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    ねねねのね

    キメツの二次創作小説を書いてます٩( ᐛ )و

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    ねねねのね

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    ひ弱そうな小芭内サンがどうやって強くなったのか、ということを書こうとしていた話。プロットっぽい。オリキャラいっぱい出てくるし鏑丸の存在は抜けてるし鬼退治まで書こうとしてたけど結局最後まで書けてない。自分でも続きが気になるわ!供養!供養!

    小芭内と七人の育手いつそう思ったのかは、すでに定かではない。
    けれどもある日、唐突に強く思ったのだった。
    鬼殺の剣士にならねばならない、と。
    それはもうあらかじめ決められた運命のように、確信を持ってそう思ったのだ。
    杏寿郎のように、生まれついて持っているさだめでもない、むしろ小芭内は何も持っていない側の、平凡なただの人間であることは分かっていた。
    けれども己を偽らず人生を続けていくためには。
    こうと決めたならば為さねばならぬ事もある。
    いちどそう定めたら梃子でも動かない。小芭内は生来の頑固者であった。

    幼い頃から剣はおろかろくに運動もしたこともなく、骨と皮しかない細腕の小芭内が剣士になりたいと言った時、周りの誰もが笑い、止めようとした。
    唯一、本気にしてくれたのは煉獄親子だけだった。
    小芭内を島から連れ出してくれた父君は、炎柱であるという己の伝手を利用して、小芭内を鍛えてくれる育手を探してくれ、息子は小芭内が同僚になったらこんなに心強いことはないと喜び、己が履修中の剣技を一生懸命教えてくれようとした。結局炎の呼吸は小芭内に適しておらず、身にはつかなかったが、呼吸の真似事もできるようになり、少しなりとも体力は向上した。
    そんな折にうわさを聞きつけたお館様直々に育手を紹介された。小芭内にはきっと合うよ、と太鼓判を押されて父君がたいそう乗り気になり、小芭内も否やはなかった。そうして小芭内は煉獄邸に別れを告げ、育手の元へと旅立った。

    育手は水の呼吸の元剣士で、いい歳をして独身だった。しかも彼には兄と弟がおり、これも揃って独身だった。育手の名は夜鷹、弟子が何人もいるなかなかの遣り手だったが、当の夜鷹は根城にしている山にやってきた小芭内を見るや否や、小芭内の二の腕をグニグニと触り、少し考えたあと兄のところに半年行けと命じてきた。

    夜鷹の兄は富士男といい、山奥で漢方薬を作っている正真正銘の変人だった。
    ああ、変人だったともさ。小芭内は当時を述懐すると、相当におかしな生活だったにも関わらず、自分もかなりの世間知らずだったため、何も疑問に思わず、己も危うく富士男のような変人になってしまうところだった、危なかった、と今でも思っている。
    夜鷹は富士男になにも言っていなかったので、彼は当初助手がやってきたと大層喜び、漢方のアレやコレやを熱心に教えてくれようとした。小芭内が慌てて、そうではない、自分は剣士の修行に来たのだと告げるとあからさまにがっかりし、小芭内の体格を見て、それじゃあ剣は振るえまいよ、と諦め顔で言う。小芭内がそれでも自分は剣士になりたいのだと熱心に訴えると、富士男は、じゃあ試してみるか、なに食わされても文句言うなよ、とニヤリと笑った。その口調に小芭内は底知れぬ恐ろしさを感じたのだが、ここまできたのだ、後には引けない。

    すると翌日から早速嫌な予感は当たった。
    朝食と称して出された膳の上には、いくつも正体不明の物体があった。どう見てもヤモリの黒焼き、どう見ても蛇の肉、黒い団子状のものは何かと聞いてみれば、鹿の睾丸だと真顔で返された。
    しかも富士男はこれを食わねば追い出すと脅してくる。もう腹を括るしかないと鼻を摘んで小芭内はそれらを無理やりに食べた。初回は平らげるのに二時間ほどかかった。後で腹を下すかと覚悟したが、それはなかった。

    そして食事の後は書き付けを渡され、ここに書いてあるものを山から蒐集してこいと命じられた。書き付けには、蟷螂の卵、蜂の巣、マムシ、熊の胆、など、どうやったら獲れるのか見当もつかない奇怪なものが並んでいる。獲るも何も、見たことすらないそれらを前に小芭内は困り果てた。挙句、富士男に教えを乞うてみたが、自分でどうにかしろとまともに取り合ってもらえない。
    これは八方塞がりだと思っていた時、偶然富士男の元に訪れていた猟師の親爺が声をかけてくれた。親爺曰く、ここにきた若者は須く富士男の洗礼を受けるのだと。そして三日とおかずここを去るのだとも。お前も悪イこた言わねえ、早々に諦めろと言う親爺に頼み込み、小芭内はそれらがどういうものなのか、どうやったら獲れるのかを聞き出した。

