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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^

    #夏五
    GeGo
    #雪融725
    snowmelt725

    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
     ほやほやする頭は考えが纏まらず、つらつらとそんなことを思いながら、脇や頭に張って貰った冷えピタが心地よい。そもそも家入さんならすぐに直せるんじゃない、あ、でも、ただの風邪じゃダメなのかな、なんて詮無きことを思いつつ、やがて周囲の音が遠くなった。

    「そう、よかった。まあ、悠仁のことだからね、大丈夫だと思ったけど」
    「こんな年の瀬に学生まで駆り出すなよ」
    「僕だって慌ただしいよ」
    「師走だろ、教師が走ってなんぼだ、諦めろ」
     途切れた意識が聞き慣れた声で浮上する。あ、先生。来てくれたのか、忙しいのに悪かったな。安堵を含んだ声色に、普段はおちゃらけて本心をはぐらかせるような物言いをするのに、陰では気を遣ってくれる優しさを実感する。
    「ちょっと休憩させてよ」
    「さっさと行けよ。虎杖が寝てる」
    「少しぐらいいでしょ」
     俺たちと話す時より落ち着いているけれど、テンポの良い会話と気を許した気配が、加湿された室内を一層柔らかくする。
    「ちょっとこれ見てよ」
     誇らしげ、いや、自慢げ、かな、の弾んだ声に返事は聞こえない。代わりに眉をひそめた家入さんの顔が浮かんだ。
    「言われなくてもそれだけ堂々としていたら目に入る」
    「ふふ。かっこいいでしょ」
    「自慢しにきたのか」
    「だって。七海のとこ行ったら五分で追い返されてさ。ひどくない」
    「どうせ惚気てウザ絡みしたんだろ」
     木枯らしが吹く校庭の外気より冷たそうな声の奥に、ろうそくの灯ほどのぬくもりを見出しながら、家入の言葉が引っ掛かった。何が何だか、会話だけでは把握できないが、どこに惚気があったのか。
    「まだ何にも言ってないのに」
    「腕時計は夏油からのクリスマスプレゼントってとこだろ。私でも知っている値の張る時計。自分じゃ買わなそうだし」
     ああ、それで、なのか。内緒にしているマシュマロのような場所そっと労わるように、軽くひと撫でするような、そんな答え合わせだった。
    「いいでしょ」
    「別に興味はないけど、良かったな」
     素っ気ないほどの共感は、五条が欲しかった応えだったのだろう。返事はなく、さざ波のように幸福が寄せて流れていった。俺もよかたっな、なんて思う。先生たち、仲いいもんな。
    「夏油らしいって言えばらしいな。貴方の時間をください。だったか」
     んっ。何の話。
    「かっこいいでしょ、僕の傑」
    「言ってろ」
    「プレゼント開けたら、傑に私につけさせてって真っ直ぐな声で告げられてさ。勿論って返事したら、こうやって時計をつける左手、取るの」
    「私にするなよ」
    「ごめん、ごめん。それでさ、胸の高さまで恭しく持ち上げられて、手首の内側にそっとキスしてくれて」
     えっ、どういうこと。急に煌めきだしたイルミネーションに遭遇したようだ。
    「さっさと帰れ。だから七海のトコ、追い出されたんだろ。私のところも一緒だ」
    「いいじゃん、同期の惚気ぐらい聞いてよ」
     よく聞くワザと不貞腐れた声は、かわいいところもあるし、あざといところもある。けれど、それは家入さんには微塵も通用しないらしく、一刀両断だ。
    「その後の爛れた夜まで続くだろう、それ」
    「そこまで赤裸々には話さないって」
     あまり想像しない方がいい展開になってきたよな、これ。俺は寝ているってコトにしておいた方がいいんだろうけど、聞いちゃったしな。
    「当り前だ」
     呆れているけれど、突き放しているわけではない、そのニュアンスに聞き覚えがあると記憶をひっくり返せば、野薔薇の物言いで、そうか、先生たちも三人の同級生に紅一点で学生時代を過ごしてきたと思い至る。
     静かになった室内にぱさりぱさりと書類を捲る音がくっきりと浮き彫りになり耳に届く。五条は部屋を後にしていない筈なのに、気配がなくなった。うとうととし始めた頃に、眠りのドアを開けるように医務室の扉が開いた。
    「硝子、ごめん、悟きて、あ」
     耳ざわりのいい低音の声は聞き慣れた件の先生、そう夢現で気が付けば、クラッカーが弾けるような華やかさで名が呼ばれた。
    「ヤッホー、傑」
    「さっさと連れ帰ってくれ」
     南国と北国ぐらいの温度差がある迎えの返事に、やってきた夏油は大よその察しは着いたのだろう。
    「ごめん、悟が何かしでかしたかい」
    「何かしたのは夏油だろ、時計」
    「ああ、時計の話をしにきてたのかい」
     神妙な気配は何処へ行ったのか、一気に先ほどの五条同様、夏油も常より弾んだ声から、嬉しそうなのが見て取れるようだ。
    「違うって。悠仁の様子見に」
    「嘘つくな」
    「硝子ヒドイ。そんなことないって」
    「相変わらず、タラシだな、夏油」
    「人聞き悪いこと言わないでよ」
    「まあ、突き返されなくてよかったな」
    「ふふ。ありがとう。悟に似合ってるでしょ」
    「シンプルでいいな」
    「悟が綺麗で派手だから、着けるものはシンプルな方が、悟自身を引き立てるでしょ」
    「夏油、何しにきたんだよ。これ以上惚気を聞く気はないからな」
     憮然とした家入に、ああ、そうだ、と元々ここに来た理由を思い出したらしい。
    「悟、夜蛾先生が探してる。また約束すっぽかしてるだろう」
    「さっさと話が済んで終了時間が同じなら少しぐらい良くない」
    「良くないよ。行くよ、悟。硝子、また吞みに行こう」
    「驕りなら多少の惚気も聞いてやるよ」
    「ありがとう。よい年を」
    「よい年を」
    「硝子、よい年を」
    「時計を見せるな。よい年を」
     賑やかに先生たちが去っていくと、静寂が訪れる。
     そうだな、今年ももうすぐ終わりだ。こうして毎年先生たちは年を重ねて、これからも続けていくのだろう。
     着かず離れず、それでもすぐに手が届く近い場所で、お互いに唯一の存在として。
     
