煙水晶は価値を語らない「師匠のおぉッ! ぶわあぁ~かッ!!」
大音声に洞窟が揺れる。
「何なんだ。帰って来るなり、んな大声出しやがって」
耳に指を突っ込んだマトリフが、パプニカ王国の昼餐会から帰宅したばかりのポップを出迎える。
その眉間の皺はバルジの大渦の底よりも深かった。煩い、を寸分違わずに表情に落とし込んだらこういう顔になるだろう。
「だって、こんなん……こんなん……」
ポップが、ブルブルと震えながらマトリフに右手を差し出す。
昼の礼装だから、とモーニングコートで着飾ったポップの、普段であればグローブに包まれている指は今、素のままの姿を晒していた。
その人差し指に嵌められているのは銀色に輝く大ぶりの指輪。
艶めく銀色の光は、生命力を象徴する蛇を象って中央の大きな丸い石に優美に絡みついていた。
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