    小芭内の熱心さにほだされた親爺が手を貸してくれることになり、小芭内は速ければ一日ひとつ、長ければ何日も時間をかけて蒐集を行った。
    その様子を富士男はただ見ていた。そして蒐集した物はもれなく小芭内の食卓に並んだ。自分で自分のクビを絞めているようなものか?と食卓をしみじみ眺めながら小芭内は思ったものだった。そもそも食う物と思って獲ってはいなかったからだ。
    親爺はついでとばかりに、食える草やキノコの見分け方等々、山の知識も教えてくれたので、一ヶ月経つ頃には自分の食べるものくらいはどうにかなるようになっていた。小芭内が食えるものも獲ってきているにもかかわらず、相変わらず食卓には奇怪なものが並び続けたが。

    そして三ヶ月後にようやく書き付けにあったうちの最後の大物、熊の胆を獲った。親爺の協力があったとは言え、最終的に熊を撃ったのは小芭内だ。
    それを見て、富士男はようやく小芭内に合格だ、と言った。そして体の調子はどうかと聞いてくる。言われてはじめて小芭内は自分の体の変化を意識した。プニプニしていた腕は、今では硬く引き締まった筋肉に覆われており、走るとすぐに息切れしていたか弱い体は、どこまで走っても疲れない胆力を身につけていた。
    そこでようやく、小芭内は富士男が漢方による体質改善をやってくれていたのだと気づいた。あの奇怪な食事には意味があったのだ。

    富士男は食が細い小芭内に体力をつけさせるには、一食一食が大事だと考えていたようで、確かに量は少なかったがどれもこれも滋養に溢れた高価な食材を使っていたそうだ。後でそれらの値段を知ったとき、小芭内はたまげて転げた。その礼は隊士になってから徐々に返したが、最終的に全額返せたのは柱になってからだった。富士男には、俺はお前を食滋理論の実験台に使ったのだからと固辞されたが、小芭内は返さないと気が済まない性質だった。たとえ知らないうちに実験台にされていたとしても、だ。

    その後は何もない広場に高麗人参の畑を拓いたり、薬草集めに奔走したり、少ない一食で如何に栄養を取るか、結局は肉を食えという話になり毎日肉を食わされたりしているうちに半年が経ち、夜鷹が迎えにきた。
    夜鷹はすっかり筋肉質になっていた小芭内に驚き、さすが兄貴と褒め称えた。そして小芭内の頭を撫で、よくこの変人についていけたな、お前は根性がある、と褒めているのかけなしているのかよく分からないことを言って笑った。


    そして次に小芭内が紹介されたのは、二人の弟であるナスビだった。初めに名を聞いたときは空耳かと思ったが、兄二人は迷いもなく彼をナスビと呼び、本人もそれが当たり前として振る舞っていた。小芭内にも当然ナスビと呼んでくれと言う。彼は鬼殺隊で隠をやっていた。年齢のためか古参の部類に入るようで、現場には直接出ずに隠の複数の部署の調整を行うような仕事をしていた。要は中間管理職のようなものか。夜鷹は小芭内に世間を知ってこいと言い、ナスビに彼の身柄を預けた。そこで小芭内はナスビ付きの隠見習いとして後ろをくっついて行くことになった。剣士の修行はどうなったのかと言いたかったが、夜鷹は時期がきたらまた迎えにくるとのことだった。
    不思議なことに、ナスビは隠仲間にすらナスビさん、と呼ばれていた。なので、小芭内は彼の本名をいまだに知らない。

    そして、ナスビも兄に負けず劣らずの変人だった。ナスビの仕事は各部署の連携の調整、早い話が各部署が起こしたヘマの尻拭いが主だった。ヘマをされた相手にはヘコヘコと頭を下げる一方で、ヘマをした側には容赦なくネチネチと嫌味を並び立てる。そのしつこさたるや蛇の如しと、一部には蛇蝎の如く嫌われていた。当の本人はどこ吹く風で、何を言われたところで、平然として川柳を書いてはニヤニヤしている。
    そう、意外と彼には風流なところがあり、川柳や芝居見物などを趣味にしていた。小芭内にも川柳を作れとやり方を押し付けてきたり、芝居に行く際は一緒に連れて行ってくれたりする。小芭内は始めこそそれらに全く興味が無かったが、あまりにもナスビが楽しそうに語るので、そのうち本人もすっかりハマってしまった。教養がなければ良い句は読めないと、様々な書物を小芭内に与えては読め読めと催促し、小芭内が句を読むとああだこうだと添削しては嬉しそうにしている。どうも仲間が出来たのが嬉しいようだった。小芭内が察するに、彼には友達が全く居なかった。

    また仕事の都合上、ほうぼうを飛び回らなければならないので、ナスビはおそろしく足が早かった。特には言わなかったが、全集中の呼吸を使っているのは明らかだった。実際、小芭内も全集中を使わないと追いつけない。一日で三十里を移動するのもざらで、彼に合わせて走る小芭内も、すっかり移動が苦にならなくなった。脚力の増強は身体能力の増強である。小芭内は漢方をまだ継続中で、月イチで富士男のところに漢方食材を貰いに訪ねるのだが、そのたびに富士男は小芭内の脛を触ってはニヤニヤし、ウンウンと頷いていた。全くもって変態兄弟としか言いようがない。

