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    (曹←劉/水魚ss)曹劉と劉親子とちょっと危うい水魚

    #水魚
    #三國無双
    threeKingdomsUnlimited
    #曹劉
    caoLiu

    はらはらと落ちた。
    それには名が書いてあった。
    そして私たちは道を分かった。


    「父上も、剣を振るう時に目を瞑るのですね」

    執務の合間、気分転換に双剣を持ち出したら息子が覗きにきた。

    「禅もです。よく子龍に叱られます」

    剣が似合わない子が口にした言葉に、忘れていた北の都の古い記憶が呼び起こされる。
    まだ若かった頃、同じことを人に言われた。

    君は、剣を振るう時に目を瞑るのだな

    それはいけない、とその人は続けた。

    進む者は見なくてはいけない
    「でも、できたら見たくないですよね」

    屍を重ねて進むその道を
    「血と肉が吹き飛ぶ様など」

    劉禅は同意を求めるように父親に笑顔を向ける。
    劉備は父として、先導者として応えるべき言葉を持っていなかった。

    曖昧に笑って隣に立つ息子の肩を撫でる。
    父の同意を得たと思ったのか、劉禅は嬉しそうだ。

    ここに至るまで、考えがなかったわけではない。
    しかし目を瞑ったまま、必死で光へ至る道を探して、気が付いたらここまで来てしまった。

    北の都で、あの人は道を見せてくれた。遥かに格下だった私を隣に立たせて、彼の描く道を。
    しかし、その路傍に積み重なる夥しい屍が恐ろしくて、その道から私は目を逸らした……

    「我が君」

    遠くを見ていた劉備の意識が現在に戻される。

    「汗が冷えてしまいます。お風邪を召されてはいけません」

    回廊から諸葛亮が父子に拝礼する。

    遠くの空を睨み緊張していた劉備の横顔から強張りが取れていく。

    庭へ降りる階段の上から差し伸べられた文官の手を当然のように父が取ったので、劉禅は少し不思議に思った。

    手が重なる。
    諸葛亮の手の熱を感じる。

    「こちらへ。寒くなってまいりましたね」

    建物側へ劉備を誘いつつ、羽織っていた上着を肩に掛けてくれる。
    冷えた身体が人肌の温もりに包まれて劉備は安心する。

    孔明の声が聞こえる。
    彼は眼も開けられない臆病な私を導いてくれる。
    あの人が自分の目で確かめて進む道を、私は目を瞑ったまま手を引かれて進む。

    「お前がいれば安心だな」

    唐突な呟きにも諸葛亮は微笑む。

    「万事滞りありません。亮に全てお任せください」

    あの人は光と道が見えている。私には道は見えないが、光を見ることはできる。
    光はきっと同じものなのだろうけれど、私たちは道を分かってしまった。

    分かってしまった道の先は一つだから、いずれ私たちの道は交わるのだろう。
    その時何があるのだろうか。

    私も貴方も終わり方を知らない。


    20211001
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