Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 29

    藤 夜

    ☆quiet follow

    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    祓本 先輩芸人視点 
    クリスマスにまつわる可愛らしい嫉妬を横から見ていたモブ芸人の一幕
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲

    #夏五
    GeGo
    ##雪融けて春

    ◆二◆ 悋気 きらきらとした街角は着飾った人々がイルミネーションや華やかな店先を眺めながらそぞろ歩いている。そんな街中とは一転、扉を潜りもぎりを抜ければ、埃くさい会場がおしゃれとは程遠い様相を呈している。それでも熱気に満ち溢れ、クリスマスソングではなく大歓声が響き渡る。
    「ありがとうございましたっ」
     笑い声に湧く会場に向かってマイクを挟んで並び立ち、九十度にお辞儀をして威勢よく声を揃えて挨拶をし、舞台袖に後輩がはけてきた。最近飛ぶ鳥を落とす勢いで人気も実力もうなぎ上りだ。元々見た目は上々で、寧ろそれが足を引っ張っていた感もある。顔だけのファンだってついていないよりマシだが、シャレにならない奴らも中にはいる。
    「クリスマスに演芸場に来る奴なんて、もの好きだけで客なんてたいして入らないと思ってた。暇人多いんだな」
    「折角のお客さまをダメだよ、悟」
    「うっえぇぇ――、また正論」
     窘める黒い方に、白い方が舌を出して反論をしているが、いつものことで、喧嘩にすらならない。なにしろ
    「違うよ、私たちの飯のタネだからね、大切にして」
     黒い方だってそれを売りにしているところもあり、なかなかの毒舌だ。まあ、芸人なんて、そんなものじゃなきゃ、やっていけない。よっぽど売れなきゃ人様のことまで優しく大らかな目で見ていられる余裕はない。食う寝る所に住むところ。先人は良く言ったものだ。ただ元々そう苦労している様子もなく、最近はかなり余裕も出てきたはずだ。何しろ定番の衣装、喪服がグレードアップしている。それでなくとも、貢いでくれる客は引く手あまただろうが、それを全て断っていたらしい。それでも困窮することなくここまでやってきたのだ。
    「先輩もな」
    「先輩はメシのタネじゃないですけど大切にしていますよ」
     黒い方と呼ばれる夏油がしれっとそつなくにこやかに笑い返した先輩は、またかと思いつつも相手が悪い。俺らの先輩でもあるけれど、自分が気に入った相手は男女問わず見境なしに口説いてまわる。見た目も羽振りもそこそこいいし、性格も芸人にしてはマシな方だろうが、気のない相手に纏わりつかれても迷惑なだけだろう。しかも、奢られたついでに酔っ払いの相手は後輩として当たり前だと甘受できれば、メシ代も浮くし可愛がって貰えるが、それすらも波風立てないよう上手いこと断っている。
    「メシのタネにしてくれてもいいんだけど。この後飯でも」
    「先輩モテるんですから、クリスマスの夜なんて、引く手あまたでしょう」
     柔和な笑顔ながら僅かに強くなったトーンは、冷ややかさも若干足されているが、傍から見ているから気が付くだけなのか、言われた本人はどこ吹く風だ。
    「それがなかなかなびいてくれない相手がいてさ、相談に乗ってよ」
     いやいや、その相手、目の前の夏油だろう。本人に相談乗って貰うってどんな手だよ。
    「私なんかでは百戦錬磨の先輩のお役になんて立てませんよ」
     のらりくらりと会話を続けていると、見えなくなった相方の白い方、五条が手に黒のロングコートと色違いのマフラー二本、大きな鞄を携えて戻ってきた。どこに行っていたと思えば自分は既に着替えて真っ白なボアコートを羽織り、帰り支度は万端だ。背後から先輩の相手をしている相方に近付くと、何を思ったのか首筋に顔を近付けた。途端、先輩が引き攣った笑顔を浮かべたまま固まった。
    「傑、帰る」
    「はいはい」
     五条が挑発するような笑みを口許に刷き、不遜に笑ってみせたのは、これ見よがしに耳に唇を落とし、夏油の耳元で強請るような甘えた声で名を呼んだからだ。それをあやすような応えを返し、くしゃりと髪を撫でる指先は蠱惑的ですらある夏油も拍車を掛けている。
    「ん、くすぐったいって。クリスマスの予約、してあるんだろ」
    「してあるよ。でも、悟がイタズラするから、ごはん食べずに帰りたくなっちゃったじゃない。そんなわけで先輩、折角お誘いいただいたのに申し訳ございません」
     こいつら、いい性格してるわ。多分五条は、先輩がキスの意味を分かる前提で仕掛けているのだろう。俺なんてコントのネタで調べただけで、リアルに使うことなんてないけれど、顔のいいこいつらなら、ネタじゃなくとも知っていそうだ。思わず顔を背けて肩を振るわせていると、笑い声が漏れたわけではないのに、背後から声が掛かった。
    「あっ、田中先輩、ごはん奢ってくれるらしいですよ、いかがですか」
     おい、俺を巻き込むなよ。
    「傑、ごはん、食べてから、な」
     五条、何の話だよ。いや、先輩、俺を睨まないでくださいって、関係ないですからね、俺。笑ってるとか、気のせいですから。
    「ふふ、悟、かわいい」
     はあぁぁぁ、どこが、と突っ込みを入れそうになったところで、相方が不思議そうな表情を浮かべて厠から戻ってきた。遅いだろう。いや、まあ、それでも助かったか。この後の先輩を任せられても処置に困るだけだ。
    「それでは先輩たち、お先に上がらせていただきます。お疲れさまでした。よいクリスマスを」
    「お疲れさまでした~」
     おざなりな夏油の挨拶に続いて挨拶をした五条の方が、まだマシでは。よいクリスマスなんて、先輩には無理だろう。喧嘩する程仲が良いなんて、諺だけにしてくれよ。むしろ犬も食わない、だな。
     俺はすでに甘いものはもうたくさんで、クリスマスケーキなんてまっぴらごめんの気分だ。
     ハッピークリスマス。
     言わずもがなだろうけれど、後輩たちに向かって、胸の内で声を掛けた。
     
     
     ☆耳 性的な誘惑
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💗💒💗💒💗💒💗💒💗💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
    2667

    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
    3206

    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
    2855

    related works