楽しい映画デート(いこおき)「これ続編やるんやな」
「あ、これめっちゃおもろかったですよ」
作戦室のテレビで流れたCMが目に入り、思わず呟いた俺の声に隠岐が反応した。
「もう観たんかい。いつからやっとったん?」
「先週末からやから、日曜観てきました。先着特典もろてきましたよ〜」
スマホの背面に挟まれたステッカーを自慢げに見せられる。
(何や、イコさんと映画デートやったんかい)
一応明言はしないから隠しているつもりなのかもしれないが、イコさんと隠岐がつきあっているのは、俺やマリオからみたらバレバレだ。海はどうか知らんけど。
「ええなぁそれ。せやけど封切り直後は混んどるやろ。俺はもーちょいしてから行くわ」
「そんなんゆうてたらタイミング逃して終わってまいますよ。イコさんもおんなじことゆうてはったし、一緒に行ったらええんちゃいます?」
ん?
「イコさんは観てへんの?」
「観てへんですよ」
「ほな、お前ひとりで映画館行ったん?」
「や、一緒に行きました」
「せやったら何でイコさん観てへんねん」
「何でって、イコさんは別のん観たいゆうてはったから」
「はああ?」
(デートで映画館行って別々の観るて、そんなことある?)
何言うとんねんコイツ、という顔をしている俺を見た隠岐は、不思議そうに首を傾げた。いやお前が不思議がんなや。
「イコさんが観たんもおもろかった、てゆうてはりましたよ。感想話すん盛り上がりすぎて揚げたてやったカツ冷めてもーたくらいやし」
「ちょお整理させて。映画館はイコさんと一緒に行ってんな?」
「はい」
「ほんで、映画館の入り口で解散して」
「ポップコーン買う時まで一緒でしたよ。チョコキャラメルとバターしょうゆ半分こさせてもろたんです。甘いのんと塩気でええ感じやったわぁ」
「ほなポップコーン分け合うてから、別々の映画観て」
「そーですねぇ」
「ほんで?」
「映画終わってから合流して、昼飯食べました」
(……それ、デートなん?)
映画観ながらこっそり手を繋いだりとか、上映後に観た映画についてふたりであーだこーだ言い合いながら飯食ったりするのが楽しいのではないのか、と思わなくもないのだが。
「ほーん……。楽しかったん?」
「めっちゃ楽しかったですわ。イコさんの感想ほんまにおもろいし、身振り手振りもついとってかわいいし」
(かわいいて。いや判らんでもないけど)
にこにこと笑う隠岐は確かに楽しかった感が溢れているし、幸せそうだった。
「ほなまあ、良かったやん」
「はい」
本人達が良ければ、外野がどうこう言うことではない。
そう納得した俺は、イコさんが来たらスケジュールの空きを聞いてみようと脳内で予定を立てた。