君の寝言を聞いた。
柔らかそうな頬は緩み、口元は幸せそうに綻んで、穏やかな寝顔に目が釘付けになる。
「たい焼き……」
ふふ、と笑いながら、ウィルは確かにそう呟いた。
あまりに嬉しそうに言うものだから、一瞬、何のことか分からなくて、思わずまじまじと寝顔を見詰めてしまった。
(タイヤキ……たい焼き?)
理解すると今度は次第にじわじわと可笑しくなって、必死で笑いを堪える。
写真を撮っておこうかとスマホを手に取るが、思い直してポケットに閉まった。
代わりにウィルをじっと眺めた。
お昼寝の傍らで、こんな面白いシーンを独り占め出来て、なんだか得した気分。
抱えたクッションを大切そうに抱え直す。その手の節くれだったところとか、結構好きだったりする。
寝息は窓辺からの淡い光に溶け、胸が上下する様を眺めていると心が落ち着いた。
起こさないように、良い夢を邪魔しないように、そうっとウィルの髪に触れた。毛先を僅かに撫でるよう、優しく。
「……フェイスくん」
ウィルが再び深く呼吸した。
そうして、また唇が綻んで、もう一度フェイスくん、と呟く。
どんな夢を見ているのかな。
君の中の俺が、君に優しいといいのだけれど。
寝息に耳を澄ませた。
少し微笑んだウィルにそっと口付けを落とす。
あまりにも平和な午睡は、胸に長く甘やかな心地を残した。
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