20_小雪(11月22日頃) 風見が上司の車に乗り込むと、見慣れない物が目に入った。ダッシュボードに小さなお守りが置いてあったのだ。白いお守り袋に金の糸で「交通安全御守」と刺繍されている。
「どうされたんですか、これ」
風見は思わず聞いた。
「お守りだけど」
降谷はお守りを買うようなタイプではない。
「ええと、――なぜここに?」
どのような経緯で持っているのだろうと純粋に思った。押収品だろうか、と一瞬過ったが、すぐに否定された。
「マスターが酉の市に行ったついでに、僕と梓さんの分も用意してくれたんだ」
「酉の市?」
よく見ると、お守りには小さな熊手と小判の飾りが付いている。
「商売繁盛の、熊手の、あれですか」
「そう。深夜のうちに馴染みのところで買ってきたみたいで。僕にはこっちの方が必要じゃないかって」
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