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    次の話がキリのいいところまで書けたので ばく→とどから始まるばくとど 焦凍くんの背中に羽が生えるはなし 最初はコメディ調だけどだんだんシリアスになってエロになってハッピーエンドになる予定

    告解 神よ、慈しみ深く私を顧み、豊かな憐みによって私の咎を許してください。
     ■■に染まった私を洗い、罪深い私を清めてください。


    一、


     それまで爆豪の五感すべてを支配していた爆破が止んだ。いっそ騒々しいほどの静寂と閃光に追いやられていた街並みが爆豪の元へ戻る。それに一瞬遅れて、逃げ惑っていた人々の動きが止まった。衣を裂くような悲鳴が止んだ。そうして視線がただ一点に注がれる。その先、日本一の高さと世界一の強度を誇る商業ビルは大きく傾いていた。そしてそのすぐそば、崩落を防ぐように大氷塊がそびえ立っている。純度が高く温度の低い、透明な美しい氷だ。そんなものを瞬時に形成できる人を、爆豪はたったひとりしか知らない。
    「あの馬鹿、ブッパしすぎだろ」
     そうひとりごちて、爆豪は敵の首根っこを掴む手に力を込めた。ようやく捕まえたこの厄介な敵を逃がすわけにはいかない。
     久々に手のかかる敵だった。パトロール中、怪しい動きをする男を見かけ不審に思った爆豪が追跡を始めたのがおよそ一時間前のことだ。男は名所にもなっているビルへと入り、あろうことか全身全霊をかけて大暴れしはじめたのだった。
     両手の指先で触れた物質の硬度を下げるという個性を持った男は平日でも人の多いビルのあちこちに触れて回った。爆豪の個性は攻撃力が高く、脆くなったビルの中では使えない。目の前で次々と個性を発動してゆく男を尻目に、崩れかけて傾いたビルに恐れおののきパニックに陥った人々の避難誘導を優先しつつ後援のヒーローを待っていた爆豪の目の前に現れたのがショート――轟だったのだ。
    「お、爆豪」
    「大・爆・殺・神ダイナマイトだっつってンだろ」
    「わりぃ、大爆殺神ダイナマイト」
    「ナカグロをつけろナカグロを」
     言って、爆豪はハァと深いため息をついた。他の人間なら烈火のごとく怒って訂正させるところだが、何故だかこのぽやぽやとした表情を見るといつも怒る気が失せるのだった。「……次から気を付けろや」と自分でもよく分からない捨て台詞を残し、敵を手に持ったままだったことを思い出して警察に引き渡そうと踵を返そうとしたところで、轟が背中をしきりに気にしているのが目に留まった。
    「なんだ、怪我したンか」
    「いや、怪我じゃねえと思う。こんなところ食らった覚えねえし……」
     そう言いながらも轟は肩甲骨の間の溝を探る手をやめない。それどころか背に背負っているラジエーターまで下ろし、藍色のヒーロースーツの上からさすっている。けれども爆豪から見ても傷などがあるようには見えなかった。
    「痛ェんか」
    「うー、ん、痛いっていうか……痒い? いや痛ぇのか?」
    「俺がテメェに聞いとんだわ」
     つーかテメェの身体だろ、という言葉は喉につっかえた。幼少期の頃から虐待紛いの特訓をさせられてきたせいか痛みに鈍いきらいがあることを知っていたからだ。喉に小骨のように引っかかった言葉を飲み込んで、爆豪はなおも背中を気にし続ける轟に背を向けた。途端、しゅんと落ち込んだ声が飛んでくる。
    「あ、爆豪……」
    「コイツ、サツに渡してくっから。そしたら見てやる」
    「! うん」
     ちら、と背後を振り返るとそこには嬉しそうな表情を隠そうともしない轟がいて、その平和な顔にこちらまで表情が緩んでしまいそうになるのを必死に引き締め爆豪は犯人の男を掴んだまま爆破をアスファルトに向けて宙へ飛び上がったのだった。

     警察に男の身柄を引き渡し、事件の聞き取りを終えて、爆豪は轟を連れて自分の事務所へと戻っていた。背中を見るとなれば服を脱がなければいけないし、そうであれば外や人の目があるところではよくないと思ったからだ。打ち合わせ室として使っている小部屋に轟を押し込み人払いをして、轟を椅子に座らせる。そうすると、さほど広くない密室にふたりきりで今から服を脱がせるという異様な光景にかじわりと爆豪の心拍が上がった。
    「オラ、さっさと服脱げ」
     速まる鼓動を誤魔化すようにぶっきらぼうに言うと、轟はわりぃとひとつ謝って素直にヒーロースーツを脱ぎ始める。赤い肩ベルトのラジエーターを下ろしテーブルの上に置くと、ごとんと硬い音が密室に響いた。
    「そういえば朝から違和感があったから多分敵にやられた傷とかじゃねえと思う」
    「は? 朝から痛かったんか体調管理舐めプかよ」
    「痛いって程じゃねえ。寝違えたんだと思ったんだ」
     首の金具を外しジッパーを下ろす。ジジ、という音がやけにゆっくりに聞こえた。焦らされているような気分になって、いや焦らすってなんだと爆豪が心の中で自問自答する。そんな爆豪の胸中などいざ知らず、轟がばさりと上を脱いで白い背中を顕わにした。
     すべすべのうなじから続く背筋は背骨のおうとつを少し伴ってすっと伸びている。広背筋や僧帽筋は学生の頃とさほど変わらぬなだらかさのままで、近接戦を得意とし上半身で爆風を操る自身のそれとは一線を画していた。皮膚だって、大小さまざまな傷だらけの自分とは違い傷も先の大戦での火傷の痕もなく、それどころか毛穴や産毛すらもなくふっくらと張ってつやつやと瑞々しい。男性とも女性ともどこか違うように見える身体のつくりに、爆豪が一瞬言葉を失って見惚れる。
    「爆豪? なんかなってるか?」
     それを訝しんだらしい轟が振り返らずに声だけを背後に投げる。その言葉に「今見てんだわ」と適当に返し、爆豪は邪念を振り払うようにかぶりを振り、背中にぐっと顔を近付けて轟がしきりに気にしていた箇所をまじまじと見た。
     強くさすっていたせいか少し赤くなっている肩甲骨の狭間、そこには柔肌を持ち上げて何かがふたつ、ほんの少し顔を出していた。白くやわらかそうなそれをひとつ指先で摘まんで引っぱってみる。すると、それは皮膚の中からするんと飛び出て空気を含んだ。
    「……羽?」
    「はね?」
     ひとつが完全に顔を出すと、埋まっていたもうひとつも後を追うようにするんと皮膚の内側から出る。轟の背中には、やわらかで純白の小さな翼がふたつ生えていた。
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