【ヴァルラン】駆け引きとすれ違い「カイリ」
通称ではなく本名で私を呼ぶその声は、いつものひょうきんさをどこへやっちまったのかと聞きたくなるほど神妙で、笑い飛ばしてやろうかと思った。そう出来なかったのは、振り向いた時に見たラムヤの顔がいつになく真剣で、私の目には気重そうに映ったからだ。
試合を終えてロビーへ戻ってきて早々真っ先に私のもとへ来たってことは、試合中のローバとの会話がずっと引っ掛かってたからなんだろう。お姉さんがすぐに化粧直しへ行ってくれたのが幸いか。
「何だよ。私は今腹が減ってんだ。込み入った話ならラーメンのあとにしてくれ。…いや、食後だと胸焼けしかねないか」
「いつの間にローバとあんな親密になったんだよ」
いきなり核心を突いてくるとは随分余裕がないと見た。
視界の端で小さく握られた拳が震えてる。こりゃ一発は覚悟しておくべきか?
「時間を掛けて口説いただけさ。私はここへ来た時から彼女に興味があったからね。それはお前も知ってるだろ?」
「そうだけど…! あたしは…っ、……あたしには、アンタが面白がってるようにしか見えない」
「ひどい言い様だなぁ…」
顔を伏せたラムヤの言いたいことはわかる。私がローバを“横取り”したように見えるだろうさ。
だけどこれは、私が仕組んだわけでも、私が彼女を脅迫したわけでもない。
「引っ掻き回すのはやめてくれ。あたしはあの二人が好きで、どっちも大切な友達なんだ。二人の仲を裂くようなことはしないでほしい」
感情のまま掴み掛かってくるでもなく、まるで私に頼み込むかのように切実に言葉を紡いでくる姿がしおらしい。
…とは言え、こればかりは叶えてやれそうにない。
「それに…」
お断りを入れようとした瞬間、ラムヤの声に遮られた。
ヘーゼルの瞳が真っ直ぐに私を見上げてくる。
「カイリが嫌われるのも、あたしは嫌なんだ」
「……」
「アニータは大人だしいい奴だけど、このままじゃアンタとの仲も悪くなっちゃうだろ。アンタらの今の会話、とてもじゃないけど聞いてられないよ。だから…」
「そこまでにしといてくれ“ランパート”」
これ以上は聞いてられない。聞いちゃいけない。
私の任務を全うしなければ。
「腹が減って限界なんだ。私を説得したいなら日を改めてくれ」
「……」
「それと、大人には大人なりの事情があるんだよ。酒が飲めるようになったばかりのお嬢ちゃんにはまだ早い」
「……カイリ」
踵を返した私の背中にラムヤの寂しげな声が刺さる。
振り向いたら負けだと言い聞かせて、さして減ってもない腹を摩りながらロビーを後にした。
***
(あとがき)
このあとランパからは見えないところにまで来たと確認したヴァルはランパちゃんの可愛さに悶絶して壁を殴り続けます。
バンロバは大人な百合。そこに三十路のヴァルが茶々を入れるという展開は大好物なんです。
S9のコミックからのS10の掛け合いを見て「実際はこうなんだろ」と思ったのをツイートしてたんですがそしたらヴァルランsideが書きたくなってしまって…
いや絶対あんなやり取り見てたらランパちゃん黙ってないでしょ!だってローバはいい女的なこと言ったらバンガに「彼女と私は親友」って返されちゃって、それで今回の掛け合いじゃないですか……いやこれは……誰も悪くないしローバが聞いてるとも思ってなかっただろうけどバンガから“親友”って単語を引き出させちゃったのはランパちゃんだし…お花捨てられちゃったし……きっとあのゴミ箱の花束に気付いてるよランパ……(願望)
そりゃあんな苦労して手に入れた蜘蛛でバンガを治してデート♡ってわくわくしてたローバはショックでしょうよ…それを隣で見てたヴァルがバンガの気を引くために噛ませ犬になる展開でしょうよ……大人の駆け引きだよ!!!!!!!!
だから21ちゃいのランパちゃんには真意をお伝えしないつもりだったけど、あの二人への心配だけかと思いきやまさかのまさかでヴァルが嫌われることも懸念してくれたせいでランパちゃんのこと抱き締めたくて仕方なくなったので我慢してラーメンを食べに行く振りをしてその場を去ったという(解説)
だってここでランパちゃん抱き締めちゃったらせっかくの作戦が水の泡になっちゃうから!!!!誰かに見られちゃったら「あれ、ローバとのことは遊び?嘘?」ってなっちゃうから!!!!
バンガが自分のローバへの気持ち(恋心)に気付いて、バンロバが元鞘に戻るまでヴァルは噛ませ犬に徹しないといけない。
そこが仲直りしたらヴァルランイチャイチャフォーエバーなのでもれなくみんなハッピー✩
駄文失礼致しました。長々とした妄想をお読みくださったあなたに最上級の感謝を。