朝月夜朝月夜
荒い息遣いが、辺りに響いていた。木々の合間を夜のしじまが満たしていて、白樺の木の隙間から見上げる空も、黒く塗りつぶされている。
息遣いは煉獄のものだった。すでに手負いのようだが、特に深い傷ではなさそうだ。息が上がっているのは、そのせいではないようだった。
すでに鬼は斬り倒されて、隠たちが後始末に忙しく動き回っている。
別の鬼を追っていた冨岡は、そちらを始末して戻ってきて、暗闇を見つめたまま立ち尽くす煉獄を見つけたのだ。
「炎柱様」
隠の一人が声をかける。煉獄は、我に返ったようにその者を見た。
「お怪我の手当を……」
「いや、いい。自分でできる」
いつもの優しい声だが、どことなく固い響きが混じった。
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