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    先週の司類ワンライ「コンビニ」で書いたものの粗が気になりすぎたので、できる限り整えた。後半につかさくんパートを追加したい。

    ##司類

    コンビニ(仮) 夏、渋谷。フェーン現象やヒートアイランド現象、さまざまな事象が絡みあい、そこは灼熱地獄と化していた。
    「暑い……」
     我らが座長も流石の暑さに根を上げた。放課後、司くんと二人フェニックスワンダーランドへ向かう途中。いつも一緒に向かっている寧々は、日直なので後から来ることになっている。
    「毎年のこととはいえ、やはりキツいねえ……。これは観客の熱中症対策も何か考えなければね」
     汗で身体に張り付くシャツの胸元をバタバタと動かして、なんとか暑さを誤魔化してみる。――が、そう簡単にはいかなかった。
    「類、コンビニに寄って行かないか?」
     今にも溶けてしまいそうな顔で、アイスでも食べようと少し先に見えるコンビニを司くんは指した。同じくいつ溶けてもおかしくない僕は一も二もなく頷いた。

     軽快な入店音と同時に心地良い冷気に包まれる。現代版砂漠のオアシスといったところだろう。隣りからも生き返ると大袈裟な声が上がっている。
     肩を並べて業務用の冷凍庫を覗き込む。そこには定番のアイスから季節限定のものまで、ありとあらゆるアイスがみっしりと陳列されていた。
     カラフルなそれは誰かさんのセカイみたいだなと少し思った。
    「類はどれにするんだ?」
    「うーん、そうだね……」
     最初は通年商品である水色のソーダ味のアイスにするつもりだった。しかし、いざ並んでいる商品を見ると季節限定の商品にも目移りしてしまう。
    「これとか、お前が好きなんじゃないか?」
     その指先が向けられていたのは、僕がよく食べているラムネ菓子の夏季限定アイスだ。まさに悩んでいた商品を指摘され思わず、隣りにいる司くんへ視線を上げる。
    「やはりこの天馬司の目に、狂いは無かったようだな!」
     得意げに言う彼は、本当に嬉しそうだ。当たったことがそんなに嬉しいのだろうか? それにしても、こんなに素直に感情を表されると、もっと他の感情も見たくなってしまう。
    「残念だけど、こちらのアイスとも甲乙つけ難くてね。どちらにしようか悩んでいるんだよ」
     水色の袋を指して伝える。悔しげにする顔が見られると思っていた。しかし司くんは悩むことなく、その水色の袋を冷凍庫から抜き出した。
    「じゃあ俺がこちらにするから、類はラムネのものにするといい。一口ずつ交換しよう」
     予想していなかったその動作に、一瞬思考が置いて行かれる。動かなくなった僕が不思議だったのか、嫌だったか? と司くんは首を傾げた。
    「……君は本当にお兄さんなんだねえ……」
     本人にとってはなんでもないことなのだろう。しかし一人っ子の僕からすれば不思議な行動だった。
    「僕が君の弟だったら幸せだったろうね」
     ラムネのアイスを手にしながら言うと、司くんは盛大に顔を顰めた。理由を尋ねようとしたところで「次にお並びの方~」とレジの順番が回ってきてしまった。

     会計を済ませ、店内のイートインスペースに着席する。ガサガサと袋を開け、パステルカラーの薄緑のアイス本体を司くんへ差し出す。
    「いただきます」
     司くんは行儀良く声に出すと、僕の手にある薄緑のアイスに齧り付いた。てっきりアイスを受け取ってから食べると思っていたので、面食らってしまった。
    「君は行儀がいいのか悪いのか判断に困るね……」
     整った歯形のついたアイスを見ながら、小声で呟いた。案の定、呟きは届かなかったのか、何か言ったか? と司くんは聞いてきた。
    「なんでもないよ。――ところで、さっき僕が弟だったらと言った時、なぜ嫌そうにしたんだい?」
     少なからず傷ついたんんだよ酷いじゃないかと、泣き真似をしながら茶化すように尋ねた。単純に嫌われていたら、と思うと冗談めいた方法でしか問いただせなかった。もし。それが頭を掠めただけで、コンビニの冷房もアイスも必要が無いほど体が冷えていく。
    「それは……。やっと見つけた、そうだな……同い年の、初めての相方、のようなものなんだ。妹や弟となると、兄である俺が守ってやらねばならないだろう? でもお前なら――同じ目線で、隣りに立って、全力でぶつかって、一緒に最高のショーをやれる。だからお前が弟なのは嫌だと思ったんだ」
     まさか真面目な回答が来るなんて夢にも思っていなかった。そうか。僕は君の中で、君の隣りに立つに相応しいと。そこにいていいと。咄嗟に手放したくない程度には、想ってくれているのか。
    「ニヤニヤするな! ほら、アイスが溶けてしまうぞ!」
     照れ隠しなのだろう。司くんは水色のアイスをグイグイと僕の口へ押し付ける。
     僕は嬉しいやらこそばゆいやら――これは照れている、んだろう。どうにも解けてしまう口元を誤魔化すように、やけくそのように大きな口で目の前の水色に齧り付いた。
     シャクリ。小気味いい音を立てて冷たい塊が口内へ落ちてくる。
    「あー! 類、お前は!」
     司くんは中の棒が見えるようになった、水色のアイスを見て叫ぶ。
    「一口と言ったのは君だろう?」
     ごちそうさまと言いながら、僕はニッコリ笑って見せた。
    「限度と言うものがあるだろうが! お前は絶対、ぜーーーーったいに弟にはしないからな!」
     いつも通りの司くんの大声が店内に響き渡る。
     飲み込んだアイスは火照った体に心地よかった。
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