昔の映画といこおき 週末にテレビで放映していた昔の映画なんて、観るんじゃなかった。
水上先輩に『チビん頃に観たけどおもろかったで』なんて言われたから軽い気持ちでチャンネルを合わせたんだけど、途中で結構凝ったホラー描写が挟まれていた。
「めっちゃ怖いやん……。これ怖ないて、先輩どんな子どもやったんやろ」
観ているうちにそわそわと落ち着かなくなり、ベッドから毛布を引っ張り落として頭から被った。
もう観るのをやめようかと何度か思ったけれど、ストーリーは謎解き要素が多くて確かに面白いし、先が気になる。
もうちょっと、このCM明けたら時間的にそろそろオチのはず、とテレビを観つつもスマホの時間表示をちらちらと横目で見る。
『ヒッ……ギャアァッ』
「うわ! 何やねん!」
暗めの画面がいきなり派手に明滅し、俳優の悲鳴が響いた。
びくっと飛び跳ねてしまったおれは毛布を両腕で手繰り寄せ、目と鼻しか出ていない状態で自分の膝を抱きしめるように小さくなった。
「あかんわ、これ……」
部屋の中に、悲鳴とぜいぜいと荒くなる呼吸音が断続的に響く。
俳優さん怖がる演技うますぎん?と意識を逸らそうとするけど、背中の震えが止まらない。
不意に、ポーンとチャイムのような音がすぐ側で鳴った。
「わぁぁ?!」
声を上げてしまったおれは、すぐにその音の正体に思い当たり、握り締めていたスマホを見た。
『隠岐、今なにしとる?』
イコさんからメッセージが届いていた。
「テレビ観てます、と……」
手早く返信するとすぐに既読がつき、更にメッセージか届く。
『今からそっち行ってもええ? つく頃にはちょうどそれ終わると思うし』
(え、おれが何観とるか、イコさんにゆうてへんやんな?)
水上先輩から映画の話を聞いたのはイコさんが作戦室に来る前だったし、その後は別の話で盛り上がった。
正直、このあとひとりで寝られるか不安になっていたから、イコさんが来てくれるのは渡りに船、猫に減塩かつぶしくらい大歓迎だ。
でも。
(おれが怖いのん苦手なん、勘づかれてそうやわぁ。わー、カッコ悪ぅ……)
複雑な気持ちはあるけれど、イコさんのお誘いが嬉しいのは確かなので、待ってますと手招きしている猫のスタンプを押した。