、軽く一言交わす程度の馴染の行員に、この件について尋ねたことがある。あごひげを伸ばしいつもニコニコした愛想のいいおじさんだ。
    「幽霊でも見たんじゃないの。金の亡者ってね。はっはっはっ。」
    んなアホな。

     他に出口なんてないのになあ。
    今日も俺は警備室に貼られた銀行見取り図の前で首をひねっている。

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