その血の所以吸血鬼。人の血を糧とする怪物。しかも血を吸われた被害者も、吸血鬼化する恐れがある。
そんな簡単に数を増やせる危険極まりないモンスターなど、見つかれば即排除されるに決まっている。何しろ彼らはメジャーすぎて、弱点すら広く知られているのだ。
そこで、日本に住むある吸血鬼の一族は考えた。一度敵に回せば殺すまで追いつめてくるだろう人間と、敵対ではなく共存できないかと。何も日本全国民と和解しようとは望まない、ごく一部の地域で構わない。むやみに襲わない、吸血鬼の労働力を提供する代わりに血を少し貰えないかと、そういう契約をしたかったのだ。
もちろん、交渉は当初上手くいかなかった。辿り着いたある山奥の村で吸血鬼の怪力を見せた時点で、当然ながらひどく怯えられてしまったのだ。一家で村はずれの小屋に隔離され火をかけられそうにもなったが、その前に吸血鬼が訴えた。自分たちは逃げようと思えば逃げられるがそうする気はない、村人が望むのならこのまま焼け死ぬ、しかし自分たちの死をもって吸血鬼側が本気であるのを理解して欲しいと。
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