     
     ☆手首 愛情的な好意
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    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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     水を打ったように静まり返る中、良く通る深い響きを持った声が鼓膜を震わせる。

    「君、その程度で本当にプリンシパルなの?」

     その台詞に周囲は息をのんだ。かの有名なサトル・ゴジョウにあそこまで言われたら並みのダンサーなら誰もが逃亡しただろう。しかし、彼は静かに立ち上がるとスッと背筋を伸ばしてその視線を受け止めた。

    「はい、私がここのプリンシパルです」

     あの鋭い視線を受け止めてもなお、一歩も引くことなく堂々と返すその背中には、静かな怒りが佇んでいた。
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    「あ、そうだ」
     私は冷蔵庫の中身を覗くと、そそくさと買い出しに出かけた。

     ◇

    「たっだいま~」
    「おかえり」
     はー疲れた、と呟きながら悟が帰宅する。彼が帰ってきた途端に部屋の中が賑やかに感じるのは私だけだろうか。少しだけ感傷に浸ったような心地で「急に冷えてきたでしょ」と声をかけると「全然分かんなかった! でも確かにみんなコート着てたかも!」と洗面所から大声が返ってくる。がたがた、ばしゃばしゃ、様子を見ずとも悟が何をしているのか物音だけで手に取るように分かる。これは私の気持ちの問題ではなく、存外物理的にうるさくなっているだけかもしれないな、と苦笑した。
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    藤 夜

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     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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