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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    夏+五から夏五になる五秒前😊三角クリスマス帽にまつわるほっこり小話
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    呪専 傑視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲

    #夏五
    GeGo
    #雪融けて春

    ◆四◆ まじない 街がイルミネーションに彩られ、そこかしこでクリスマスソングが流れ始めると、そわそわと浮かれた気分になってくる。中学の頃は何となく付き合っていた彼女と過ごしたけれど、それでもこんな心待ちにしなかった。
    「え、クリスマス会したことないの、悟」
    「うち、年末年始の準備で慌ただしいからな。キリスト教徒でもないし、他宗教の聖誕祭なんてやらない」
    「ああ」
     友だちとかは、の言葉は辛うじて飲み込んだ。そうか、学校だって通っていなかったとなれば、当然もそんな機会もある由もなく。
    「それじゃあやってみる、クリスマス会」
    「何するんだよ」
    「クリスマスツリー飾ったり、チキンやケーキ食べたり、プレゼント交換したり」
     きょとんとしていた表情が見る間に輝き始め、長い睫毛に縁どられた大きな瞳が光を帯びる。
    「なにそれ、楽しそう」
     身を乗り出して弾んだ声に、それじゃあ、クリスマス会をしようかと提案をした。
    「それなら三人でやってみるかい」
    「えっ、私も入ってるの」
     我関せずで話に入ってこなかった硝子が、急に話を振られて驚いたように声を上げた。
    「私、歌姫先輩と予定入れちゃったからパス」
    「帰ってきてからでもいいよ」
     だから参加してよと、存外に匂わせると、違わずこちらの意味を汲み取ったらしく、チキンはモス一択、それ以外は認めないと言うので、頷いて二つ返事で引き受けた。
    「買い出しはしてくるから」
    「もみの木が欲しいなら、俺、実家に声掛ければ」
    「悟、ありがとう。クリスマスツリーは学校にあるみたいだから、それを借りればいいよ」
     頼んでみたらと言わんばかりの硝子を目で牽制してやんわりと悟に断りを入れる。高校生のお遊びで使うような代物ではない、恐ろしく立派なものが届く可能性が非常に高い危険性をわかっているのだろう、手で隠した口元がにやりと笑っている。
    「ふ――ん。 それじゃ、俺何するんだよ」
    「私と一緒に買い出しに行こう。硝子に頼まれたモスチキンも予約しないと。ケーキは悟が好きなの選びなよ」
    「おうっ。楽しみだな」
     途端、サングラスの奥できらきらと瞬く星が輝き出したのを見て、ふたりで過ごしてみたかったかなという思いも、三人で過ごすクリスマス会にしてよかったと、自分の判断を褒め湛えながら声を立てずに笑った。
     
     そして買い出しに出掛けた店で見掛けたのは、煌びやかな厚紙で作られた円錐型の帽子だった。てっぺんには金色のぼんぼん、淵にも金色のモールが取り付けられた赤と緑。ふたりでクリスマスカラー。
    「何これ。 欲しい、被りたい」
    「いいよ、買っていこう。でも被るだけじゃすまなくて、壊すといけないから、当日までやめておきなよ」
    「え――」
     威勢の良いブーイングにぽんぽんと頭を撫でて、帽子を各色二個ずつ買い物かごに入れた。
    「壊すの前提で予備かよ」
    「違うよ、要らないかもしれないけど硝子の分。歌姫先輩も一緒にって言ったら被りそうでしょ」
    「俺とオマエでお揃いだな」
    「そうだね」
     曖昧に微笑みそうになり、慌てて顔の筋肉を総動員すれば、満面の笑みを浮かべられたらしい。目の前で得意げに頷く様子に、私には少しニュアンスが違うけれど、それは言わぬが花だ。いつの間にか芽生えた想いは日々勝手に貰っている肥料ですくすくと育ち、次々に花を咲かせては散っている。やがて実ることはあるのだろうかと自問し掛けては、そっと蓋をする日々は数ヶ月になる。
     それ以外にもクリスマス仕様のカップやトレイ、煌びやかなモールなどの室内用の装飾品を悟がかごに入れていく。かごいっぱいでも会計の安さに驚き、まだ買おうとする悟の手を引いて店を後にした。
    「楽しみだな」
    「ふふ、よかった」 
     
     冬休みに入ったお掛けで朝から予定はないけれど、流石に夜からでしょと窘めた。それでもそわそわしている悟に、ブランチを食べたところで飾り付けをしようと誘うと、どこかで見たような顔で頷かれた。記憶を探れば先日買ったクリスマスカードの天使だったので、私も相当浮かれているのだろう。
     袋から出した品々を床に並べながら、悟が赤い帽子を手に取り、ちらりとこちらを盗み見るように視線を流した。
    「被りたいの」
    「被っていい」
     食い気味の返事に、よっぽど気になっていたんだと思うとかわいらしくて、ああ、そうだと思い付いた。
    「悟、ベッドに腰掛けな」
    「何」
    「戴冠式みたいに被せてあげる」
    「おっ、かっこいい」
     飛び跳ねるようにベッドに走り寄り、ちょこんと大人しくベッドの端に腰を下ろして、上目遣いでこちらを伺う。星を宿したような蒼い瞳に吸い込まれそうになりながら、片手に帽子を携えてすぐ前に立つ。そのままふわりと被せるつもりでいたのだ。けれど、嬉しそうな表情にくらりと揺らめく。自然に左手を軽く肩に添え、身を屈めていた。
     顔を近付け、たんぽぽの綿毛のような柔らかくふわりとした髪に唇を寄せ、旋毛にそっとキスを落とした。頭上にある私の表情は悟からは見えないし、私からも悟の顔を窺い知ることは出来ない。それでも僅かに揺らされた肩以外に身動ぎされることなく、大人しく私の口づけを受けとめている。瞬きほどの僅かな時を経て顔を上げて、今の出来事を覆い隠すように、両手で携えるように掲げ持ち、煌びやかな赤い三角帽子を恭しく頭に乗せた。
    「ありがと」
    「どういたしまして」
    「帽子乗せる前のは何の合図」
     知らないことを知りたがる、何の衒いもない普段通りの問いかけに、上がる心拍数を宥めすかし、咄嗟の思い付きが口をついて出た。
    「楽しいクリスマス会が滞りなく出来ますように、その任に当たれますようにって言うおまじないだよ」
    「まじない」
     疑問形のおうむ返しに言い含めるようにゆっくりと、弱い冬の光りを受けて輝く帽子を見ながら苦肉の策である言い訳を続ける。
    「私たちの地元だけかもしれないけど、周りの大人や先輩がやってくれたんだよね」
    「ふ~ん。それじや、傑も座れよ」
     弾んだ声と共に伸びてきた掌は腕を掴み、悟側に引かれてすぐ隣に腰を下ろすと、重みでベッドが軋んだ。代わりに立ち上がった悟が緑の帽子を手に持ったまま私の正面に立ち、僅かに大きな体を屈めると、左頬に少し冷えた掌が添えられたとわかるとすぐ、頭のてっぺんにあたたかなぬくもりを受けた。
    「えっ」
     視線だけで見上げると帽子よりもきらきらと輝かせた蒼い瞳が嬉しそうに煌めいていた。
    「傑にもおまじないな」
     緑の帽子にあわせたようにクリスマスカラーになった、赤く染まっている私の顔の言い訳は、思い浮かばない。
     
     
     ☆髪、頭 思慕
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    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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