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    ehara5

    風降の人です。
    Twitter→https://twitter.com/ehara5?s=09

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    ehara5

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    風降と二十四節気を書きたいという野望(その14)
    まじで勝手なイメージなんですけど、風見は社会と図工が好きなんじゃね?と思う

    012_大暑(7月23日頃) 信号待ちをしていると、青いプランターを抱えた小学生が何人か横断歩道を横切った。黄色いランドセルカバーを付けているので一年生たちだろう。
    「もう夏休みの時期なんですね」
     風見は助手席に座る降谷に話しかけた。街路樹からはアブラゼミの鳴く声が聞こえてくる。
    「朝顔の観察日記か。僕もやったな」
    「自分もです」
     夏休み中に朝顔を育てて観察する宿題は昔も今も変わらず、降谷が安室透として接する小学生たちも皆あの青いプランターを持ち帰っているらしい。あの頭の切れる眼鏡の少年も年相応に朝顔に水をやるのかと思うと少し不思議な気分になる。風見の近所に住んでいる子供たちも同じようなプランターを持ち帰っているらしく、玄関先に置いてあるのを見かける。持ち帰った直後と思われるのに、すでに葉が黄色く変色してしまっている家もあり個性が出ているようで面白い。自分の責任で面倒を見ずに植物を枯らしてしまうのも、一つの経験として考えてもいいのかもしれない。
    「降谷さんは、昔から栽培とか園芸とか、お好きなんですか」
     降谷の部屋のベランダ菜園を思い出しながら聞いてみる。あの忙しさの合間を縫って何種類も野菜を育てていることを考えるとお好きでないわけがないのだが。
    「土いじりは好きだよ。成長が目に見えるし、工夫しがいがあるし」
     窓の外を眺めながら降谷が言う。
    「朝顔の観察もやる気が出てしまって、一日に一回水をやるのと二回水をやるのとで葉の萎れ具合が変わるのか実験してたな」
     風見も夏休みの宿題をきちんと終わらせるタイプで、朝顔の観察日記も毎日つけ、成果として収穫した種を学校に提出するところまでやっていた。が、やれと言われたからやっただけで、自分で何かを実験しようという気になるほど朝顔に興味はなかった。
    「それは……なかなか優秀なお子さんですね」
    「優秀というか、ただの好奇心だよ」
     そうやって色々と吸収して今の降谷が出来上がっているのだろう。
    「ほら、子供向けの図鑑に載っているような実験とか、観察の方法とか、試したくなるじゃないか」
     風見は基本的に自ら進んでやってみたいとはあまり思わない子供だったが、「そうですね」と相槌を打つ。数秒の間に、何か積極的にやっていたか記憶を探ってみると一つだけ思い出した。
    「自由研究でザリガニの飼育記録をつけたり」
     夏休みに近所の公園にザリガニを釣りに行き、育てていた記憶がある。子供の情操教育のために生き物を育てさせようとしただけだと思うが、親に促されてやってみれば面白いもので、しっかり名前まで付けていた。しかし、その肝心の名前は思い出せないし、脱皮の様子を観察したこと自体は覚えていてもどのようだったかは覚えていなかった。
    「それ以外は思い浮かばないですが……」
    「まあ興味関心はそれぞれだからな」
     そこで話が終わるかと思いきや、降谷は風見の昔話に興味をもったらしく、目的地に着くまで小学生の頃の話が続いた。今まで聞く機会がなかったが、風見も幼い頃の降谷についてほんの些細なことであるが知ることができた。
     降谷を車から降ろして風見は思った。幼い降谷は腕白小僧で、今でもその性質がしっかり残っている。
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    ehara5

    DONE風降と二十四節気を書きたいという野望(その13)
    上司からしたら冗談くらいのテンションでも部下は頑張っちゃうとかあると思います。
    011_小暑(7月7日頃) 風見にとって、七夕の時期は曇りや雨が多いイメージがある。七夕の当日は、お天気キャスターが織姫と彦星の逢瀬が達成されるか否かを必ず口にしているが、今年の予報も曇りだった。晴れようが曇ろうが、都心では天の川が見えることはないため、仕事に支障がなければ風見にはあまり関係のないことだった。
     風見が所用で訪れた警察署の玄関には、七夕の笹が飾り付けられていた。金銀の網飾りが生暖かい風になびいて、鈍い光を放っている。多くの警察署では地域の保育園や小学校と連携して、子供たちに七夕の飾り付けをしてもらうイベントが催される。笹のすぐ近くに協力団体の名が掲示してあった。
     色とりどりの短冊には、つたない字で願い事が書き記されていた。ゲームソフトが欲しいだの、友達ともっと仲良くなれますようにだの、子供らしい純粋な願い事が並ぶ。よくよく見てみると、警視庁からのテコ入れがあるのか、交通安全の標語のような文言も入り交じっており、折り紙で作られたパトカーまである。その中に「お父さんがじこにあいませんように」と健気さを感じるものを見つけ、思わず風見は頬を緩めた。
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