桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿 1べちゃりと嫌な音がして薄く目を開く。温かいが変にねっとりとしていて気持ちが悪い。
目を覚ます夢を見たのだろうと目をきちんと開き、身体に纏わりつく何かに視線を寄越す。透明な粘液質の何かなのはわかったのだが、自分はそういった特殊な思想や願望を持った人間だっただろうか。
否、夢でしかないのでどんなものを見ようとそれは脳が睡眠中に整頓している情報の中から無作為に得た情報などを映し出して物語のように仕立てているだけなのだ。昔に見たお笑い番組でローションまみれで必死に走る芸人の情報でも拾ったのだろう。
うんうんと目を閉じながらそのように結論付け、身体を起こそうとすれば、粘液質の何かが掛かっている部分が辛く痛みを訴え始める。それを実感した途端、鼻が酸の匂いを拾い出した。
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