Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ameko

    令和のオタクツールを使ってみたかった
    何もかもおためし運用中

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    ameko

    ☆quiet follow

    何もかも捏造な2022書き初めです。
    月日ちゃんとモブの先生しか出てこないけど製造工場がラン暦です!

    月日ちゃんが中学生になった話「えー……喜屋武、喜屋武つき……」
    「せんせー、こよみです。きゃん、こ・よ・み!」
     いっつも思うんだけど、先生たちの持ってる名簿って読み仮名振ってないのかな? 読み方が難しい名前なんてずっと昔からあるんだし、絶対あった方がいいと思う。
    「おお、悪いな。えーと、喜屋武月日……こよみ、と」
    「はーい」
     このやり取りも慣れっこ。月も日も小学校に入ってすぐ習うけれど、もちろん月日でこよみとは読まない。名前そのものは気に入っているけれど、初対面の人に間違われたり、からかわれたりするのはもちろんイヤ。
     喜屋武って苗字も、沖縄じゃ当たり前だけど、他では珍しいんだって。それじゃ東京行ったらますます面倒。って家で言ったら、東京行くのか!? って大騒ぎになった。主にお兄ちゃんとお父さんがね。今すぐじゃないけど、そのうち行くかもしれないでしょ。ほんとうちの家族ってうるさいの。みんな好きだけどね。
     中学生になって、小学校から持ち上がりの子がほとんどだけど、別の小学校出身の人もけっこういる。最初は友達同士で固まってたけど、少しずつ話すようになった。例の先生の件があったから、「こよみちゃんだよね?」って向こうから言ってくれる。覚えてもらえてよかったけど、なーんかフクザツ。
     そんな少し前のことを思い出しながら、職員室へ向かってる。中学校の日直ってやること多いなぁ。小学校の時は何でも担任の先生に出せばよかったのに、教科ごとに持っていかないといけないんだもん。
    「せんせー、ノート持ってきましたぁ」
    「おー、悪いな。そこ置いてくれ」
     そう、そもそも先生が授業の最後に集めるの忘れて、帰りに日直が集めて持ってくるようにって。運が悪いなぁ。
     先生はパソコン画面に向かったままで、一見忙しそうだけど、手元はゆっくりしてる。じゃあ失礼しますって言おうとしたら、突然こっちを見た。
    「喜屋武、もしかして喜屋武暦の妹か?」
    「えっ」
     名前読めなかったのに、読めなかったからなのか、もう顔を覚えられていたみたい。急にお兄ちゃんの名前を言われて、固まってからこくんと頷いた。
    「やっぱりそうか。いや、実はむかし兄貴の名前も読み間違えてな。すまんすまん」
    「先生、お兄ちゃんの時からいたんですか」
     あっ、ついお兄ちゃんて言っちゃった。兄、兄だ。まぁいっか。びっくりしてちょっとドキドキしてる。先生はいつも仏頂面なのに、ちょっと優しそうな顔になった。
    「いやな、暦の方を『こよみ』って言ってしまってな。それで君の名前を聞いて思い出したんだ」
    「お兄ちゃん、怒りました?」
    「同じだよ。『せんせー俺レキっす』って口尖らせて」
    「あたしそんな顔してないです!」
     先生のモノマネはあんまり似てない。思わず怒っちゃったけど、こういうことする先生なんだ。意外。
    「兄貴は元気か」
    「はい」
    「勉強は?」
    「中学とおんなじだと思います」
    「まったく。相変わらずスケボーやってるのか?」
     先生は白髪の混じった眉を下げて、ゆっくり質問攻めにしてきた。なんだか親戚のおじさんみたい。お兄ちゃん、迷惑かけたのかなぁ。
    「はい。すっごい上手な友達ができて、毎日楽しそうです」
    「そうかそうか。スケボー友達か。仲間がいるならよかった」
     先生は疲れたような目をぱっと開いて、また眠たそうに細めた。
    「あいつは明るいし友達も多いのに、どうしてもスケボーは譲らなくてなぁ。ちょっと目を離すと校内で一人で滑ってるから、よく注意したよ」
    「あはは……」
     やっぱり迷惑かけてた!!
     お兄ちゃん不良なの? ヤンキーなの? って訊かれる度に一応否定してたけど、もうやめようかなぁ。まったく。
     スケートやってるからって不良なわけじゃないっていうのは、本当はよく分かってる。スケートはすっごく楽しくてかっこいい。スケートやってるお兄ちゃんも好き。本人に言うと調子に乗るから内緒です。
     先生の言う通り、一人で滑ってた時のお兄ちゃんは、ちょっと寂しそうだったり、荒れてたりする時もあった。でも、ランガくんとケンカしてた時がいちばん凹んでたかな? 仲直りしてからは、今まででいちばん、ずーっと楽しそう。
     だからこそあたしもやってみようかな、って始めたんだけど……先生には黙っておこうっと。
    「君もやっているのかい?」
    「えっ!?」
    「そこ。兄貴もよく怪我してた」
     うそうそ。もうバレちゃった。もう遅いのに、大きめの絆創膏を貼った手を後ろに隠す。
    「……あたしはプロテクターしてますし! 学校では滑らないです!」
    「そうか。気をつけてな」
     叱られたらどうしよう、担任の先生も向こうにいる……とヒヤヒヤしたのに、先生はあっさりとそんなことを言っただけだった。もうパソコンに目を戻してる。手の動きは相変わらずのんびりしてるけど。
     そうだ。友達が教室で待っててくれてるんだ。早く戻らなきゃ。
     失礼しました、だけじゃ足りない気がして、ありがとうございましたって付け加えた。変だったかな? お礼だから大丈夫だよね。

    「月日おそーい」
    「何かあったのー?」
    「ごめーん! なんか先生が思い出話始めちゃってー」
    「あの先生がー? 何考えてるか分かんなくて怖そうって思ってた」
    「そうそう。びっくりした」
    「何の話?」
    「えっと、実はね……」
     どこから話そうかな。スポーツクラブ通ってて怪我してることにしちゃってるから、ちゃんと言わなきゃなんだよね。スケートやってるんだって。
     それから、今夜お兄ちゃんたちにも先生のこと話さなきゃ。お兄ちゃん、ぜったい変な顔するんだろうなぁ。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🌺🌺☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works