おかえり ふと目を覚ますと、いつの間にか来ていた弟子がベッドの隅に顔を伏せていた。いなくなった勇者を探すのだと飛び出していった弟子の消沈した様子に、また手掛かりもなかったのだとわかる。
マトリフは布団から手を出すとポップの頭を撫でた。この弟子にしてやれることの少なさに歯痒く思う。
「ポップ」
ポップは返事をせずに鼻を啜った。泣き顔は見せたくないらしい。まだここが泣ける場所であることに安堵を覚える。弱さを克服した弟子が、どこでも泣けなくなってしまえば、いずれどこかで折れるときがくる。
「よく無事に帰ってきたな」
「おれが無事で帰ってきたって、ダイが見つからなきゃ意味ねえよ」
友を思う気持ちがわからないわけではない。もし自分の力で救えるなら何だってする。だが、ポップのことを大切に思う者がいることを忘れてほしくはなかった。
「ちっとくらい休んでいけ。そんなんじゃ頭も回らねえぞ」
撫でる頭に回復呪文を唱える。多少の疲労回復にはなるだろう。するとポップがそろりと顔を上げた。
「一緒に寝ていい?」
「ばぁか。狭ぇよ」
言いながらもマトリフは端につめた。ポップはベッドに上がるとマトリフに抱きついてきた。その跳ね返った頭を胸に抱く。
何処へも行かずここにいろとは言えず、本音は胸へと仕舞い込んだ。