斜陽の初恋 鮮やかな夕焼けを見る度に、あの日のことを鮮明に思い出す。初めてあの人の優しさに触れて、高ぶる想いと犯した過ちを呪うあの日のことを。
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厳格な両親は自由奔放な弟のことを諦め、教育を全て自分に注ぎ込んだ。神様へ捧げる舞の稽古、基礎体力や狩りの訓練、サバイバル知識、薬草毒草の見分け方、天候の読み方、獲物の分布。全て生きるために必要な知識だが、自由気ままに遊ぶ子供達を見ては羨ましさに後髪を引かれる日々だった。
春先。大人への第一歩として、少年期に入った子狼達は日没までに一人で獲物を狩る催しがあった。
狩りが始まる昼時。アキカゼは緊張した面持ちでいるが、打って変わって弟のスズカゼは「リスって香ばしくて美味しいよねぇ」と呑気に食事のことを考えている。
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