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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    バル+マト。大師匠にベタンを使うマトリフ

    #マトリフ
    matrif

    ベタンの正しい使い方 マトリフはバルゴートの部屋へと呼び出された。その理由はわかっていたのでマトリフは不貞腐れた気持ちでその扉を開けた。
     バルゴートは胡座をかいて宙に浮いている。何故かは知らないがやたらと宙に浮きたがる人だった。マトリフは今さら気にすることなく部屋の中ほどまで進む。
    「……何故呼ばれたか理解しているのか」
    「門限を破ったからだろ」
    「わかっているのに何故破る」
     バルゴートがマトリフの前に降り立った。
    「門限が早すぎんだよ。日暮れが門限ってガキかよオレは。そんなんじゃ楽しい店は開いてねえだろ」
     マトリフはお姉さんが沢山いるお店で遊ぶために門限を破ったのだ。もっとも、年齢制限に引っかかり、入店できずに帰ってきたところで捕まってしまった。
    「そうやって俗世に染まらぬための門限だ」
     バルゴートはマトリフに手を出すように言った。マトリフは渋々片手をバルゴートの前に出す。その手にバルゴートは腕輪をはめた。
    「なんだこッ……」
     腕輪をはめたマトリフの手は急激な重さを感じた。あまりの重さに立っていられず床に膝をつく。腕輪は床につき、持ち上げようとしてもびくともしない。
    「なんだよコレ!!」
    「仕置きが必要だろう。フラフラと出歩かぬようにな」
     バルゴートはそう言うと部屋を出て行ってしまった。マトリフはバルゴートの部屋に一人残される。
    「クソジジイ!!」
     マトリフは叫ぶが帰ってくる声はない。マトリフはなんとか腕輪を持ち上げようとするが、それはたっぷりと満たされた酒樽よりも重かった。
    「くそっ……呪われてるのかよ」
     腕輪は外そうとしても外れなかった。どうやら拘束用のマジックアイテムらしい。なんでそんな物を持ってやがるんだとマトリフは毒づく。どうせ戻ってきたら長々と説教を聞かせるつもりだろう。そんなもの退屈で死んでしまう。
    「ジジイめ……見てろよ……」
     マトリフは不敵に笑みを浮かべると魔法力を高めた。

     ***

     バルゴートは神殿の見回りをしていた。手にはメラを浮かべている。夜の神殿は厳かな雰囲気に包まれていた。
     バルゴートの横を弟子たちが頭を下げて通り過ぎていく。真面目な弟子が多い中で、マトリフは突出した問題児だった。バルゴートにとって悩みの種である。マトリフの才能は抜きん出ているものの、不真面目で色欲に弱い。その弱点をどうにかしないと、いつか痛い目にあうだろう。
     バルゴートは今夜こそマトリフに考えを改めさせるつもりだった。
     神殿の見回りは終わった。バルゴートは部屋に戻ろうと踵を返したが急に足を止めた。神殿の出入り口に強い魔法力を感じたからだ。しかもよく知る魔法力だ。今はバルゴートの部屋で床に縫い付けられているはずのマトリフがそこに立っていた。
    「ほぉ……」
     バルゴートは珍しく感嘆の声を上げた。マトリフにつけた腕輪は自分の体重の何倍もの重さになる呪われたアイテムだ。非力なマトリフは持ち上げることさえ絶対に不可能だ。
    「よぉ……ここにいたのかよ」
     マトリフは一歩踏み出した。月明かりがマトリフがつけた腕輪を光らせる。呪いを解いたわけではなさそうだ。だが明らかに呪文の痕跡がある。だがそれはバルゴートが知る呪文ではなかった。
    「オリジナルスペルか」
    「ああ、そうだよ。あんたにも味合わせてやる」
     マトリフはバルゴートに向かって手を向けた。親指だけを地に向ける。
    「ベタン!」
     途端にバルゴートは全身に重圧を感じた。それは立っているのも困難なほどのものだった。バルゴートは床に手をつく。床石に細かなひびが入っていった。
    「なるほど……良い構築だ……」
     バルゴートは呪文を全身に受けてつぶやいた。おそらく大地の精霊の力を借りたのだろう。
    「腕輪を無力化したのもこの呪文というわけか」
    「へへ……まあな」
     マトリフは腕輪の重圧と同じ力を逆にかけることで相殺したのだろう。いや、元々そのために呪文を作り上げたのを、攻撃用に構築し直してバルゴートにかけたのか。どちらにせよこの短時間で呪文を作り上げる才能は素晴らしい。
    「だが……」
     バルゴートはゆっくりと床に手をついた。マトリフがわずかに顔を歪める。
    「この呪文には弱点が二つある」
    「なんだと」
    「ひとつ。魔法力を使いすぎる」
     大地の精霊は気難しい。魔法力を大判振る舞いしなければ力を貸してはくれない。
    「今のお前の魔法力なら、一回の呪文では半分ほどの魔法力を使うはずだ。腕輪の無効化に一回。私に一回。つまりお前の魔法力は殆ど残っていない」
    「チッ……」
     マトリフは悔しそうに舌打ちする。図星だったようだ。バルゴートはさらに続けた。
    「ひとつ。構築が整っているために、真似しやすい」
     言いながらバルゴートは手を天に向けた。呪文を相殺するなら同じ呪文をぶつけるのが定石だ。それはこのオリジナルスペルも通じる。バルゴートは解析した呪文を作り上げた。途端にバルゴートを重く押し潰していた呪文が弾け飛ぶ。マトリフは口を開けてその様子を見ていた。
    「……さて、仕置きだったな」
     バルゴートが一歩踏み出すとマトリフは一歩下がった。その顔は青ざめている。魔法力を使い果たしたからルーラで逃げるわけにもいかない。
     マトリフの悲鳴がギュータに響く。マトリフ十五歳の夏の出来事だった。

     
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