    そうやってナスビについて回るうちに、小芭内は鬼殺隊の組織の仕組み、ひいては世間の仕組みというものを徐々に覚えていった。
    隠の部署にしても、事後処理、後方支援、服飾、医療、隊士の屋敷の管理、藤の家紋の家への支援や果てには鎹鴉の育成等々、多岐に亘った仕事があった。
    組織というもののありようという点では、鬼殺隊は非常に組織立っていて、うまく機能しているように思えた。お館様を頂点とする組織構造も、破綻なく良く出来ている、さすが千年もの間続いているだけある、と小芭内は考えるのだった。

    ある日、事後処理の現場の手伝いをすることがあった。ナスビは実務を行うわけではなく、現場にいる隠達に不便や問題などはないかを聞いて回っている。その様子を後ろについて小芭内は見ていた。と、一人の隠がナスビのそばにやってきて、コッソリと、水柱様が来ている、と告げた。
    水柱様が?なんでだよ。そう返すナスビに同僚の隠しは肩を竦めて、斜め後ろを密かに指差した。ナスビに合わせて小芭内も目を巡らせると、そこには青い羽織を着た髪の長い男が居た。佇まいや雰囲気から、平隊士ではないことは容易に知れた。そして彼の傍には赤っぽい羽織を着た少年隊士がいて、ぐしゃぐしゃと水柱に頭を撫でまわされている。
    なんだあれ。呆れる小芭内に、ナスビは、あの人いつもあんな感じで気易いんだよ、と言った。
    撫でまわされている少年隊士は、小芭内とそう年齢は変わらないように見えた。少しだけ羨望の念が浮かぶと同時に、それにしてもあの羽織は無いな、と小芭内は思った。色がまるきり女物の着物だし、そもそも派手すぎて似合っていない。そしていやでも腰に挿した日輪刀が目についた。黒い漆塗りの鞘に、白い柄巻が映えている。あの年頃であいつはもう刀を持っている。羨望の念はますます強くなった。ナスビといるうちに、隠もいいかもしれないと思い始めていた小芭内だったが、やはり違うと思い直した。俺も刀を持ちたい。その思いは変わってはいない。

    ふと水柱が顔を上げ、目敏くナスビを見つけたらしい。サッと手を上げて、やあナスビ!と声をかけた。そうされるとナスビは知らんぷりするわけにもいかず、ススッと水柱に駆け寄り、これはこれは水柱様、ご息災でなにより、と挨拶した。ナスビに影のように付き従うのが癖になっている小芭内も、一緒に移動して頭を下げた。
    「あれ、見ない顔だね?」と、水柱が小芭内を見て、それから、「珍しい目だなあ」と感心した声を上げた。
    兄貴から預かった見習いでして、とナスビが返すと、「アニキ?夜鷹のことかい?」と水柱が返してきた。そうですとナスビが返すと、「じゃあ剣士の修行してるってこと?」とさらに聞いてきたので、小芭内は黙って頷いた。
    そうかそうか、と水柱は頷き、ポンポンと小芭内の肩を叩いた。
    「きみ、最終選別受かったらウチにおいでよ。継子にしてあげる」そう言ってニッコリ笑う。急に何を言い出すのかと驚いて小芭内は水柱を見返した。その横で派手羽織の少年隊士はキョトンと二人を見ている。何見てんだよ、と小芭内はソイツにツッコミを入れたくなったが、とりあえず今は水柱だ、なんて答えればいいのだろうと思っていると、横からナスビが口を挟んだ。
    「まだ、こいつはしばらくかかりますよ。なんせまだ型のひとつも覚えちゃいないんで」
    その言い方に小芭内はカチンと来た。教えてくれないのはそっちの方だろう、なんてこというんだと。
    水柱はそうかあ、とさらに微笑み、でも今から覚えるでしょ、いつまでも待ってるからね、ともう一度小芭内の肩をポンポンと叩いた。ナスビのせいで一瞬にして頭に上った血が、ゆるやかにスッと下がるような、優しい仕草だった。

    結局、小芭内が最終選別に受かった頃にはすでに水柱は代替わりしていて、小芭内が彼の継子になることはなかった。けれども、派手羽織の少年隊士とは後々長い付き合いになる。それはその時の小芭内には知る由もないことだった。

    水柱との邂逅から、小芭内の頭の中に忸怩たる思いが沸いていた。自分も早く剣士になりたいという、欲望とも願望ともつかない思いだ。水柱と一緒にいた少年隊士の存在も、その思いに拍車をかけた。
    あいつはボーッとした顔をしていたが、もう日輪刀を持っている。そう思うと、のんびり隠の手伝いをしている時間がとてつもなく惜しくなった。
    そこで小芭内は思い切ってナスビに直談判した。もう剣士の修行に戻りたいと。
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