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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    オクノマ。NWH後に一緒に暮らしてる二人。ノーマンが感じる視線の主は……?ワンライ参加作品。

    目線「なあオットー」
     ノーマンは忙しそうなオットーの背に向かって遠慮がちに声をかけた。ノーマンは気に入りのソファに座り、オットーは少し離れた作業台で忙しく多くの手を動かしている。
    「うん?」
     オットーは手を止めずに返す。代わりにアームの一つがこちらを向いた。ノーマンはそれにびくつきながら、さらに遠慮のこもった声で言った。
    「君はそのアームたちに私を見張るように言っているのかい」
     ノーマンの言葉に残りのアームもノーマンを見た。それがノーマンにとっては銃口を突きつけられたように感じる。
    「なんだって。見張る? そんなわけない」
     オットーの言葉が上の空であることがノーマンにはわかった。今のオットーの興味の対象は作業台の上にある、オットーの言葉を借りるなら「細やかな発明品」だからだ。ここ数日はそれにかかりっきりで、ろくにノーマンとも会話していなかった。
    「私はアームたちの視線を感じるんだよ。それも四六時中ね」
     この言葉がオットーのウェルニッケ中枢まで届かないとわかっていたがノーマンは言った。アームの視線はここ数日に始まったことではない。あの別世界へ飛ばされて、帰ってきてオットーと暮らすようになってからというもの、オットーの背から伸びるアームはノーマンの行動をつぶさに観察していた。だがノーマンのしでかしたことを思えば、監視くらいされてもおかしくない。
     案の定オットーからの返事はなかった。今回は耳に入る前に遮断されたのかもしれない。それはオットーの悪意ではなく、ただ彼が集中すると周りの雑事が見えなくなるからだ。
     やはり言うタイミングを間違えた。ノーマンはそう思いながらソファに沈む。そのあいだもアームの一本がこちらを見ていた。それがどうにも落ち着かない。ノーマンはパーカーのフードを目深に被った。そんなもので己を守れはしないのだが、幾分か気分はましだった。
    「ノーマン」
     どれほど経ったか、オットーの声に揺り起こされた。いつの間にか眠っていたらしい。そして自分の身体が冷え込んでいることに気付いた。
    「あんなところで寝たら風邪をひくよ」
     そしてノーマンは自分がさっき寝ていたソファではなく、宙に浮いていることに気づいた。そしてよく見れば己の身体を支えているのは四本のアームだった。
    「うわっ!」
     ノーマンは驚いて咄嗟にもがいた。そのせいでアームはぐるりとノーマンの体に巻きついた。
    「暴れないでくれ。落としたら大変だ」
     オットーは落ち着きはらっている。寝室のドアが開き、電気はつけないまま暖房だけが付けられた。窓の外は真っ暗だ。ノーマンが寝てから半日ほど経っている。昼間は暖かかったのに、陽か沈んでぐっと冷え込んだらしい。さっきいた部屋も暖房をつけておらず、そんな部屋で何もかけずにノーマンは眠りこけていたらしい。
     アームはノーマンをベッドに下ろし、暖かな布団までかけてくれた。肩が出ないようにきっちりと包み込んで。その仕草はまるで子どもを寝かしつける親のようだった。アームはまるでそうするのが勤めのように、ノーマンの前髪を整え、頬まで撫でた。ノーマンは過去に自分がされた覚えのない愛情深い仕草にすっかり固まってしまった。
    「この子たちは見張ってなんかいない。ただ君を心配しているんだ」
     オットーは言いながら二本のアームを撫でた。そうすると残りの二本も撫でてくれと言わんばかりに順番待ちをしている。
    「君に私の言葉が届いていたとは驚きだ」
    「すまない。少し集中しすぎて返事が遅れた。だがとにかく、君を監視なんてしていない。さっきだって凍えながら寝ている君を見つけて教えてくれたのはこの子たちなんだよ」
     アームたちはオットーに撫でられて満足そうだった。ノーマンはてっきりアームに敵意を持たれているのかと思い込んでいた。
    「えっと、ありがとう」
     ノーマンのぎこちない礼に、アームはゆらゆらと揺れていた。それが友好的な反応かわからなくてオットーを見る。オットーはまるで子猫同士が戯れている動画を見たように顔を和ませていた。
    「君たちが仲良くなれて私も嬉しい」
     これのどこが、とノーマンは思ったのだが、オットーが言うのだからアームたちは少なくともノーマンに敵意は持っていないのだろう。
    「じゃあおやすみ」
     今度はオットーがノーマンの額に口付け落とした。冷えた体にその唇は温かかった。
     背を向けて出て行くオットーの背でアームが揺れている。やはりアームたちはノーマンを見ていたが、その視線は以前より気にならなくなった。
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